第五話 とある少女のCongratulate
久々の投稿ですが、今回は短いです。
私は、思い出していた。
小さい時に起きた、あの日のことを。
今から七年以上前、七名家の子息達が集まった日があった。
と言っても、三年前の紅城家の長男が正式な党首となった時の披露宴と違い、七名家全家が集まったワケではなかったが。
けど、その時には今では二度と集まれないであろう人物が揃っていた。
私、私の同級生である黒鏡 闘鬼くんと、親友の神白 白亜。
その白亜の弟である光輝くんと、その同級生である橙真 我考くんと紅城 焔呪ちゃん。
そして……当時は、七名家の誰よりも優れているとされた鬼才――神白 銀架くん。その七人が一度、神白の家に集まり、皆で遊ぶと言う名目で、互いの家の牽制をしあうという日があったのだ。
けど、私達年長組三人は、その頃にはもう家同士の柵について、薄々気付いていたので、内心でうんざりしながら、楽しそうに魔法を競い合う三人を見ていたことを覚えている。
いつも通りその日も、表向きは和気藹々と、裏は殺伐とした一日が終わるはずであり……その日は、ただそれだけでは終わらなかったからだ。
その日、一つの事故が起きたのだ。
と言っても、幸いにして死人どころか、怪我人は一人も出ず、事故を起こした我考くん達も軽く叱られた程度で済んだのだが。
しかし、その日事故を切っ掛けに、私は恋をしてしまったのだ。
――自分を救ってくれた、神白 銀架という少年に……。
□□□
「……世界には、七つの力が存在するのは、皆さんもご存知でしょう?」
薄暗く、声が響く程度に広い閉鎖空間の中。
私は、目の前にいる新入生を見下ろせる位置に立ち、口元にうっすらと笑みを浮かべながら、話し掛けるように言葉を紡ぐ。
「一つは、燃え盛りし“火”」
その言葉と共に、私の後ろにある祭壇の上のコップに、小さな火が灯り――、
「一つは、凍て付きし“水”。一つは、吹き荒れし“風”」
祭壇にある、先程より一つ下の段にある二つのコップ。
その一つの中の水が氷の花を咲かせ、もう片方には小さな飄風が巻き起こり――、
「一つは、轟きし“雷”。一つは、荘厳たる“土”」
祭壇の三段目に、正五角形になるように配置された二つのコップ。
その片方の水には雷光が弾け、もう片方には小さな花が咲き――、
「そして、全てを塗り潰す“闇”と、全てを染め上げる“光”」
最後に、五角形の中央にあるコップから、決して混ざり合わならない光と闇が、相剋しあいながら溢れ出した。
そして出来上がったのは、この世界に存在する七つの属性の簡単な相関図。
私はそれを背にしながら、私は言葉を続ける。
「この七つの力は、私達の中に眠る、真なる力です。しかし、私達はまだ未熟なため、その力を上手く使いこなせないかも知れません」
その言葉を聞いた新入生から、息を呑む気配が伝わって来た。
それに気付いた私は、やや苦笑を零しながらも、言葉を続ける。
「でも、心配しないで下さい。ここには、共に魔法の道を歩む友や、先を切り開く先輩達、私達を導いてくれる先生方が沢山います。だから、あなた達は安心して、あなたの幻霊と共に、幻の歌を奏でて下さい」
そこで私は一旦言葉を切り、ゆっくりと新入生の顔を見渡しなが言った。
「ようこそ、我らが幻奏高校へ! ここにいる先輩達や先生方のこの言葉を、生徒会長である私――蒼刃 雪姫が代表して、新入生の皆さんに贈らせて頂きます」
……暇だ。
「――そして、この幻奏学園の理事長は、蒼刃 妃海様――七名家の当主であり、
………………はぁ。
しかし……、
(ホント……外見だけは仲が良さそうだからな……)
……あー、ウゼェ。
次回、“第六話 とある少年のInwardly”
これから、俺の出番があるのだ。