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さよならさよなら、さよなら。

「御注進!! 御注進!!」



大の大人が声を張り上げて廊下を駆け抜ける。駆け抜ける男達に共通する点は、両手に書状をを掲げている点であった

。男達によって仰々しく掲げられたその書状の名前は注進状。

今風に言えば軍事機密文書だ。

書かれる内容はといえばこちらも今と変わらず、どこそこにどの程度の人数が集まっただとか、どこそこの道は大人数では通るのに時間がかかるだとか、軍事活動をする上で必要な情報である。



そんな文書が現在、艮公が本領の津山には皇太子領に接する領主や備州東部から播州西部一帯の寺社からの注進状がひっきりなしに舞い込んでいた。

その量と頻度たるや注進状を城内へと運ぶだけの専任部署が出来上がるほどであった。



「陽が中天を回る前に、本日二十回目の注進ですか」



室内にも関わらず外套、それも頭部まですっぽりと覆い隠すものを着込んだ人物が声をだした。


うんざり、という声色を隠そうともせず外套の主、長田扇が男達が仰々しく運んできた書状を未読と書かれた箱の底に放り込んでいく。

その未読の箱から書状を取り出しては差出人を確認するのは二人の獣人だが、こちらもそれまでに処理した量とこれから処理するだろう量を想像したのか辟易とした表情を浮かべる。



「ここからは五回目か……」

「皇太子廃嫡とその討伐令を春日様が取り付けたはいいですが、ここまで手の平を返したように情報を売ってくるとは思いませんでしたね扇様」

「祥、情報を売るというのは去年の情報を恩着せがましい書き方で送って寄こすことをいうのではありませんよ? それと、要。同じ情報を五回も送って寄こして時間を無駄にさせた馬鹿と去年の情報を送って寄こした馬鹿の名前を御館様に報告しておくように」

「扇様。暗部を送り込んで処置をするのですか?」




祥と呼ばれた犬耳の女が扇の言葉に疑問を呈する。

が、扇は着込んだ外套の上からでもわかるほどに大袈裟に肩をすくめる。




「処置しに行った暗部が発端で別のいざこざに巻き込まれるのが目に見えています。そんなつもりがなくても厄介事を背負い込むのが御館様の宿命ですから、ここで火種を抱え込むようなことは不要です」

「扇殿。ではなぜわざわざ馬鹿共の名前を御館様に?」



要と呼ばれたこちらも犬耳の女が疑問の声をあげる。と、そこへ二十一回目の注進が届けられる。

扇は溜息と共にそれを受け取ると、先ほどと同じように未読の底にそれを叩きつけると、要の問いに答える。




「これらの注進は言ってしまえば送り主達が不安でしょうがいないから送ってくるのですよ」

「扇殿、説明をしていただけると」

「従来の国王、皇太子、そして皇太孫という予定されていた世襲が皇太孫は皇太子によって暗殺され、その皇太子も廃嫡。皇太子の座にはまったく想像もしていなかった春日が座ると決められたことで、自分や自分の子や孫に引き継がせる確約を取り付けていた領地や権利が、ひょっとすると取り消されるのではないか、皇太子との繋がりがあったことを口実に皇太子と同じように討伐対象にされるのではないか、とね」




扇は部屋の壁にかけられた備州および周辺国の大まかな地図に視線を送る。その視線は備州の東北にある津山を難無く見つけだす。

その視線につられるようにして要と祥の視線も地図へと向けられる。



「春日様や件の草宰相そして貴女達姉妹が東の播州を混乱に陥れ、御館様によって北の雲州は先の戦とその後の伯州勢による反乱で大混乱、南の讃州とは貿易優先で今後ともよろしくやれるでしょう。そして西の芸州も讃州に同じ。となれば外を憂うことなくない内患を取り除ける状態だというのは少し聡い者ならすぐに気がつきます」

「扇様。つまりそれは、それだけ聡い者ならこれを機会と春日様や艮公が敵対していた一族を討ち滅ぼすのではないか、と気がつくと」

「滅ぼされるのではと思う側からすれば気がついたでは済みませんが、そうであるならばそれを機に自領を拡大させることができるのではないか、と思う者もいるわけです」

「扇殿。それがこの注進の量に現れた、と?」

「そういうことです。特に皇太子領にある寺社に至っては、片山崩れ以後の獣人迫害に手を貸したり傍観することで権利を安堵させたところがほとんどです。ところがその安堵した皇太子は廃嫡、そして討伐令。その討伐令の先陣を切ると言われているのは片山崩れとその後の迫害で痛手を負った真庭」

「つまりなにか? 扇殿、此奴らの半分は片山崩れでは我らを殺すことに血眼になっておきながら、此度は寝返るから恩情が欲しいと言っているということか?」




要の全身から怒りを通り越した殺気が蒸気のように湧き出し狭くない部屋を満たす。

が、扇は構うことなく言葉を続ける。




「要の言う通りです。平たくいえば禁令が欲しい、と言っているのですよ」

「扇様、どこを進軍するかも決まっていないうちから陣取りの禁令を要求してきているというのですか?」

「報復されるのではないか、と思えばどこを進軍するかに関わらず禁令は欲しいでしょう? 特に今回は春日様や艮公、そして御館様そのいずれかの名での禁令がなければ略奪の対象となってしまいますからね」

「扇殿。皇太子の命だからと、それを口実に嬉々として、獣人だというだけで奪い犯し、死んでなお嬲りものにしあまつさえ骸を葬ることすらせずに門に掲げていた連中が、奪わないでほしい、と抜かしているというのか」

「姉様の言うとおり、あれは地獄でした。それを今更怖いというなら」



姉の爆ぜるような言葉に呼応して祥からも殺気が吹き出し部屋に渦巻く。が、扇は喋って喉が渇いたと湯呑に注いでおいた茶を啜って一息つくだけで流してしまう。

その仕草に姉妹が反発の口を開く寸前、二人を止める言葉を口にする。



「御館様が」



その言葉に姉妹が出していた殺気を揃って鎮める。それはもはや条件反射の域であった。

そして、扇に言葉の続きを目で催促する。



「御館様が皇太子討伐に矢銭や武具を含めた手配一切の協力をする条件としてあげたのは、皇太子領その全ての根切りでした」



顔を隠している外套の穴が、根切りの単語一つで地獄へと続く穴のように暗く感じさせた。

根切り、それは戦に徴収された者だけではない、住民を含めた皆殺し。そこには老若男女は問われず、そこにいるというだけで殺害の対象となるという苛烈な戦術だ。


扇の言葉は自分達の主が戦への参加条件としてあげたのが領地でも権利でもなく皇太子領の領民、その全ての虐殺であるという意味であった。



「備州がこれ以上荒れることを嫌う艮公、今後の皇位継承のことを見据えた上でどう勝つかが問われる春日様は当然反対にまわり、実働を担う真庭を率いる方護様もやれと言われればやるが真庭単独では2千超えるかどうかでしかない以上現実的な話ではないと諌めに回られましたね」

「扇殿の、いや、方護殿の言う通り、現実的な話ではないだろう」



壁にかけられた地図、赤く縁取られた備州の東側に海岸部から山間部まで長く伸びた皇太子領を睨みつけながら要が同意する。

本当に彼女達の主が彼女達が望む通りの根伐りをするというなら、その領地全てで一斉に根伐りを行わない限りは、自分達が逃げられたように誰かしらが逃げるだろうことを要も祥も理解していた。

そしてどれだけ兵を、いやこの復讐に賛同する獣人をかき集めても皇太子の領地全てで根切りを実行するのには数が足らないことも、真庭の中枢で働く二人には理解できていた。

が彼女達は、彼女達の主が墓穴を掘る才能だけは人一倍長じていることを忘れていた。




「ダメなら真庭公司に触れを出して、と言い出したんですよ」




扇の口調に注進を捌いている時以上の疲労が滲む。

真庭公司で年季明けまで奴隷として働かせる3千を焚きつけるとまで言い出した、と。

その言葉に要も祥も自然、顔が引きつってしまったのを誤魔化すことができなかった。




「過去の御館様の所業からして、それでも半端で終われば御の字、後方支援が滞って伯州の解放軍が負けるのはおろか、悪くすれば送り込んだ3千が皇太子領の領民と手を組んで蜂起するか」

「扇様、それで会議は如何に?」

「御館様を私が殴り飛ばした後、皇太子討伐後に迫害については追って詮議、皇太子領内の集落・寺社への禁令の発布は無しで妥結させました。正直、今回の矢銭はウチ頼みですから否とは言えませんし」

「……それで御館様は部屋に篭ったままだったのですか。会議前まではそれは大層な意気込み様だったのが打って変わった様子だったので気にはなっていたのですが」

「姉様は呼ばれるはずだった夜に呼ばれなかったのを気にしていただけのような?」


軍事費を盾に最低限の要求は飲ませたと告げる扇が主を殴り飛ばしていることは姉妹揃って無視し、さらに要は祥の指摘を無視して確認をとる。



「扇殿。そうだとすると、ある種拗ねておられる御館様に、この鬱陶しい書状の主がどれだけいるかを報告してもゴミ扱いされるだけでは?」

「皇太子の首をはね飛ばした後に詮議しますからそのときの有力候補です、とでも言えば」

「あの、扇様。あの娘と御館様が抜け出して直接現地で暴れる可能性は……?」

「『勇者』の娘ですか……。まあ、あの娘と手下であれば数カ所はできなくもないでしょうが、まあ、途中で御館様のやる気が萎えるでしょう。高いところから指示する分には過激ですが、現場でそこまで冷血になれる人ではありませんからね。母親が今回は御館様の側を離れないようにキツく言い含めていますから、娘単独で根切りに行くこともないでしょうし、御館様が同行するにしても最初の村で心が折れるでしょう」

「娼婦にしても探索者にしても、御館様が現場を知ったことで色々救われたものでしたね」




祥が懐かしむような口調で主の性を思い浮かべる。真庭では娼館で、総社では探索で、一儲け企んではいたが、あれこれと言いながら結局手厚い手当を出すことでその利益の半分ほどを棒に降っていたことを。





「口でいうほど決意が堅い人ではない、ということですよ」





暗い外套から零れた扇の言葉は苦笑で占められていた。







書類書類また書類。

その部屋を表すなら、それ以外に言葉が見つからないほど書類が氾濫した部屋。書類を重ねて机にしているのではないかと思ってしまうほど書類しか見えない部屋に今日一日に届けられた注進状を持ち込んだ扇は、彼女の主が自分の手元の書類の束を見て顔色を悪化させたのを見ないふりをして、世間話のように姉妹との話を切り出す。



「ということでそれとなく水を向けたところかなりの人数が御館様は口先だけではないか、という疑惑を持っていることがわかりました」

「仕事をさせたいのか仕事をやめさせたいのか、どっちか素直に言って欲しいんだが」




書類の山から投げやりな返答が飛んできたのを、扇はそのまま打ち返す。




「できればやめていただければ」

「根伐りは我慢したんだから、どう侵攻するかぐらいは決めさせて欲しいんだが」

「それは真庭や津山の軍部に案を出させていますので、それを決裁いただければ充分です」

「最低でも赤磐を包囲して水攻めにしたいんですが」

「資材と金の無駄ですよどう考えても。包囲してから土手を築いて川の水を引き込んで、と普通に攻め込む倍以上はかかるんじゃないですか? 第一、御館様が根伐りを要求してそれが許可されたという嘘を皇太子領に意図的に流布したことで皇太子領から脱兎の勢いで人が逃げ出していますよので、包囲しにいった頃には誰も居ない、ということも考えられますが」

「逃げ出しても皇太子領地と接している領地に入り次第、村で税を納める義務を放棄した罪で拘束。そのまま奴隷にされる訳だし、事後の詮議で隷属化させてるから偽証も出来ずに自白するようになるからね。逃げる分には一向にどうぞ、と」

「一部は播州へと逃げ込もうとして赤穂の軍勢に殺害されているようです」

「皇太子が播州に逃げ込んだらそれを口実に攻め込むかもしれないから国境はしっかり警備しといたら、と脅したのが効いたかね?」




「向こうが攻め込む口実にもなりかねませんが……」

「草宰相が赤穂が脱税で使ってる手口を播州国王に報告することもできると釘刺したし、大丈夫じゃないかね? 流石に皇太子じゃあるまいし、ボロボロになった広いだけの領地を切り取ったからって播州と備州の間で赤穂が単独で生きていけるとは思わないだろうし」

「随分と今回は手際がよろしいのですが、片山ではその皇太子に出し抜かれているので正直何かあるのでは、と怖いのですが……」

「アレも皇太孫が机上で考えてたのに皇太子が勝手に乗っかっただけだったから、皇太子が皇太孫殺した時点で上がったようなものなんだよね」



「……実は皇太孫が死んだということ自体が嘘という可能性は?」

「皇太子の金払いが悪くなって以降に、皇太子領にいる皇太子の手勢の半分近くはウチの商会の息がかかっていて、殺害に協力したのはそのうちの一つだし」

「よく皇太孫に見破られませんでしたね」

「あー、かなり暴露たよ? ただ、暴露ても皇太子領出て逃げれば当時の皇太孫じゃ追いかけようがないしね。そもそも片山の敗因は宮廷政治で工作されていたことに気がつけなかったことが最大の原因だったからね。ところが今回は皇太子が自分の領地に皇太孫を連れて引きこもったことで最大の武器だった宮廷政治を捨てた状態。皇太孫にしてみれば目も耳も塞がれた状態で、手探りでこちらとやりあうことになったからね。それでもかなりの数が暴露たのは正直鳶が鷹を産んだと言って良かったね」

「馬鹿な親に従う、いえ、馬鹿な親から産まれたのが皇太孫の敗因とは」




そこまで言って扇は首を降ると、もう一度同じ質問を繰り返す。




「そこまでされているのであれば、できればやめていただけると」

「もう少しで釣れるんでね」

「……何を釣るおつもりで?」

「皇后」




手元に溜まった書類から顔を挙げることなく発した言葉からはその意図が見えることはなく、扇は言葉を重ねるしかなくなる。




「今回皇太子を廃嫡することで買う恨みをここで全て断つためにわざと大掛かりな水攻めの準備をして侵攻を遅らせている、と?」

「皇后が後ろ盾だった北山公爵に巻き返しのために皇太子領に出兵した背後を突くようにと要請を出すハズなんだよね」

「……それを唆しているのは」

「当然、ウチの手下」

「ここまでくると哀れを通り越して滑稽というべきでしょうか。となると北山公爵とは」

「当然、密告さえすればウチが原因のインフレはなんとかしてもいい、と伝えてあるし、真庭に軍を発した時点で播州に組みした皇太子を助ける北山公爵一族も討伐対象になる、とも」

「巻き返しに一縷の望みをかけた場合は」

「西原公爵にその背後を突けるよう今回の計略については伝えてあることも、北山公爵には伝えた」



「その策が西原公爵から国王へと伝わって春日様、と巡り巡って私に止めるよう懇願がきているのですが」

「皇后が私兵他全ての権限を取り上げられて実質監禁された状態にでもならない限りは、北山公爵に接触するんじゃないかな」

「そして春日様が権勢を振るうのが目に見えるこの時節に皇后が私兵他を手放すハズもなく、御館様の手の平で転がされて終わるわけですか……」

「国王が素直に皇后にお前の企みは春日によって仕向けられただけで成功しない、と告げられればいいんだろうけど」

「それができれば、あの皇太子は出来上がっていない、と。それでも妻であり助けたいようですが」



「自分で動かなかった以上、そのツケは払って貰うしかないんじゃないかな? 皇后いえども国を売る行為をしても咎め無しはあり得ないし」

「……まさか」



主の言葉に何か気がついたのか扇が引きつった表情で主を見る。



「実は本命の仕込みは終わった後だとでも?」

「伯州に一通、播州にも一通。どちらも国境の警備に偶然見つかるように手配し終わってるから今更国王が動いても」

「やけに暗部が捕まらないと思えば……」








扇が今度はどんな墓穴を掘るのかと慄こうと、国王が皇后を北山公爵を唆しての内乱を起こそうとした罪で廃位するしかなくなったことを嘆こうと、淡々と日々は過ぎていく。




皇太子の廃嫡が決定してからおよそ二ヶ月。

再三再四では済まないまでの数で皇太子から国王へと送り届けられた、謀叛の意図は無い・廃嫡される理由が無いという嘆願書を街道で握り潰し、逆に各地の領主へと自分が南海公爵領へと侵攻中に真庭と津山を足止めすれば褒美を与えるという檄文を偽造しては配布していた訳だけど。



表向きの仕事である赤磐侵攻のための準備も準備でするしかないわけで。



――まともな進軍しようとしたら道がボロ過ぎて軍勢が通過できないとか、土建無双してからじゃないと侵攻もできないとは思わなかった……

――いやまあ、皇太子領から真庭への進軍止めるために山道をボロボロにしたのはウチだけど、津山と赤磐との道もボロボロとか。



しょうがないから、真庭からだけではなく、道がマシな倉敷からも多少の軍勢を、と募集をかけたところ手が挙がること挙がること。



当初の予定だとウチの商会が実質的な領地運営権を握っている領主のところで軍勢賄おうと考えてたのが、挙がった手の半分はウチの手が入っていない領主のところ。

よくよく考えてみればここで武功上げたり、春日の覚えがめでたくなればひょっとすると東山公爵の後釜になれるのでは、という期待が持てるからなんだよなあ。




軍勢は出したいが遠方すぎるので矢銭つまり軍事費払うのでそれで協力したと認めてくださいと言ってくる領主もかなりいて。

春日が私の人徳ね、と無い物を主張していた気がしたがそんなことは無かった。




「そういえば片山崩れの際はどちらに? と一家一家呼び出して尋ねては今回の戦にお志だけでもと迫るとか、相手からすれば踏み絵以外の何に見えると?」




扇がかなり呆れた口調で指摘していた気がしたがそんなことは無かったハズ。




「別に踏み絵なら皇太子からの檄文を報告するかしないかで済ませてるから気にする必要ないのに」

「……それで何人か領主が病気になっているんですか」

「ここのところ忙しかったからね。ぜひとも安静にしていて欲しいもんだね」

「安静でいえば、安置してる皇太子の遺体ですが腐らないうちに引き取って欲しいと赤磐から催促がきておりますが」








――うん。「また」なんだ。済まない。








皇后が北山公爵に真庭を突くようにとの檄文を発したことを理由に廃位、国王から死を賜ったとの知らせを赤磐に届けたことで、後ろ盾だった北山公爵が自分を見限ったと知った皇太子が絶叫と同時に急死したんだと。



その最後は立ち上がり叫ぶも気を失い、そのまま前のめりに倒れ、ウチが作ったポテトチップスを真似たの紛い物の山に顔を突っ込んで死んだというものだったそうだ。




事細かく報告されたところでどうしろと……。




――死因は脳卒中。それも肥満による高コレステロールからくる動脈硬化が原因。肥満の原因はウチが作ったポテトチップスに味をしめて慢性的に食べ続けていたことだそうですよ?




「御館様が殺したようなものでしょうか?」




それが報告を見た扇の第一声だったけど、皇太子を攻め滅ぼして全ての清算を、と意気込んでいた身とするとあまりにあんまりな決着というか。

最大勢力になったら周辺国が大連合組むんじゃなくて向こうから降伏してきて勝手にエンディング突入した感じ。



各地から続々と倉敷に参集してくる軍勢を前に、皇太子が死んだので赤磐での戦は無くなりました、と告げる勇気をください。













その後のことを軽く振り返ると、赤磐から氷漬けにした皇太子の死体を倉敷に運び込み、前国王の妾つまり春日の母親によって踏みつぶされた陰部確認して本人認定した後、備州を混乱に陥れた罪で死体の首をはねて、一連の事案が収まったことを春日が宣言。



その場の空気に当てられてポロっと方護との婚姻と方護に伯州を統治する口実がついてくること、艮公の婚姻で美作がついてくることで周辺国を押しのけて一大大国となることまで告げる事態に。




これを機に国名を、古代備州などここいら一帯を治めていた「吉備」に変えると宣言したことで周辺国による包囲網が敷かれるとか。





――人間至上主義者の皇太子が居なくなったので隠居するんです、と宣言したハズだったのに気がつけば吉備国宰相に据えられてますよ?





「悠々自適の年金生活を送るために建てたはずの真庭公司だったハズなのに、なぜまだ働いているんだろうか? 解せぬ……」

「御館様、公司でいうところの年金生活とは働けなくなるまで働いた者が対象だったかと」

「……それが?」

「御館様は長寿族の身。働けなくなるまでまだまだ先は長いかと」

「そんなバカな……」








――年金暮らし。それは全て遠き理想郷




Fin

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