第四十五話 仮面少女のOne's True Character
切りのいい所で書き終わらなかったため、今月分は短めに切り上げ、来月に二回投稿を行おうと思います。
待って下さっていた方、誠に申し訳あれませんが、もうしばらくお待ち下さい。
“着装響奏”の中には、特異魔法以外にも特殊な能力を持ったモノが幾らか存在する。
例えば、焔呪の《焦熱武装》だと、魔法を使わずとも背中の排焔口や肩やベルトのアーマーから火を出すコトかせ出来て、移動速度や攻撃力の強化が可能だ。
俺の《陽光聖装》にも、陽の光を浴びている間は微量であるが常時魔力を回復出来る能力がある。
彼女の──コスモスの“着装響奏”に走っていた蒼いラインが、白く変色したのも、多分同じ理由だろう。
……が、しかし、色が変わるコトだけが、あの“着装響奏”の能力と思えない。
それだけの、ワケがない。
先程放たれた《光子導波》が──今まで水属性魔導師だと思い込んでいた彼女が使った、その光属性魔法こそが、その証。
コートと手袋、そして仮面を模したその“着装響奏”の、その能力の正体は分からない。
それでも一つ、確実に言えるコトは──、
「──────本気を、出してなかったのか……っ」
□□□
(──さて、と)
《光子導波》に完全に意表を突かれて呆然とする天上院くんを眺めながら、ボク……もとい、僕──神白 銀架は、心の中で小さく呟く。
(……ちょっと面倒臭いコトになっちゃったなぁ)
『お主が最初っから本気を出さないからだろう、小僧』
返って来るのは、いつもより近く感じるシロガネの声。
自分に溶け混じっている故に、呆れの感情をダイレクトに伝えてくるその存在に、僕は顔に出さないように気を付けながら、内心で苦笑する。
(生憎と、今日は演習やら異端魔法を使ったりやらで結構な魔力を消費してたからね。魔法の使用はスローペースで行きたかった、ってのは大きいかも。あ、後、キャラクターを作って演じるのとか慣れてないし♪)
『嘘を吐け。やり過ぎに思える程に自身の存在を偽れるコトが出来る癖に、何を抜け抜けと……』
(まぁ、確かに、キャラクターを演じ慣れていないってのは、胸の裡だからこそ言える嘘だね♪ ──けど、必要なコトでしょう?)
『……まぁ、な』
ゆっくりと紡いだ僕のその言葉に、シロガネはこれまたゆっくりとした口調で返事をする。
僕とシロガネは、“幻霊装機”や“着装響奏”と言った力を借りる代わりに、好みに集まる“悪意”を喰らわし、その腹を満たすという契約を満たすという契約を交わしている。
その“悪意”を集める為に、僕が現在最も利用しているモノは、七名家の人間なのに幻霊の召喚に失敗した劣等種としての立場だ。
コレさえあれば、七名家を頂点とする召喚士としての力で上下が決まる社会が形成された幻奏高校にいるだけで、大量の“悪意”を集めるコトが出来る。
だからこそ、コスモスと名乗る召喚士の正体が、神白 銀架だというコトを悟られてはいけない。
ソレが知られたら、僕の望むモノがこの手から零れ落ち、二度と手にするコトが出来なくなってしまうから。
だからこそ、過剰なまでにキャラクターを演じる。
“着装響奏”の仮面で顔を隠し、いつもは黒と偽っている髪と瞳の色を、シロガネと契約してから変色した銀色に戻すだけでなく。
シャツに付与された空間歪曲の魔法で、体のラインを丸みを帯びたモノに変え。
ネクタイに付与された編成魔法で、中性的と称される声をさらに高くし。
ズボンに付与された幻惑魔法で、身長そのものを低く見せる。
薫さんのお下がりとして貰った魔導具だが、想像以上に役に立った。
言葉で嘘を吐けない分、その態度で、その装いで自分という存在を偽り、全身全霊を賭して“コスモス”という“存在”を作り上げる。
ソレが、つい先程まで僕が一番重要視をし、力を入れていた事柄。
……つまり、天上院くんの対処は二の次にし、大して力を出してはいなかった。
光輝や焔呪ちゃんが大怪我を負っていたワケ、那月ちゃんに付けられた“奪力の首枷”も命の危険があるモノでなかったので、コスモスの正体をバレないように振る舞うコトより重要とは思ったのだ。
『──その認識の甘さが、現在の状況を作り出してしまったワケだがな』
(それは耳が痛い言葉だなぁ……もっと優しくしてよ、シロガネ?)
『巫山戯ている場合か、小僧。こうしている間にも、あのムッシュー坊主は魔力を回復していき、お主は何時何処から魔法が飛んで来るか分からぬ空間に身を置いているのだぞ?』
(まぁ、ね。確かに、僕の油断で招いたこの状況は、天上院くんに恐ろしく有利なモノだよ。……けど、余裕でしょう?)
『……あのなぁ』
(安心しなよ、シロガネ。“コスモス”のキャラクターにも慣れて来たし、何より今の僕は《ツヴァイ・ヴァイス》に合っているんだから)
──通常、“幻霊装機”は一つに付き一つの属性の魔法しか発現出来ない。
光輝の《アイン・ヴァイス》が光属性だけを、焔呪ちゃんの《焔天苛》が火属性だけを使えると言った風に。
僕の《ツヴァイ・ヴァイス》も、その例外ではない。
先程の《光子導波》のように、光属性魔法を使うコトは出来るが、それ以外の属性の魔法を発現するコトは出来ない。
だから、さっきまでの僕は、《ツヴァイ・ヴァイス》では本気を出せなかった。
僕と《ツヴァイ・ヴァイス》が、合っていなかったから。
──けど、今は違う。
先程も言った通り、今の僕は《ツヴァイ・ヴァイス》と合っている。
──ソレが、僕の《極律虹装》の能力。
(──天上院くんに有利な状況は、彼が使わなかっただけで、僕達が知らなかっただけで、最初からずっとそうだったハズだよ。ソコは何も変わってない。むしろ、有利に変わったのは僕達の方でしょう、シロガネ?)
『………………そうだな、小僧』
(だったら、僕がやるべきコトは一つ。──真正面から、彼を叩き伏せるのみっ♪)
僕のその想いに応えるように、《ツヴァイ・ヴァイス》の発現珠が力強く蒼く煌めく。
(それじゃあ──────、)
『──────行こうか』




