第四十話 星光煌くWhite claw
只今挿絵募集中です!
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私事ですが、ツイッターを始めました♪
殆どカードゲーム関連の呟き位しかしていませんが、最新話投稿の予告なども呟いています。
是非、「現野 イビツ」で検索してみて下さい♪
天上院 彦麻呂と光輝達の戦闘が始まる前に、もう一話。
もう一人の侵入者についての話。
時間は、光輝達が“結界”内の通路を進んでいた時より、更に少し遡る。
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……。
………………。
………………………………。
「………………見つけた」
『それは、白坊主の方か? それともあの女子か。はたまた、あのムッシュー坊主か』
「そのどれも、だよ。何とか全員無事ではいるみたい。……けど、ムッシュー坊主って、ネーミングセンスが無さすぎるよ、シロガネ?」
『何っ!? 結構イケてると思ったんだが……』
校庭に現れた“異界域”の内部、その入り口とも言うべき螺旋階段の前に立ちながら、僕──神白 銀架は、そんな風にシロガネと会話をしていた。
と言っても、今まで集中を必要とする作業を行っていたから、さっき始めたばかりではあるんだけど。
初っ端からセンスのなさを露呈させて自爆したシロガネが、必死に話を逸らそうと、僕の右手──正確にはソコにある蒼い魔導線で形成された魔法陣に“意識”を向けながら、声を掛けてきた。
『ま、まぁ、我のネーミングセンスの話はともかくとして……相も変わらず常識外れな知覚範囲をしていな、お主の霧は』
「前にも言ったと思うけど、水属性、それも“霧”系列は光属性の次に僕が得意とする魔法だからねー」
わざとらしいとは思いつつも、シロガネの言葉に答えながら僕も右手の魔法陣に目を向ける。
止めどなく霧が溢れ出る、その魔法陣に。
水属性“霧”系列の上級魔法、《蒼霧義眼》。
溢れ出る霧で満たした空間を、自由自在に知覚するコトの出来る、特殊効果魔法。
今、この螺旋階段の下──地下に広がっている迷宮には、濃い霧が充満しているコトだろう。
その全てが僕の眼であり、一切足を踏み入れてないにも拘わらず地下迷宮内部を全て見渡すコトが出来ている。
三叉路の前で立ち止まっている光輝達の姿も、その道の奥にあるドーム状の広場にいる天上院くんの姿も、彼の足元に転がっている那月ちゃんの姿も。
『魔法もそうだが、お主のその地下迷宮の全てを把握しきる脳のキャパシティも凄いと思うのだが……まぁ、それはいいとして』
「話がコロコロ変わるね?」
『正直、今更何を、って話ばかりだったからな。……けど、ここからは違う』
「って言うと?」
『これまでは“今まで”の話で、ここからは“今から”の話……そう、“今から”どうする気だ、小僧?』
「どうする、って……妃海さん達の前でも言ったけど、那月ちゃんを──友達を助けるよ」
『でもどうする気だ、小僧? 折角妃海達が来るまで待っていたと言うのに、“ヒルト”は返って来なかったんだろう?』
「それ、は……」
ココに来る前、魔法理論室で椿さんが言っていた通り、僕はこの“結界”の調査が終了した時点で“異界域”の内部に侵入していてもおかしくはなかった。
実際に、あの時は異端魔法を使った反動もあって精神状態が不安定だったため、一刻も早く那月ちゃんを助けに行かないと、と焦ってもいた。
それでも、甘い物を飲んで気分を落ち着かせながら、妃海さん達の到着を待っていた理由は、妃海さんに預けていた“ヒルト”を返して貰おうと思っていたからだ。
“ヒルト”……略さず言うなら、“ヒルト・オブ・オーロラソード”。
“魔光剣”のアイデア元でもある、僕の持つ“神造魔導具”の一つだ。
“幻奏高校”に入学する少し前に預けたソレは、鑑定をしている子がいたく気に入ってしまったらしく、本来の返却予定を過ぎ、更にその上で予想された返却期日である今日になってもまだ、僕の手元に戻って来てはいない。
だから、これから敵の陣地と言って良い場所に入ると言うのに、正直自分の用意出来る最高の装備とは言えない状態であるコトに違いはない。
けど……、
「……だけど、別に“ヒルト”は天上院くん相手に切り札になるワケでもないしね。アレが刺さるのは、むしろ光輝や那月ちゃんの方だから」
『それもそうではあるが……だとしたらお主、まさかアレを使う気か?』
「………………お願い、シロガネ」
シロガネの問いに対する僕の答えは、殆ど懇願同然の言葉。
今から僕がやろうとしているコトが、下手したら僕とシロガネの交わした契約に違反しかねないモノだと言うコトは、理解しているから。
『……良いのか、小僧? もし少しでも失敗を犯したら、その時点で契約そのものが完了する前に無効になりかねない。今まで我がお主に与えてきた力が、この七年間のお主の努力が、全て無に帰するようなモノなのだぞ?』
「……大丈夫だよ、シロガネ。こいう時の為に色々と準備をしてきたんだし、統制庁と七名家の両方に協力者を用意しているんだ……ある程度のリスクぐらい、無視出来るよ」
『リスクを無視するのは珍しいな、小僧?』
「正直に言うなら、僕だっていつもみたいに全体を──それこそリスクなんかも含めて把握してから動きたかったよ? けど、今回はそんな時間が無いからね」
『……だから、我の力に頼ると?』
「君の力は、正真正銘間違いなく、僕の最後の切り札だよ。確かに、あまり切りたくはない手札ではあるけれど、でもだからこそ、いざと言う時に使える安定感と安心感は、他にはないからね」
霧の溢れる魔法陣を消しながら、一言一言しっかり区切って発音しながら、僕はシロガネにそう答える。
──そう。
今回の事件で僕が使おうとしているのは、“ヒルト”や“サベレーション・クロス”みたいな“神造魔導具”や、“マジン隠し”や“魔光剣”のような自作の魔導具でも、僕の創り出した“異端魔法”でもなく。
今まで、公の場所では一切使ったコトのなかった、幻霊の力。
『……もう一度聞くが、良いのか、小僧? 例え相手にその正体が分からなかったとしても、我の力の存在が七名家や統制庁に知られるコトになるぞ』
「……良くは、ないよ。けど、それでも、今は君に頼るのが一番だから」
『……』
一瞬の、沈黙。
その後に、シロガネがまた質問をして来た。
『……何故そこまでするのだ、小僧? いつものお主らしくもない』
「……状況そのものが、いつもと違うからね」
『そこまで、あの女子のことを助けたいのか、小僧?』
「……当たり前でしょ、シロガネ。那月ちゃんは、僕の友達なんだから」
『たった一人の友達の為に、七年の努力を無駄にしかねない賭けに出るというのか?』
「……シロガネは知ってるでしょ? 僕には、友達が四人しかいないコト。……だから、その内の一人を助ける為なら、それ位はしたいんだよ」
『小僧……』
「……もう、大事なモノを、失いたくないから」
『………………』
先程よりも長い沈黙。
微かに、溜め息をついているような、そんな気配。
そして、呆れた風を装って告げられる、シロガネの言葉。
『……しくじるなよ、小僧』
「……ありがとう、シロガネ♪」
短い言葉だけど、それだけでも意味は十分通じる。
口元に微かに笑みを浮かべた僕は、左手で“マジン隠し”の裾を軽く払う。
と、同時に、新たに浮かび上がる漆黒の魔法陣。
本当の自分になるための、始まりの魔法。
『──闇の中級魔法、《換装》』
その詠唱と共に、魔法陣から溢れ出た闇が、僕の全身に纏わり付く。
と、言ってもコレによって筋力や魔力が増加するワケではない。
コレはただ、衣服を着替えさせるだけの特殊効果魔法なのだから。
つまり、変装する為の魔法……もとい、変装を解く(・・・・・)為の魔法。
身に着けていた魔導具は全て取り外され、ズボンやネクタイ、シャツもデザインこそ似ているモノの別に変わる。
魔導具が全て──“黒塗珠”まで取り外された為、髪や瞳が本来の色に戻り。
長袖だったシャツが、ノースリーブ、かつ臍まで見える程丈の短いモノに変わり。
「……あ」
そして、剥き出しになった自分の左の二の腕を見て、僕は小さく声を上げる。
そこにあるのは、腕輪のように刻まれた、一つの十字と二つの逆十字。
シロガネの空腹度合を分かりやすく表す、契約の刻印。
久々に見たそソレの変化に気付いた僕は、シロガネに話しかける。
「──想像以上だね、シロガネ♪ 七年で一つしか出て来なかったのに、ココに入ってからもう二つも増えてるんだから」
『……新しいモノを使うか、小僧?』
「……いや、使い慣れたヤツで行くよ」
僕達の間だけで伝わるそのシロガネ問いを、僕は十字架の刻印を撫でながら首を振って否定する。
シロガネは、そこからは言葉を続ける様子が無かったので、僕は最後の準備として、履き替えたズボンのポケットから銀色の指環──僕の持つ四つ目の“神造魔導具”である“自分殺し”を取り出して、左手の薬指に嵌める。
それは、単純に言えば証拠隠滅をする為の魔導具。
これでもう、今からなる本当の自分が、僕だと断定出来る証拠が残るコトはない。
だから、一度深呼吸をした後に、躊躇なく僕は詠唱する。
『──我が求むは、星光煌めく純白の爪……幻霊装機、展開っ!』
その言葉と共に、僕の両手に純白の魔法陣が展開され。
そこから、細身ながらも長い刀身を持つ、二振りの剣が現れる。
一直線の峰を持つ純白の刀身と、独特な形状の柄を骨のように支える漆黒のライン、中央に嵌められた正四面体の蒼い発現珠まで全く同じ位置に存在しているソレは。
世にも珍しい、発現珠を二つ持った双剣型の幻霊装機。
僕が召喚士である証となる、シロガネの爪──《ツヴァイ・ヴァイス》。
久々に使うソレらをしっかりと握り締め、順手に構えながら──、
「──行くよ、シロガネっ!」
『──存分にやれ、小僧っ!』
僕の……僕達の始まりを叫ぶ。
『──《着装重奏》ッッッ!!』
瞬間、眼前に白銀の魔法陣が展開され。
視界の半分が、閉ざされた。
「──────着装完了……《極律虹装》」




