プロローグ 表紙あり
2025年6月30日。
時刻は19:00。
ここは都内某所にあるスリースターホテルの宴会場。
35階建の高層ビルで、ここはその最上階。
四角グループの頂点に立つ、四角角ゑ門社長の108才の誕生パーティーが行われようとしていた。
突然、灯りが暗くなる。
「ではこれより、四角角ゑ門社長の誕生パーティーを始めたいと思います。 皆様、暖かい拍手を!」
「やっと始まったか」
そう独りごちたのは、四角グループの子会社、四角電子機器株式会社に勤めるヒイロ(25)
ヒイロは高校の頃、火災で家族全員を亡くしており、卒業と同時にこの会社で働き始めた。
そして、頭脳明晰だった両親に習い、少しずつ頭角を現すようになり、昨年、AIの人工知能に相当する基盤の開発に成功、瞬く間に会社のナンバー2へと上り詰めた。
(早く終わらせて、家に帰りてーんだけどな)
ヒイロには婚約者がいて、最近、子供を身ごもっていることを知る。
不幸な生い立ちから実力で這い上がり、今、幸せな人生を掴む目前まで来ていた。
社長がマイクを手にして、話を紡ぐ。
会場の拍手が鳴り止み、シン、と静まり返る。
「ほ、ほんじつは…… お、おちゅまり、い、いただき、え~と、何じゃったかな?」
(ジジイ、完全にボケてやがる)
会場がざわめく。
側近が社長に何やら耳打ちしている。
「あ、そ、そうじゃった。 え~、ワシの誕生ぱ~て~に来て下さり、あ、ありがとう、ですじゃ」
こんな調子じゃ、いつ終わるのか分からない。
ヒイロが欠伸をかみ殺すと、AIのロボットがこちらにやって来た。
「オヒトツ、イカガデショウカ?」
「ああ、もらっとくよ」
やって来たのは、四角グループで共同開発したAI搭載のロボット、パーピーくんだ。
白くて四角いゴツゴツした外見。
ペッ〇ーくんよりも、より人間に近い動きを再現している。
ちなみに、このパーピーくんの搭載している人工知能を開発したのが、ヒイロである。
ヒイロが、チーズのクラッカーを頬張った瞬間、目を疑う光景が眼前に広がった。
社長の頭上のシャンデリアが、落ちたのである。