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第四十四話  勘違いのWhite Blade(後編)

只今挿絵・魔法を募集中です!


□□□


私事ですが、ツイッターを始めました♪

殆どカードゲーム関連の呟き位しかしていませんが、最新話投稿の予告なども呟いています。

是非、「現野 イビツ」で検索してみて下さい♪

思い出すのは幼き日──俺がまだ四歳だった頃。

その日、剣の指南役に腕を褒められて午前中だけで稽古をえた俺は、昼食もそこそこで切り上げて、屋敷の裏手にある林の中に入っていた。

それなりの広さのある魔法の射撃場や、優しい管理人が常駐している快適なコテージがある為、他家の子供達が来た時には、よく一緒に来る場所だ。

いつも来る時は、新しく覚えた魔法を自慢し合う為に射撃場に行くコトが多いのだが、その日俺が向かっていたのは、ソコてせも、コテージでも無かった。

林のほぼ中央に位置するコテージへと続く道、その丁度中間の辺りで道を外れて鬱蒼とした茂みに足を踏み入れた俺は、整備されておらずとても歩きづらい道程に辟易しながらも、ゆっくりと歩を進めていた。

葉と葉が重なり大きな影を作る為、道中は真昼にも拘わらず薄暗かったが、しばらくすると少し開けた柔らかな日差しが差し込む場所が見えて来る。

その小さな空間の中央にポツンと立つ白樺の木に寄り掛かり、この林の住人であろう小鳥や栗鼠を頭や腹に乗せながらスヤスヤと眠る子供がいた。

俺がココに来た目的である人物──俺の双子の兄、神白かみしろ 銀架ぎんかだ。

俺と違って親に甘やかされ、碌に稽古も受けずに気持ち良さそうに昼寝をしている彼の姿を見て、俺の胸の内に怒りと悔しさが生まれる。

けど、ソレを表に出すコトはない。

神白  銀架には圧倒的な魔法の才能があり、毎日座学も実技も行っているが、追い付くドコロかその背が見えない程に圧倒的な実力差があるコトを知っているから。

弱者が強者の余裕を怠惰と叫ぶコトが、愚かな真似だと思っているから。

そんな姿が無様なモノだというコトに気付いているから。

そして何よりも、その行為が何の意味も成さないというコトを理解していたから。

だから……神白 光輝こうきという人間は、日々をのうのうと暮らしている兄の姿を指を咥えて見ながらも、厳しい稽古を甘んじて受けて来た。

……しかし。

当然のコトながら、不満が無かったなんてコトはない。

同じ日に、同じ母から生まれ、容姿も鏡写しのように殆ど同じまま成長して来た双子の兄弟なのに、明確に扱いに差を付けられるコトを、まだ四歳の子供が納得出来るハズがない。

当時の俺は、いつも銀架に嫉妬し、苛立ちを募らせていて……その日ついに我慢出来ずに愚かで浅はかな考えを抱いてしまった。

──魔法で勝てないなら、剣で勝てばいいじゃないか、と。


「──ぎんかにぃさま!」


──と。

そう声を掛けながら、日の差し込むその場所に一歩足を踏み込む。

瞬間、銀架に身体を寄せていた小鳥や栗鼠達が、俺の声に驚き、慌てて林の中に逃げて行き、それらよって体を揺さぶられた銀架が小さく呻いた後、うっすらと左目を開けて、コチラに視線を向けてくる。

親や白亜はくあ姉さんですら間違える程外見の似通った俺と銀架の、容姿で唯一明らかに異なっている点──空色の瞳で見詰められ、俺は咽喉元まで出掛っていた言葉を思わず飲み込んでしまう。

後から思えば、ただ寝惚けて視線が定まっていなかっただけの話なのだが、しかしその時の俺は、その感情の篭らない透明な視線に、確かに怯んでしまった。

勿論、そんなコトを知る由もない銀架は、小さく伸びをし、口許に手を当てて欠伸を噛み殺しながら、俺に声を掛けてくる。


「……珍しいね、こーくんがココにくるなんて。なにかあったの?」


あまりにものんびりとした銀架のそんな声を聞き、正気に戻った俺は……意を決すると、銀架の問いには答えずに、背負っていた二振りの木剣の片方を彼の目の前に放り投げた。

それを見た銀架は、キョトンとした表情を浮かべて「これは?」と聞いてくる。

が、俺はその言葉も無視すると、握っていたもう一振りの剣を振りかぶり、そのまま無言で銀架に向かって走り出し……、




「なん、で……」




……僅か五分後に、俺は地面に倒れ込んでそんなコトを呟いていた。

心の裡は悔しさで満たされているモノの、身体に痛みは感じない。

そもそも、今まで行っていた剣戟で、銀架の剣は一度も俺に当たってないのだから。

では、何故俺は地面に倒れ込んでいるのか?

答えは簡単……俺に立てるだけの、動けるだけの体力が残っていないから。

情けなかった。

勝負を一方的に仕掛け、不意打ちも同然の第一撃を繰り出したにも拘わらず、剣を拾った銀架はあっさりとその剣を受け止めると、そのまま剣戟へと発展していき──結果がコレだ。

見たコトも、聞いたコトもない剣技だった。

ただ剣を交えるだけで、恐ろしいまでに体力を奪って行く剣技。

妖刀の類を使われていないコトは、木剣を用意した俺自身が一番良く知っていた。

だからこそ……その時になってようやく、後悔し、理解した。

何て愚かな真似をしてしまったのだろう、と。

神白 銀架に敵うワケがないのに、と。

地面にうつ伏せに倒れ、声を殺して涙を流す俺の傍らで、銀架は笑みを浮かべていた。

どこか嬉しそうで、どこか寂しそうで、少なくとも俺を嘲る色は見られない、そんな複雑な笑み。


「──“思い込み”は、致命的なミスに繋がるよ。ソレが狙われているなら、なおさらにね」


優しく、俺を宥めるような彼が口にした言葉を、当時の俺は理解するコトが出来なかった。

けれど今の俺には、何故銀架があの時、あの言葉を口にしたのか、それが理解出来る。

銀架のその剣技の正体を、俺は知っているから。

後に、銀架が俺の剣の指南役を軽々と下したコトで、“静殺剣せいさつけん”と名付けられたその剣技の正体が。

恐ろしいまでに精緻な力のベクトル操作によって、相手の脳と肉体を騙す技だというコトを……。


 □□□


──ドンッッッ!!


と。

そんな衝撃音と共に、全力の魔力式肉体強化を掛けられ、全体重を乗せたコスモスの飛び膝蹴りを鳩尾に喰らった天上院てんじょういんは、白目を剥きながら吹き飛ばされ、淡い光を放つ水晶が生える岩壁にぶつかり、地面に落ちる。

身体は小刻みに痙攣しているし、小さく呻き声も聞こえてくるので、死んではいないコトは分かる。

……が、それは着装響奏アームド・ユニゾンを纏っていたから大事に至らなかったというだけであって、もしソレがなかったとしたら、最低でも二カ月はベッドに縛り付けられるような大怪我を負っていてもおかしくない一撃だった。

それを、真正面から喰らったのだから、天上院にこれ以上の戦闘を続行するのは不可能だろう。


──えらく呆気ない幕切れだな……


と、俺は心の中でそう呟く。

幻霊装機アーティファクトを構え、着装響奏アームド・ユニゾンを纏った召喚士が二人、真向から対峙しあったというのに、互いに特異魔法を使わず──それどころか、互いに殆ど魔法を使わないまま殆ど剣術と体術だけで決着を迎えてしまったのだ。

自分が苦戦させられた相手がこうもあっさりと倒される場面を見せつけられると、悔しいと言った感情以前に、凄いという感想すらパッと出てこないというコトを、俺は今初めて知った。


「……さて、と」


天上院を蹴り飛ばした後、何事もなかったように華麗に着地を決めていたコスモスは、勝利を喜ぶでもなく、その手に握っていた双剣から《水渦蒼鎌刃シュトロム・ファルシオン》をゆっくりと解くと、その場に立ったままキョロキョロと辺りを見渡していたのだが、小さな声でそう呟くと、俺達の方に向かって歩き始めた。

一瞬だけ、俺は緊張で体を硬直させてしまうが、コスモスはそんな俺のコトを気にも留めず、ゆっくりとした足取りで俺の横を通り過ぎると、未だに倒れたままの焔呪えんじゅの傍に、双剣を手にしたまましゃがみ込む。

それを見た俺は、思わず焔呪に何をする気だっ!? と叫び掛けるが、それよりも先にコスモスが小さな声で呟いた。


「……息はしてるし、気絶してるだけ。火傷も、治癒魔法があれば跡も残らないね」

「……ぁ、え?」


その言葉を聞き、コスモスがただ焔呪の怪我の具合を確かめていただけだと気付いた俺は、自分があまりにも恥ずかしい勘違いをしていたコトに気付き、顔を赤らめてしまう。

だから照れ隠しとして、俺はつい咄嗟に“落ち零れ”に近付こうとしていたコスモスの背中に声を掛けた。


「な、なぁっ!」

「──? どうかしたの?」

「い、いや、その……お前、“静殺剣”を知ってるのか?」


ソレもまた、照れ隠しの一環としてつい口にした言葉ではあったが……実際に聞きたい質問でもあった。

彼女の剣技が、“静殺剣”を──神白 銀架の剣技を彷彿とさせるソレであったから。

……が、しかし。


「──せーさつけん?」


彼女から疑問形のトーンで声が返ってきたため、ソレもまた勘違いであったのかと、俺は思い直す。

だから、俺はそのまま「何でもない」と言おうとし……しかし、仮面から覗く彼女の左目に興味に似た色が浮かんでいるコトに気付いた為、少し考えた後、話を続けるコトにした。


「──“静殺剣”は、その、神白家にある剣技の一つで……相手の斬撃に自分の斬撃を『重ねて』引くコトで、相手の斬撃の威力を『加算』する、精緻な力のベクトル操作によって成り立つ剣技だ」

「──へぇ?」

「ただ弾くのでも逸らすのでもなく、意図して威力が加算された斬撃は、放った本人の『脳』が想定していたモノと違うから制御がとても難しくて……簡単に逸らされて、体勢もとても崩しやすくなって、何より脳が想定していた以上の動きが『筋肉』に強制されるから負担が激しくなり……『体力』を根こそぎ奪い取る。文字通り静かに、じわじわと相手を殺していく、そんな剣技」

「成る程、ボクの剣技とは全く正反対の剣技ってワケだ♪」

「あぁ、けど……」

「けど?」

「相手の脳を騙して、筋肉に負担を掛けるって点では、お前の剣技と恐ろしく似通っている」


俺がそう口にしたその時、一瞬だけコスモスの顔が仮面の顔が強張った気がした……が、彼女はすぐに口元に大きな笑みを浮かべると、楽しそうに俺の顔を覗き込みながら口を開いた。


「ふーん……アレだけの剣戟で、ボクの“轟壊剣ごうかいけん”の正体に気付いたんだ?」

「あ、あぁ……さっきも言ったけど、お前の剣──“轟壊剣”ってのと“静殺剣”のコンセプトは殆ど一緒・・・・だからな……。そうだろ?」

「──まぁね♪ けど、何で分かったのか聞いていいかな?」

「それなら、簡単だ。──天上院が、から斬撃を放った時は真後ろ・・・に飛ばされて、真正面・・・から攻撃した時は、真下・・に叩き付けられていたからな」

「……あぁ、成る程。それで……」

「あぁ、それで……お前が“静殺剣”と同様に、脳が全く想定していないベクトルから力を与えるコトで、天上院の肉体に多大な負荷を掛けているってコトに気付けた」


そう。

天上院が最後の斬撃を放てなかった理由は、与えられた負荷に肉体が耐え切れずに痙攣を起こしてしまった為。

コスモスが魔力式肉体強化を使用していたのは、別に天上院を動揺させる為なんかじゃなかった。

最初から彼女は、天上院の身体を破壊・・するコトを目的としていた。

……そのコトに気付けなかったからこそ、天上院はあっさりと負けてしまったのだろう。

とにかく、俺がそう話すと、彼女はそっかぁ……と小さく呟き、何故か曖昧に笑みを浮かべた。


「……まぁ、これくらいなら許容範囲かな」

「? 何のコトだ?」

「いや、コッチの話だよ。……まぁ、そんなコトより、今からそっちの子の様子を見るから、ソレが終わったら、ココから出る方法でも考えよっか♪」

「あ、あぁ……」


露骨に話が逸らされているのは分かったが、特にソレを追及する理由もなかったのでその言葉に頷いて、再び“落ち零れ”の傍に行こうとする彼女の背を見送る。

“落ち零れ”の方も、ようやく助かるという事実に、だらしなく顔を歪めている。

しかしまぁ、それも仕方ないコトか、といつもなら思わないようなコトを内心で呟きながら、俺も焔呪の傍に近付こうとした。

……が、その時。


「──────っ」


コスモスの身体がピクリと震えたように見え、その次の瞬間──、


──ドンッッッ!!


──と、何故か突然、魔力式肉体強化を施された足で、地面を力強く踏み付けた。


「──っぅ!?」


魔力光を噴き出す足が地面に減り込む様を至近距離で目の当たりにした“落ち零れ”が、声にならない悲鳴を上げる。

……が、コスモスはソレを気にせずに、俺の方──そのさらに後ろに鋭い視線を向けながら、それでも口許に笑みを浮かべて言った。


「──驚いたよ。まだ、ボクとコトを構えようとする気力が残ってるだなんて♪」

「それはコチラの台詞ですよ、マドモアゼル……まさか、“風弾ウィンド・ブリッド”を踏み潰して・・・・・無効化する人間がいるとは思いませんでしたよ」



その声、その言葉を聞き、俺も“落ち零れ”も慌ててコスモスと同じ方向に目を向ける。

そこには、蹴り飛ばされた鳩尾を左手で抑えながらも、必死に立ち上がろうとする天上院の姿があった。

それを見て、俺も“落ち零れ”も絶句している中、コスモスがゆっくりと口を開く。


「……一応言っておくけど、諦めるコトをオススメしてあげるよ♪ さっきの飛び膝蹴りもそうだけど、それよりも前から“轟壊剣”で両手両足を一本一本丁寧に痛めつけてたんだから♪ 後遺症は残らないだろうけど、一日二日で全快出来ない程にボロボロな状態なのは、キミが一番よく分かってるでしょう?」

「……えぇ、その通りですよ、マドモアゼル。確かに、今の私は、指一本動かすコトすらキツイ状態になっていますよ。……それでも。それでもまだ……私には魔法が残っているっ!!」


天上院がそう口にした瞬間、コスモスは大きく右に跳んで──直後、コスモスが今までいた場所に風の槍が突き立った。

ソレを見た俺は、しまった! と内心で叫ぶ。

天上院には、まだコレが残っていた、と。


「──良かったら、キミがいる場所と全く違った方向から魔法が飛んでくる理由を教えて欲しいなぁ……なんて♪」

「別に構いませんよぉ、マドモアゼル? ただ、幻王様から与えられたこの“異界域ダンジョン”の中では、私は常に魔力を回復し続け、好きな場所に、好きなタイミングで魔法を設置出来るってだけですからぁ」

「──っ、それはまた、チートなフィールドだね♪」


天上院のその言葉に、コスモスは仮面の下から見える口許を小さく引き攣らせる。

それでも、笑みを消すコトはないコスモスだったが、そんな彼女に天上院は更に告げる。


「私が有利になっているのは、そこだけじゃあありませんよ、マドモアゼル?」

「……やっぱり、流石に気付くよねぇ」

「もしかして、分かって使われたいたワケのですか、マドモアゼル? だとしたら、仕方ないコトとは言え、些か失望を禁じえませんねぇ、水属性魔導師・・・・・・様ぁ!」


その言葉と共に天上院が放った音の刃は……先程俺達との戦いにおいて放たれた風の刃よりも遥かに速い。

コスモスはソレをヒラリと躱すが……その魔法と先程の呼び方から彼女達の会話の意味を理解した俺達は、自分達が戦った時より状況が悪化している事実に頭を抱えそうになる。


「……確かに、最初に焔を《水渦蒼鎌刃シュトロム・ファルシオン》で消し飛ばしたのは失敗だったのは否定出来ないね♪」

「えぇ! 何せ、湿度の高い空間では、音の響く・・・・速度が・・・上がります・・・・・から・・ねぇ」


──そう。

魔法には属性というモノが決まっているが故に、、相性の悪い組み合わせが存在する。

例えばそれは、水属性と雷属性だったり、火属性と風属性だったり、と。

水属性魔法と、風属性“サウンド系列シリーズの組み合わせもそうだ。

水属性魔導師が魔法を使うたびに周囲の湿度が上がり、それだけ音系列の魔法の速度が上がっていく。

それが、今この場のように密閉された空間で行われるならなおのコトだろう。


「さぁ、お好きなだけ魔法を使ってくださいよぉ、マドモアゼルっ! ただし、こちらもしっかりと邪魔はさせて貰いますがねぇっ!」

「……成る程、確かにボクがこのまま水属性魔法を使い続けていたら、ジリ貧ってワケだ」

「えぇ! まさしくその通りですよ、マドモアゼルっ! 貴女の勝ち目は本当に薄いっ! ですから……今、地面に額を擦り付けて謝って、私の奴隷になると誓うのなら赦してあげなくもないですよぉ、マドモアゼル? 貴女は腕も立ちますし、何より顔立ちもそれなりに良さそうですからねぇ……大丈夫、貴女も・・・愉しませて・・・・・あげますから・・・・・・

「──っ!」


あまりにも下劣な天上院のその言葉に、俺はギリッ……と歯を食い縛り、思わず俺が叫び返そうとして──、




「……三流ドコロの話じゃない、小悪党というのも烏滸がましい小者かぁ」




──それよりも早くコスモスがポツリと、しかしはっきりと聞こえる口調でそう口にした。

その言葉を聞いた天上院が、先程まで浮かべていた下卑た笑みを引っ込めて、コスモスに問い掛ける。


「……それはどういう意味でしょうか、マドモアゼル?」

「“滅星教めっせいきょう”がどれほど強大な組織かは分かりませんが、キミの程度は知れたなぁ、って意味だよ♪」


間髪を入れず、躊躇なく、彼女は天上院の問いにそう返す。

瞬間、天上院はまなじりを吊り上げ、大きく口を開き──、


「水属性魔導師が「俺に勝てると思うのか」──っ!?」


──口にした叫びをコスモスに被せられて、驚いた表情を浮かべる。

彼が驚いたのは、自分と全く台詞をコスモスが口にしたから、では断じてない。

彼が驚いたのは、ソレを口にしたコスモスの口許に、余裕の笑みが浮かんでいたから。

──スッ、と。

自身の左手の甲にある紋章エンブレム──否、それに似た何かに手を伸ばしながら。


「良いコトを教えてあげるけどね──」


カチリ、と小気味良い音を鳴らしながら、ソレを回して・・・


「ボクを水属性魔導師と思っているならソレは間違い♪」


コスモスは、言った。


「見せてあげるよ……ボクの本気をっ♪」




『モードチェンジ! ──モード《ヴァイス》へっ!』




瞬間、彼女の着装響装アームド・ユニゾンに走る蒼のラインが、スッと白く染まって行き。

手にする双剣の柄にある蒼い発現珠が力強く輝いたと思うと。


『──光の中級魔法、《光子導波フォトン・ストリーム》っ♪』


突如現れた光の本流が、天上院の横を通り抜け、彼の笑みを吹き飛ばす。

──それが、第二ラウンドの始まりの合図だった。

自分の有利な状況の一つが覆されて驚愕の表情を浮かべる天上院に、本来の輝きを取り戻した白刃を突き付けながら、コスモスは笑みを浮かべて告げる。




「それじゃあ……続きと行こうかっ♪」




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