85、オシノ湖村(5)
どこの世の中にも。。。
昨日の打ち合わせに基づいてオシノ湖村でリサイクル施設とオシノ湖村線延長とごみの運搬について説明した。
この説明には1世帯から必ず1人以上が出席するように連絡をしてもらい、出席も確認した。
今日から漁や狩に行くつもりだった一部の村人は不満を持ったようだ。
リサイクル施設の建設に関してはなぜ焼却でなくリサイクルなのかということも含めて説明を行った。
しかし、
「そんな目に見えないものが有害だとは信じられない。そんな施設建設のお金ががあるのなら住民に配ればいいじゃないか」
「ごみを集めるなんて面倒なことはやらないでいいよ。費用がもったいない。それで税金を増やすんだろ」
様々な意見が出た。
仕方ない。
ダイオキシンによる被害映像を見せて説明する。
これでおおむね理解したようだ。
そう思ったが。。。
「そんな映像ってやつ見せられてビビる俺様ではないぞ」
まだ馬鹿がいた。
無知は困るね。
いや、無知は仕方がない。
理解しようとしないのが困るのか。
ああ、始まる前にアカリたちを口説こうとして無視されていたやつらか。
虚勢を張っているのか?
困ったもんだ。
周囲からも白い目で見られているな。
どこにもこういう跳ね返りがいるな。
他の住人からは今回の提案を歓迎してもらえたようだ。
この施設が村の経済と雇用創出に意味を持つことを理解してもらい説明会は終わった。
村の幹部たちからも住民の理解は得られたから大丈夫だと言われたよ。
午後は路線建設の技術者とオートマタに変更点を伝えた。
また、リサイクル施設建設用にオートマタを追加で用意した。
魔獣防御結界を付けた囲いも造った。
さて、一息つくかと思った時に事件が起こった。
『シュン様、他の住民の制止を振り切って魔獣防御結界のブイを壊したうえ、結界の外に出た船がいます。4人乗っています。首長魔竜と遭遇し、襲われています。他の住民が連れ戻しに行こうとしています』
サバから報告があった。
また馬鹿なことをしてくれる。
水陸両用車?
間に合わないか。
水陸両用車ごと現場に転移する。
あ、午前中の馬鹿な発言をした連中か。
助けるしかないか。
2匹の首長魔竜を動けないように拘束する。
他の個体は少し離れている。
応急処置をした4人と船を運びながら村の方へ移動する。
途中で合流した漁師たちに4人と船を託した。
結界の補修が必要だ。
ブイや結界を修理して魔獣防御結界の南側に危険な魔獣がいないことを確認した。
先程の2匹の首長魔竜の拘束を解いた。
湖の生態系の安定のためにも首長魔竜は必要だ。
首長魔竜がいなくなれば数の多い厄介な魔獣が大繁殖する可能性が高い。
村に戻ると4人の若者が尋問を受けていた。
漁業組合の責任者に尋ねた。
「全体に説明したはずだが、彼らは結界の事を知らないのか?漁業組合でも再度説明してほしいとお願いしたはずだが」
「いや、知っているはずだ、説明もしてある」
若者たちは手の指を失った者、膝から下を失った者、肩をえぐられた者と全員が身体に欠損がある状態だ。
応急処置によって普通には喋れるが。
彼らに尋ねた。
「なぜ結界を壊して結界の外に出た」
「あれが結界だと知らんかった」
そうか書いてもあるぞ。
ここから先に行くなって。
文字が読めないのか?
それでもわかりそうだが。
『シュン様映像を出しましょうか』
『サバお願いするよ』
空中に映像が出てきた。
「何が賢者だ。あれが賢者なら俺は勇者だ。こんな結界糞くらえ!俺たちで魔獣を倒すぞ」
ああ、確信犯だね。
自分たちの様子が出てきて逆切れを始めた。
「悪いのはそこの賢者だ。魔獣なんか退治できるんだろ。賢者たちが退治しないから俺たちが退治しようとしたんだ。俺たちが怪我をしたのも賢者たちがいけないんだ。これを補償してもらおうじゃないか」
何言ってるいるんだ?
漁業組合の責任者に再び尋ねた。
「なぜ、魔獣を残すかについても説明をしたかな」
「ああ、したよ。漁も取りすぎるとまずいことも。自然相手ではバランスが大事だということは我々はよく理解している」
「こいつらをどうする」
「結界を壊して住民を危険にしたのだから重犯罪だな。結界の賠償もしなくてはならないな」
「おい聞いたか。君たちのやったことは重大な犯罪だ。また賠償責任もある。頭を冷やすんだな」
結界の修繕費用は金貨10枚以上の価値があるということを役場の幹部が言ってきた。
今頃になって大変なことをしたことを理解したようだ。
震え始めた。
衛士と家族もやってきたが、家族はそろって自分たちで責任を取らせると言っている。
ああ、手に負えない子供の厄介払いか。
家庭にも問題ありかな。
衛士に連行されていった。
首都に護送され裁判になるらしい。
賢者に対する暴言も加味されるようだね。
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