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第5話 商人マーチャ

 隙間の空いている壁から光が差し込み、目に朝の日差しが当たり、意識が覚醒する。

 

朝起きると3人はすでに起きていて、3人は何かスープみたいなものを作っていた。

 

 「スープ作ってるのか?」目を擦りながら聞くと3人がバッと一斉にこっちを向いてくるためちょっとびっくりする。


 「はい、市場のおばさんを手伝うと売り残った野菜を分けてくれるの。腐ったところとか除けば食べれるよ」イラーリははにかみながら答える


 (……それって、ごみをもらってるだけなんじゃないのか? ちょっと不憫すぎて口に出せないな、それにしても孤児って逞しいな)

 「あとちょっと商店から盗ってくるとかな」シークもこっちに向けて親指を立てる。

 (本当に逞しいですね……あれ? もしかしてイラーリは昨日肉串を盗るために近づいてきた? まあ、こっちも親切だけではないからな)

 

 「捕まるとただで済まないけどな、この前もシークが捕まりかけたし」

 ウィズは呆れた目でシークを見た。人のよさそうのイラーリも何も言わないので、おそらくこれは孤児の中では常識なのだろう。孤児たちの現実を目のあたりにすると日本はどれだけ幸せかと、自分に余裕があるわけではないが孤児たちを助けたいという想いが浮かぶ。


 3人を眺めているとイラーリがスープを木製のお椀にスープを注ぐ、お椀は凸凹で自分たちで作ったが分かる。スープを一口飲んでみると味が薄く、野菜は具沢山とは言えないが味はしっかりと野菜の味が出ていて悪くはない。

 

 野菜は地球と同じようにジャガイモやニンジンなどが入ってる、変わった野菜はない様だ。3人とも味わうように少しずつ飲んでいる。イラーリが言うには朝はスープだけで夜に盗ってきたものを食べる、盗ってこれないときは食べることもできないので本当に厳しい生活を送っているようだった。

 だがもうすぐに冬になるため薪を集めなければならないらしい。一般の家庭は火の魔石を買うので必要がないが、孤児たちにお金なんてあるわけもなく毎回冬になると死人が出るらしい。本当は教会が孤児院の役割を果たすはずだが、協会は子供を預かる時にお金を要求しそのお金の分しか面倒を見ず、結果沢山の子供が孤児になる。3人も教会で生活していたのだが預かっていたお金が無くなり追い出されたようだ。ほかにも追い出された子供たちがいるがあんまり固まらず3から4人がグループになってせいかつしてる。

 

 スープをあっという間に飲み干していくと、ウィズはこっちを見ながら注意してくる。

 「早く飲んでもお代りできないぞ、残りは夜に取っておかないといけないから」

  

 「お代りいらないよ、夜になればお金が入ってくるから今日お店に行こう」

 3人ともお店という言葉に反応して嬉しそうににやける。

 

 


 朝のスープを飲み干した後に川で体を拭き、港町の店に向かい。

 店に入ると店主はすでに倉庫で商品のチェックしており、こっちを確認すると「はあ」と溜息を吐き。

 「なんで人増えてるんだ? アルスちょっとこっち来い。3人は端っこによって仕事の邪魔するな、商品にも触るな」


 呼ばれたまま人目のつかない店の奥に行くと、バシと頭を叩かれてこっちを睨みながら説明を促す。

 

 「実は昨日僕が雇った人です、仕事早く終わればお金たくさんもらえると言われたので。もちろん店主はお金を出す必要はないので、責任も僕がしっかり持ちます。帰るとき体チェックして物を盗ってないかも確認しますので心配ないです」

 店主は説明を聞くと、笑って可愛がるように頭をぐるぐると回す。


 「小賢しい、それと店主じゃなくて俺の名前はマーチャ・ラッカードだ。昨日俺が言った信用の意味しっかり分かってるようだな。まあいいだろ、お前がしっかりと面倒見ろよ。問題起こすと追い出すからな。賠償もお前にしてもらおう」

 マーチャに許可をもらうと心の底からほっとした。

 

「マーチャさん本当にありがとうございます」

 マーチャは俺を見て少し考え込んだ後に嬉しそうに話始める。

「それより人を雇ったのだお金に困ってないか? 必要ならお金を出すぞ無利子で50万R貸す、返すのはいつでもいい。その代わりに毎日給料から1000R返済に充てる。どうだ? かなりいい条件だと思うぞ」


 (……は? いい条件ところじゃないぞ、話がうますぎて怖いわ。何が狙いなんだ? でもお金がないのは事実だ、何が狙いだとしても借りるべきだろう。4人が暮らすには7000Rでは足りなさすぎる。文字読めないから騙そうとしてる?)

  

 「ぜひお願いします、ただ紙に条件を書いてもらってもいいでしょうか。だけど文字読めないのでどうすればいいのでしょうか」

 返事を聞くとマーチャはにやりと笑いながら承諾する。

 「はっはっは、そうかそうか。お金と借用書はギルドに預けて置くといい、帰りに一緒に商業ギルドに寄ろう。文字読めないのも大丈夫だ商業ギルド職員たちに証人になってもらおう、流石に公正のギルド職員たちの前では嘘付くと商人としては死と同じ意味だからな」

 マーチャがこんなにも親切してくる意味わからかなかったが、デメリットはなさそうだし借りることにした。そのあとは3人に仕事を教えながら夕方になった。

 





        ------マーチャ・ラッカードーーーーーー


 私の名前はマーチャ・ラッカード、ラッカード商会の跡取りだ。


 本店は王都にあり、最近このオックスソード貿易街にやってきた。王都で火遊びしすぎて親に修行がてら追い出された、やっぱ貴族の娘に手出したのがまずかった。

 ラッカード商会は魔石関係の商品と香辛料などを扱っており、莫大な利益を出しておりこの国では上位5ぐらいには余裕で入るほどの大商会。

 

 この街にやってきた時正直憂鬱だった、連れてきたのは護衛3人と従業員2人とお荷物一人だけだ。手下は優秀とは言えず、ギルドでほかの商会から人手借り手店を回していた。 


 店の方がもうすぐ完成するという時にアルスがやってきた。歳は12ぐらい、黒眼に黒い髪、頬は痩せいて、ボロボロ服だが変な匂いしていなかった。どうやら来る前に体を洗ったらしい。

 孤児にしては気が利いており、威圧しても特に怯まず、驚くことに計算能力がある、しかもかなり早く複雑な計算を計算盤より早く解くなどかなり優秀だった。文字は読めないそうだが。それでも喉から手が出るほどほしい人材だった。倉庫は従業員2人と回せないほど忙しい、しかも倉庫を増やせと本店から無茶ぶりがきてる。人は寄越さない癖文句ばっかり言いやがる、火遊びしすぎた俺が悪いが。アルスを雇えたのは道を歩いて魔石結晶拾った気分だった。


 しかもこっちの意図を汲み話を合わせてくる、おかげで借りた人手を何人かを引き抜けた。正直最初アルスをどこかの間者ではないかと疑ったが、自分の商人の目は違うと訴えている。何かあるのは間違いないがそれが何かは分からなかった。雇った次の日には自分で孤児を連れてきた時はやはりアルスはただ者ではないと分かった。アルスはこの店で自分の影響力を増やそうとしたのだ。計算能力はあっても所詮は子供だ大人からは侮られる、さらに孤児はやる気の満ちた目をしていた。

 

 アルスは逃がしてはならない人材だ、鎖が必要と思いお金が貸すことを申し出た、孤児4人が生活していくには7000Rはどう見ても足りなかった。文字読めないから罠を仕掛けようとしたがあっさりと躱してきた。お金は返してもらわなくてもいいと思ってる、こいつには50万Rの価値はある。アルスの将来が楽しみだ、大物にならなくてもうちの店を支えてくれる、俺の手に負えないほどの大物なら乗っかってお金を稼げばいい。どっちに転んでも損はない。


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