戦闘開始
シャンデリアは思った以上に早い速度で下降していく。
「大丈夫かよ、コレ」
「大丈夫す。 これ位スピードがないと奇襲にならないす」
正面から戦ってもパーピー君には敵わない。
34階の時みたく、シャンデリアの上から不意打ちでもしない限り勝てない。
しかし、ヒイロの中には迷いがあった。
「……でも」
「いくら自分の作ったロボットだからって、これだけのことをしたんす。 情けは無用す」
甘い、とチナツはヒイロの考えを切り捨てた。
(クソ、こんなことになる前に、一言でも俺に相談してくれりゃあ……)
武力行使はヒイロの本意ではない。
事を起こす前に、パーピー君が胸の内を自分に相談してくれていれば、こんな事態は免れたかも知れない。
ヒイロにもAIの開発を批判されていた時期はあり、その時は孤独だった。
自分の気持ちを誰にも理解されず、自暴自棄になりそうな時もあった。
孤独な者同士、お互い分かり合えたかも知れないのだ。
シャンデリアはどんどん加速する。
考えてる時間は無かった。
心の片隅では話し合いを模索していたが、ヒイロもようやく覚悟を決めた。
「チナツ、援護頼む。 俺なら、アイツを破壊するコードを知ってる」
「……コード? それなら、私が残りの弾丸で相手の気を引くんで、その隙に頼むっす」
チナツが銃を構える。
とうとう、シャンデリアが地上1階、パーピー君のいるフロアへと到達した。
階下には、炎の塊。
その中から、人型のシルエットをチナツは見つけた。
「……チッ」
熱で揺らめく空気の層の為か、チナツのトリガーを引く指が一瞬鈍る。
その時、チナツの肩に何かが突き刺さった。
念の為ゾンビ化していたチナツだったが、違和感を覚える。
「痛っ……」
感じるハズの無い痛み。
肩に刺さったのは、銀色の剣であった。




