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めぐるゆき  作者: 孤独堂
17/18

その17

 藤崎ほのかの語る話はこうだ。


 先ずこの世界は選択肢の数だけ無限に幾重にも平行して世界が存在しているという事。

 これは物理学者の間ではある程度認識されている事実らしくて、先程彼女が口走ったジュネーブとフランスを跨いであるという地下施設CERNの『大型ハドロン衝突加速器』というのは、まさにそういった事に関する実験もしているのだという。

 日本で言えば山手線の全周約34.5kmよりもやや小さいそのドーナツ状のそのトンネルでは、陽子同士を物凄いスピードの中で衝突させるという高エネルギー実験が日々行われているらしいのだが、彼女に言わせれば、「それで何も起こらない訳ないでしょ。そもそも何が起こるかも分からない実験。未知の領域を机上の空想ではなくて現実に実験としてしているのだから。言い換えればそれは何を引き起こすかも分からないまま核実験を繰り返している国々と同じ事なのよ。だから死んだホーキング博士も想定出来ないものとして、その実験を危惧していた。そりゃそうよね。この地球上に小さなブラックホールすらも作っちゃうつもりの研究なんだから」と言う事らしい。

 つまりその想定外の実験施設『大型ハドロン衝突加速器』が原因で、今現在世界中では平行世界を繋ぐ空間のひずみがあちらこちらで起こっているらしいのだ。


 そしてここからが僕達の話だ。

 他所の世界から来たという藤崎ほのかと杉野統は、偶然にも通りかかった田んぼの中にある小さな小山、その祠の前でこの小学生姿の溝口ゆきと出会ったのだという。

 彼女はそこの磁場に引き止められ、自力ではそこから移動する事は出来ないでいた。(自縛霊か!?)

 そんな彼女が彼女達に話した内容というのが、僕と彼女(小学生姿のゆき)の話だ。

 とある小六のある日、学校が終った後の放課後、僕らは冒険と称してその祠を目指して小山へと向かったらしい。

 そして時を同じくしてこちらの世界でも、こちらの僕が病気がちのゆきを連れて、祠へと祈願に向かう。

 なぜそんな偶然が起こるのかというと、それは偶然でもなんでもなくて、必然らしい。


「平行世界でも近い世界同士なら、そんなには変わらない。行動、特に大きなイベントは大概同じなのよ。大きく変わった世界ではないのだから」


 それが藤崎ほのかの見解。

 ちなみにこの段階で既に僕はこの藤崎ほのかという女性を相当なオカルトマニアかSFヲタクだと思い、半分も信じて聞いてはいなかった。

 まぁ、しかし、それでも一応話は最後まで聞いていたし、彼女の話も続いた。


 夕闇の祠。

 果たして先程のハドロンの話が本当にこの話と関係があるのかといえば、大いに眉唾だし、僕的にも距離的な事など反論したい部分が山程あるのだが、しかし小学生ゆきの話によればやはり空間的な入れ替えは行われたのだという。

 多分こちら側にいた方の僕は、祠の前で健康な姿の彼女・溝口ゆきを求めて、それこそ自分の全てをも投げ得るくらいの気持ちで神様にでも願ったのだろう。あの頃を思い返せば小学生なんてもんはそのくらい無計画なもんだ。

 そしてそれはある意味一部分的に叶ったのだ。

 こちら側の僕は健康で元気な溝口ゆきのいる、本来僕のいた世界へと移動した。

 その代り入れ替わってこちら側に飛ばされる僕。

 しかしここで「ちょっと待った!」である。

 小学生ゆき曰く。


「突然、太郎君の体が薄くなって夕闇の中に消えてなくなりそうだったので、慌てて引き戻そうとその腕にしがみ付いた」


 らしいのだ。

 その結果藤崎ほのかによると、小学生ゆきは体をあちらに残して、思念のみ僕と共にこちら側に来たらしい。

 思念。思念体…つまりはやはり幽霊だ。





            つづく

いつも読んで頂いて有難うございます。

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