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自室に引きこもり、何やらギャルゲーを口元に怪しい笑みを浮かべながらプレイするこの男性、名を沢田治済。
つい一ヶ月前まで、ゲーム開発を行う中小企業の技術部門で主任補佐をしていた。
毎日のように残業を繰り返す日々であったが、休日は他の会社より多いのが救いか。
しかし、そんな多忙な中で支店長である上司に、『解雇通知書』をもらってしまう。
――ま、なるようになるだろ。
割りと気楽に考えた再就職。
……かなり、嘗めていた。なんと、大手のゲーム会社のそのほとんどから、書類選考の時点で不採用をもらったのだ。
「……はぁ、技術スタッフって人手不足なんじゃないのかよ。ネットのはデマかよ」
そんなとりとめのない事を呟くと、着信が来た。
治済はスマホやiPhoneをあまり好まない。
幼少の頃より携帯はガラケーを使っているからだ。
一時は流行にのって最新機種を使っていたが、通話能力が絶望的に低く、高々数百メートルの距離ですらノイズが走る。
どの機種も、ドングリの背比べだったので、昔から通話能力に関しては一定の能力があるガラケーを愛用している。
――何だかんだで言い訳つけてるが、ガラケーが使いやすい。の一点だろうな…
治済の自嘲は、しかし誰にも聞かれない。
「あー、泰輔か」
『お!社蓄リストラマンじゃないか!どんな感じだ?』
「……、一応8人は完全攻略。9人目は…攻略しなくても周回2回目で適当にやってりゃクリア確定だな。……問題は、最期の1人。どのルートもバッドエンドなんだが」
現在治済は、仕事をせず一つのゲームをクリアするために昼夜粘っていた。
就職活動をしていない訳ではない。ただ、悪友である大輔から、どうしてもクリアしてほしいゲームがあるからと頼まれた。
恋愛シミュレーションアドベンチャーゲーム。その難易度はク○ナドやらTo ○eartと並ぶ程の難しさ。
――まあ、こんだけ難しけりゃ、いくらプロのゲーマーでも投げ出すよな。
まず目につくのはフラグ管理の難易度。一つの選択肢を間違えたら即バッドエンド。しかも、途中でセーブできる場所は決まってるため、トライ&エラーがやりづらい。
次に最近のゲームにしては珍しい既読スキップができない。
ただ唯一評価できるのは、個々のヒロインのエンディングだろうか。
所謂泣きゲーと呼ばれる種類の物だった。
『っぱりかー。いやな、その子はプロゲーマー50人が挑戦しても解けなかった難解なんだよ』
「確か、数か月前にあった『3日以内に攻略したら賞金50万円』だっけ?このゲームだったのか」
『そうそう、発売から一年経っても確固たる攻略が見つからない、無理ゲーの1つだぜ。しかも公式がその攻略データを紛失しちまって、ネットの同士達の情報が頼りっつーね』
「んじゃ、もし過去に戻れたら賞金50万もらえたかもな」
『……は?』
「――攻略したぜ。しかも、録画も済ませてる」
『マジかよ!?っしゃ!今日は飲みに行こうぜ!』
「ああ、ちゃんとデータも見せてやるよ」
通話を切る。
久方ぶりに逢える悪友に、自然と表情が緩んだ。