53、スラム(2)
続きです
賢者の塔に戻ってすぐに、聖女様を訪ねた。
「カオルさん、少しいいかな?」
「はい、シュン様」
「1月前に、スラムで重傷を負った神官補佐のことだけど」
「はい、ご存知でしたか。未だ目覚めません。治療を施したのに。不思議です」
「私が見てもいいかな」
「そうですね。賢者様の方が鑑定が高いレベルですから何か判るかもしれませんね。それに治療も」
「ところでその神官補佐が不正を行ったということは本当なの」
「はい、見つかった書類の上では」
「信じていないね」
「はい、彼は真面目で正義感が強いのは神殿の誰もが知っています。彼は何かを調べていたようです。そしてスラムであのように。さらに、不正の書類が見つかってというのはおかしいと思います」
「そういえば不正って何?」
「炊き出しの費用の流用です。かなりの額の資金が使われたようです」
「責任者は気が付かなかったの?」
「そういってますけど」
「疑っているね」
「聖女は疑ってはいけないかもしれませんがね」
先に聖女カオル様のところに来たのは「スラムの嵐」の犯罪に神官補佐の事件が関係していると見たからだ。
聖女カオル様に奴隷の件について話した。
そして、支配の針についても。
人員を集めて救出をし、スラムの嵐を捕らえることも話す。
ただ、神殿にも内通者がいる可能性がある。
信頼できるメンバーということになる。
神殿衛士10名とアカリ・サオリ・タク・ジュン・コン・スイ・アツ・ヤクと聖女カオル・賢者シュンで行く。
10名の神殿衛士は強いだけでなくすでに鑑定で信頼できると判断しているメンバーで以前からこのような場合に備えていた。
『シュン様。マルクがスラムの嵐と話をしています。神官補佐の男を何とかしろと言われています。あ、マルクが神殿に戻っていきます』
『ありがとう、サバ』
スラムのところどころに張ってあった隠蔽の結界はわからないように弱めてサバが監視できるようにしてある。
すでに拘束されている奴隷の数と居場所、スラムの嵐の人数と所在地はわかっている。
『マルクは医療拘置所に向かっています』
医療拘置所は神殿の中にある。
証人を消すつもりか。
急いで聖女と衛士を連れてそちらに向かった。
コンには救出部隊の招集と説明、配置の指示を任せた。
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