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文芸・リプレイ・その他

シュガーベアー

作者: 采火

 クマの好きな食べ物は何か知ってますか?

 それは蜂蜜です。

 では。

 この世界に不思議な蜂蜜があるのを知っていますか?

 このお話は、クマがその不思議な蜂蜜を食べてしまうお話です───


☆☆☆


 ある日、とてもお腹を空かせたクマが一匹いました。

 クマの大好きな物はあまーいあまーい蜂蜜。

 クマは蜂蜜を探しました。

 蜂蜜を探しに遠くの森へ行きました。


☆☆☆


「ねぇねぇ、そこの小鳥さん」

「なんだいどこぞのクマさん」

 クマは近くを飛んでいた青い小鳥に道を尋ねました。

「美味しい蜂蜜はありませんか?」

「私は知らないよ。向こうにいるヤギの親子なら知っているかもね」

 小鳥は飛んで行きました。


☆☆☆


 しばらく歩いて、クマはお母さんヤギと七匹の子ヤギがいるのを見つけました。

「ヤギさんヤギさん、美味しい蜂蜜を知りませんか?」

 お母さんヤギが一番小さな子ヤギを抱っこしながら言いました。

「知らないねぇ。あっちの子ブタの三兄弟なら知っているかもね」

 クマはヤギの家族に手を振って歩き出しました。


☆☆☆


「こんにちわ、美味しい蜂蜜を教えてください」

 レンガで出来たお家のドアを叩くと三匹の子ブタが顔を出しました。

「一番目のお兄ちゃん知ってる」

「知らなーい」

「二番目のお兄ちゃんは?」

「僕も」

 子ブタの様子を見てクマはしょんぼりとしました。

 クマの可哀想な姿を見た一番下の子ブタが教えてあげました。

「この先の森にお菓子の家に住む魔女がいるからそこに行って聞くといいよ」

 クマはちょっぴり喜びました。


☆☆☆


 美味しそうな匂いのする方向につられて森を歩けば、お菓子の家を見つけました。

「美味しい蜂蜜はどこですか?」

「おやまあ、珍しいお客さんだね」

 チョコレートのドアを叩くと、中からお婆さんが出てきました。

 お婆さんはとある方向に指を指しました。

「向こうにあるよ。ただし、不思議な蜂蜜だからね……」

 お婆さんの意地の悪そうな笑みに、クマは困った顔をしました。

「ありがとう、お婆さん」

 それでもクマはそこに行くことにしました。


☆☆☆


 そしてクマは住処から遠く遠く離れた森で、一本の樹の“うろ”を見つけました。

 クマは“うろ”の中に手を入れました。

「ないかな、ないかな」

 すると。

 とろ~り……。

 あまーいあまーい匂いとともに、手にねっとりとした感触が。

「蜂蜜だあ~」

 クマは夢中になって舐め始めました。

 クマはとってもお腹を空かせていたのです。

 なので気づきませんでした。

 自分の足の先から順に、白く固くなっていくことに……。


☆☆☆


 手が届くところの蜂蜜を舐め終えたので、クマはもっと食べようと奥の方に行こうとしました、が。

 自分の足が固まっていて動きません。

 無理に動かすとボロボロ崩れます。

「どうしよ~」

 クマは悩みました。

 悩んで、悩んで、悩んだ末、またお腹が空きました。

 お腹が空いたクマは調度目に付いた、崩れた自分の足の欠片を食べてみました。

 クマの口に広がったのはあまーいあまーい砂糖の味でした。

 クマの足は砂糖になっていたのでした。

 クマは食べました。

 崩れた自分の足の欠片を。

 ……自分の足を。

 クマはとうとう歩けなくなりました。

 クマは草を食べ、飢えをしのぎました。

 しかしもうクマの周りには何もありません。

 あるのは蜂蜜の樹だけ。

 くまは一生懸命蜂蜜のある“うろ”の部分に上り、うろの中に入りました。

 中には蜂蜜がたっぷり。

 クマはとろとろの黄金色をした蜂蜜を舐めました。

 クマはさらさらの雪の色をした砂糖になってしまいました。

 砂糖は蜂蜜に溶けて、不思議な蜂蜜の一部になりました。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすく、さらりと頭の中に入ってくる良い文章だと感じました。ストーリーも明確で読みやすかったです。 [一言] 短い文章でしたが、楽しませて頂きました。他の作品も読んでみますね。
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