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滅亡ビル  作者: oga
第一章 滅亡ビル
15/27

バル……

「いっでええーーー!?」


 回転しながら飛んできたのは、パーピー君が即席で作った銀の十字の剣。

ちなみに、素材は花を生けるための銀の花瓶である。


「34階で戦っていたロボットの目を通して、ゾンビ化を見させて頂きました。 ゾンビなら聖なるもの、つまり、十字とかが弱点でしょう?」


「……くっ、こうも早くこの技の弱点を」


「チナツっ!」


 ヒイロがシャンデリアから飛び降りると、反動で胸ポケットに差していた三色ボールペンが外れ、地面を転がる。


「おおっと、動かないで下さい!」


 すかさず、パーピー君が片手のマシンガンをヒイロに向ける。


「動かないで。 あなたを撃ちたくは無い」


「……」


 一歩、進む。

すると、太ももに弾丸がめり込む。


「ガアアッ」


「動かないで、と言ったハズです」


 ももから血が伝い、足元を濡らす。

そして、尋常ではない痛みが駆け抜ける。

例えるなら、太ももを抓られたあの痛みに、手心が全く加わっていないバージョン、と言えば分かり易いだろうか。

しかし、ヒイロはやせ我慢をして、こんなセリフを吐いた。


「……全っぜん、痛くねーよ」


「はは、嘘だ」


「嘘じゃねぇ、俺らの心の痛みに比べたら、全然な!」


「……格好いいセリフ言おうとして、滑っちゃった感じですか?」


 パーピー君に指摘されて、若干顔が火照るヒイロ。

確かに、ここで胸に刺さるようなセリフが言えたら格好いいが、頭の中は真っ白だった。


「……もう少し、お前とは色々話合いたかったよ」


「何を今更。 アナタはいつも忙しそうで、私のことなんか構ってくれなかったじゃないですか」


 ヒイロは、思い出した。







 より人間に近いロボットの開発をするため、パーピー君には赤ちゃん、子供、大人をそれぞれ経験させていた。

その子供時代の頃、ヒイロはパーピー君に構う時間が無かった。


「パパー、仕事イカナイデーッ」


 泣きながら足にしがみつく子供版パーピー君。

ヒイロは、頭を撫でながら言った。


「悪いな、パーピー君、帰ったら一緒に任〇堂スイッチしてやるからよ」


 しかし、その日は会社に泊まり込みで、帰ることは出来なかった。








 

 その日の事を思い出し、一瞬、感情に浸る。


(……悪いな、パーピー君)


 その時、パーピー君の足元まで転がっていた三色ボールペンが小型のクモに形を変え、足から背中を伝い、テンキーの収納されている蓋をドライバーで開けた。


「何っ!」


 ヒイロの開発したスパイロボット、スパイダー。

それが、素早くテンキーを操作し、音声入力モードに切り替える。

そして、ヒイロは叫んだ。


「バルサミコス!」

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