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完璧な幼馴染と凡人な僕  作者: Kouga
一学期
16/20

十六限目

 転校生はとりあえず後だ。今は井上の問題が先。こいつが半分諦めているのが問題である。


「またここにいたー!」


 昨日と同じ女の子のグループが井上の方へ近づいて来る。


「井上さん!せっかく一緒にご飯食べてあげてるんだから逃げないでよ」


 あ?こいつ今なんて言った?


「……ごめんなさい」


 井上が委縮してしまっている。


「井上?大丈夫?」


「あ、いえ、はい、大丈夫です」


 とてもそうは思えない。明らかに動揺している。


「ごめんね。井上は今日、僕とお昼食べるから」


「ダメです!井上さんは私たちと食べます!」


 引いてくれないところを見ると、こいつらも嫌々なのだろう。それでも誘わなくてはいけない理由に、あいつが関係している。


「わかった。なら井上に決めてもらおう」


「え?」


 井上が驚いた顔をしている。今この場で選択するのは僕ではない。


「いいですよ。井上さん、当然私たちよね?」


「……」


 井上は即答できずにいる。こいつらの自信はどこから来るのだろう。


「ちょっと井上さん、悩む所なくない?」


「私たちといた方が良いって」


「そうだよ絶対!」


 ほかの女の子たちも口を合わせて井上に話しかける。井上は下を向いたままだ。


「いつまで悩んでるの?早くしてよ!」


「ごめんなさい……」


「ごめんじゃなくて、早く決めてよ!」


 井上の反応に対して徐々にストレスが溜まっていったのか、口調が荒く威圧的になってくる。


「どこに悩んでるの?私たちとこんなの比べるまでもないでしょ!」


 おっとー。こっちに攻撃のベクトルが向いてきた。こんなのって、一応僕先輩なんだけど……。


「こんな根暗で陰キャでオタクみたいなやつと、よく一緒に居れるね」


 的を射すぎていてダメージすごいんですけど。根暗、陰キャ、オタクの超三連撃は痛すぎる。否定もできん……。


「どうせコミュ障で、友達一人もいないんでしょ」


 多分コミュ障ではないが、友達いないのは事実。井上いわく畑本は友達じゃないらしいし。あれ?友達いない=コミュ障なんじゃね?


「昨日なんて影薄くて気づかなかったし、存在感なさすぎ!」


 あー、あれは本当に見えていなかったのか。僕のステルススキルやば!とうとう僕にも力が目覚めたか。てか言いたい放題だな。


 女の子たちはまだ笑って僕の悪口を言っているが、よく尽きないな。最近の女子高生すごっ。


 そんな中、井上が静かに立ち上がった。


「やっと決まった?長いよ井上さん」


「さぃ……」


 声が小さくて聞き取れなかった。


「何?井上さん」


「うるさい!うるさい!!うるさい!!!」


 今度ははっきりと聞こえた。声が大きすぎて中庭中の視線が井上に向いた。


「先輩はそんなんじゃない!勝手なこと言うな!何も知らないくせに……勝手なこと言うな!!!」


「井上さん?落ち着こうよ。ね?」


 女の子の一人が井上をなだめようとする。


「先輩は優しくて、面白くて、いつも私に元気をくれて、頼りになる人なんです!」


 井上は涙目だった。そんな井上に女の子の一人が尋ねる。


「出会ってから少ししか経っていないはずなのに、なんでわかるの?」


「出会って少しだけど、十年間ずっと見てきたから!」


 井上は笑顔でこちらを向く。目にはまだ涙が残っている。


「は?何言ってんの?」


「どういうこと?」


「ストーカー?」


 女の子たちが混乱しているようだ。まぁ当然だ。未来予知なんて信じてもらえない。


「ということで井上と飯を食うのは僕だ!」


「え?でも……」


「お前たちも命令されて嫌々だろ?そいつには僕から話をつけておくから安心しな」


「……」


 女の子たちは何も言わず去っていった。何か言いたそうではあったが。


「ありがとな井上、僕のために立ってくれて」


 僕の思っていた感じではなかったが井上の本音を聞くことができた。


「先輩はどうして怒らなかったんですか?」


「まぁ、間違ってるところなかったしな、自分で否定するのも恥ずかしい」


「先輩はもう少し自分を大切にした方がいいと思います」


「それ、昨日僕が言ったセリフなんだけど」


 これで井上も少しは僕の気持ちが分かっただろう。


「でもこれで逆戻りだな、どうしよう」


「もういいですよ」


「またお前は、」


「違います。確かに環境は戻るかもしれませんが、私は辛くありません。先輩のおかげで少し自分に自信が持てました」


 本音を打ち明けたことによって井上の心境に変化があったのかもしれない。


「確かに、さっきのお前はすごかった」


「あれは私自身もビックリでした。あんな大きな声初めて出しました」


「みんな注目してたもんな」


「はい、私じゃないみたいでした。でも私でした」


 井上は笑いながら語った。どこか吹っ切れた様子。もう前みたいな心配は、必要なさそうだ。


「で先輩、さっきの命令とかってなんの話ですか?」


 井上に本当のことを伝えるか悩んだが、僕のためにあそこまで言ってくれたのに、隠すのは気が引ける。


「あいつらが井上と仲良くするように命令したのは、未来だ」


「どうして?」


「僕がお前のことで悩んでいるのが嫌だったんだろう」


「まぁ、あの人の力なら出来そうですね」


「命令というか脅しに近いと思うけどね」


 多分今もあの幼馴染には頭の中を覗かれているのだろう。しかし直接会って話さなくてはいけない。


 昼休み終了の予鈴が鳴った。


「先輩!また明日もお昼食べましょうね!」


 いつもの元気な井上が帰ってきたのを感じた。



<<放課後>>



 帰りのホームルーム後、いつも通りすぐにあいつが来た。


「いっ君、帰ろ~」



~帰り道~



「転校生どうだった?」


「どうって、頭の中読めるんだからいいじゃん」


「言葉にするのが大事なんだよ!今日学んだでしょ?」


 確かに、大事だ。


「井上は言葉にしてくれたよ。自分の本音を出してくれた」


「みたいだねー、あの子には無理だと思ってたけど」


 こいつはこいつで井上を過小評価しすぎだ。


「確かに、過小評価だったかも」


「直接かは知らないけど、お前が命令した女の子たちには」


「わかってるよ。解決したんだもん。もう必要ないよね」


 どんな取引してたんだ?気になる。


「簡単だよ。退学をチラつかせて脅しただけ、学校に掛け合って退学通知書を偽装してもらったけど」


 怖いよ。なんで学校にまで権力及んでるの?悪さできないじゃん。


「いっ君は、私が悪ささせません!」


「お母さんかよ」


 とりあえず、井上の件は解決できてよかった。


「で、転校生はどうだった?宇兎さんだっけ?」


「あ、そうだ!もう一つ訊きたいと思ってたんだ。その転校生十年前に会ってるらしいんだけどおまえ覚えてる?」


「直接会ってないからまだわからないや」


 まぁ、そうだよな。会ってても十年前だし忘れてるよなー。


「……」


「何?」


「いや、何でもない!いっ君だけが忘れてるだけかもよ」


「僕は、人の名前覚えるの苦手だからな」


「だね~」


 新しい悩み事は明日にしよう。大きな問題が解決したんだ!今日は何も考えずに眠りたい。


「ダメだよ!今日もオタバナするよ!」


「まじで、勘弁してくれ!」


 どうせ根負けして朝までコースだ。この問題の方が深刻かもしれない……。

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