第4話 魔法使い
夕日は完全に落ち、暗闇が辺り一帯を飲み込んでいく。夜風が壁の隙間をすり抜け体に刺さる、庭に生える草は黄色に枯れて今の季節が秋だと分かる。
イラーリは部屋に積んである薪に火をつけ、4人で火を囲みながら話をする。
(知らないこと多すぎるからな、色々と知りたい)
「そういえばアルスの兄ちゃんは仕事してるの? お金持ってたし、どうやって雇ってもらえたの?」
イラーリは遠慮気味に聞いてはいるが目はかなり必死に見えた、この目を見ると今日雇ってもらえたのはかなり幸運だったようだ。
「港町に新しい店ができたから人手が足りないと思って、行ってみたら案の定雇ってもらえたよ」
それを聞くと食い気味で言葉挟んでくる。
「私も雇ってもらえないかな? 私獣人だから大人に負けないぐらい力持ちだよ。きっと役に立てられるから、じゃないと今年の冬越えられそうにないんだ」
上目使いで聞いてくる、シークは何かを期待するような眼を向けてくる、ウィズは信じていないのか胡散臭いそうにこっちを見てる。
(力持ちか、荷物持ちには使えるだろうけど。今日店主が言ってた信用とは商品の情報は勿論、その商品を盗らないのかの意味だと思うけど。今日仕事していても従業員はしっかりと俺を見張っていたし、同じ荷物を運ぶにも大人と孤児なら孤児雇う人はいないだろう、仕事も覚えてない孤児が2日目で他の孤児連れてくるとかクビにされそうだな)
目を閉じて考えをまとめた結果無理、下手したら自分すら仕事を失う。断ろうと口を開こうとするが、今日イラーリが仲間のために肉を我慢する様子が目蓋に浮かんでくる。はあ、と大きなため息を吐き口を開く。
「その前に一つ聞きたいのだだけど、イラーリにとって二人はなんだ? 他人なんだろ?」
「他人じゃないよ、血は繋がってないけどちゃんと私の家族だよ」
イラーリは怒気の含んだ言葉で返してくる。
「雇うのは無理だよ、身寄りのない孤児は雇ってくれる処はそういないと思うぞ」
そう答えると3人はあからさまにがっかりしてしまった。空気が重くなったことを確認してからまた話し始める。
「でも、俺は一日7000Rもらってるから4人が生きていくには多分足りてると思う。仕事は手伝って貰えるなら食事は補償する、でもいくつか条件がある」
俺の言葉を聞くと重くなった空気が一気に吹き飛ぶ、イラーリは嬉しそうに条件を聞いてくる。
「条件は1仕事場では俺の言うことを聞くこと、2店の商品情報を漏らさないこと、3店の商品を盗らないこと。特に2と3はお前たちだけじゃなくて俺も仕事がクビにされるから」
特に最後少し威圧を与えると3人はコクコクと頭を上下させる。時間が立つこごとに3人のテンションが上がり、騒ぎ始める。
「アルスの兄ちゃんホントにありがとう、これで冬を越せるよ。今年こそもうだめかと思ってよ」
ほっとしたのだろう、イラーリの目尻に涙が見える。
「アルスさんはよく雇ってもらえたね。何をしたの?」
ウィズはまだ完全に信じてはいない、少し探りを入れてくる。
「多分計算できるから雇って貰えたと思う、3人にも計算を教えないとな。まあそこは追々」
イラーリとシークは頭の上に?と浮かべるが、ウィズは嬉しそうに頷く。
「兄ちゃん計算できるってすげー、魔法は? 魔法は使えないの?」
シークは少し考えた後目をキラキラとさせながら嬉しそうに聞いてくる。
「え? 魔法って何?」
「「「え?」」」
3人は行きの合った声で驚く、どうやら魔法はこの世界では常識らしい。
それから深夜までウィズから魔法について聞いた、魔法を使うものを魔法使いと呼ぶ。
この世界には基本の下位属性火、水、土、風、光、闇と身体強化魔法がある、さらに属性魔法には素質によって強化され火は爆(爆発ができる)、水は氷、土は金属(錬成ができる)、風は嵐(空を飛べる)、光は癒し(傷を癒せる)、闇は影(影があれば中に潜り込める)、身体強化魔法の上位は魔力を体と物にまとわせることができる強化魔法である。
そしてそれらの魔法を覚えるには魔結晶と呼ばれる魔石の上位が必要で、500体ぐらいに1つの確率で手に入れつことができる。魔結晶は高価なもので下位属性は100万Rほどで取引されている、上位属性は1000万R以上を下らない。見分ける方法は色で分別される、火は赤、水は青、風は緑、土は茶、光は黄、闇は黒、身体強化は透明。魔結晶は真ん中だけが色付きは下位、全体光ってるものが上位とされている。
さらに種族によっては得意な属性もあり。エルフは水と風と光が得意で。ドワーフは火と土と身体強化。獣人は種族によっては変わってくるため一概にいえず、だが大体身体魔法が得意とされる。人間は得意な魔法がない、だが魔法使いの子供が稀に生まれながら魔法が覚えることある。人によっては覚えられる魔法の数と魔力量が決められており生まれながら差がつく。
これだけ聞くと世の中には魔法使いが溢れるように見えるが、実はそんなことはなく人間同士の戦争でも魔法使いの数は減り。冒険者の中に魔法使いはいるが魔物と戦い死んでいくとほぼ数が増えることはない。冒険者ギルドも手を打たずに放置してるのが現状だ。
魔法のことを聞きながらワクワクが止まらない、深夜になっても寝付けず次の日は起こされると目の下に大きな隈ができていた。