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第三十九話 霧満ちるDungeon (side intruder)

只今挿絵募集中です!


□□□


私事ですが、ツイッターを始めました♪

殆どカードゲーム関連の呟き位しかしていませんが、最新話投稿の予告なども呟いています。

是非、「現野 イビツ」で検索してみて下さい♪

時間は、那月なつきが目を覚ます少し前まで遡る。


「……本っ当、入って来た“結界”からは考えられない位広いわね」

「人工的に創られたモノとは言え“異界域ダンジョン”だからな、入口と内部に差があっても不思議はないだろ」


“結界”の内部……松明のような明かりを発する水晶が生えた、大人三人が並んでもまだ広さに余裕がありそうな洞窟に、歩きながらそんな会話をしている者達がいた。

最初に口を開いた方が、紅城あかぎ 焔呪えんじゅ、それに応えたのが神白かみしろ 光輝こうきである。


「それにしても、限度ってモノがあるでしょ、光輝」

「……確かに、な。ここはまさに、地下迷宮ダンジョンだもんな」


二人は、僅か数分前に見たこの“異界域ダンジョン”の入り口付近の光景を思い出しながら、そう口にする。

光も吸い込むような“結界”に足を踏み入れてまず目にしたのは、赤茶けた岩石に変わった地面と、その中央にぽっかりと空いた穴……地下へと続く螺旋階段だった。

銀架ぎんかが“血”属性を模した連携魔法コンビネーション・マジックを使用した影響か、微かに金臭さの漂うその空間は、しかしそれ以外にも悍ましいモノがあるように思えて。

彼らは、面倒くさい用事は早めに済ませたいとばかりに、すぐさま螺旋階段を下って地下に潜り、早足で洞窟を進んでいるのだ。



「……“異界域ダンジョン”ってワリには、“怪魔クリーチャー”は一体も出て来ないわね」

「それこそ、ココが人工的に創られた“異界域ダンジョン”だからだろ、焔呪」

「あー、ね。“神界パラダイス”に繋がってないなら、そりゃ幻獣とか精霊が紛れ込むワケがないってコトね。……ま、楽でいいわ」


二人ともそれぞれの幻霊装機アーティファクトを展開して、最低限の警戒態勢を取りながら道を進んで来たのだが、彼らがぼやく通りこれまで障害となりうる存在が出て来なかったせいか、その態度に余裕が窺い始めている。

先程から暇潰し目的で会話をしているのも、その証拠。

わざわざ他の七名家を出し抜いて・・・・・この“異界域ダンジョン”に侵入したというのに、敵とエンカウントもせずに延々と歩き続けるのは退屈だったのだろう。

だから焔呪は、“異界域ダンジョン”に入ってからずっと黙りこくっている最後の侵入者・・・・・・に声を掛けた。


「ほら、アンタも何か言いなさいよ、我考われたか

「そ、そうは言っても、焔呪ちゃん……っ、いきなり話を振られても……」


最後の一人──橙真とうま 我考は、いきなりそう言われ驚いたのか、手に持っていた幻霊装機アーティファクト──“橙金乱斧とうこんらんぶ”を取り落しそうになって焦りながらそう答える。

そんな彼の様子を見た焔呪は、呆れたと言わんばかりの表情を浮かべながら溜め息を吐き、幻霊装機アーティファクト焔天苛えんてんか”を肩に担ぎながら言った。


「何慌ててんのよ、我考……。ネズミの一匹も出てないって言うのに」

「それは、その……勝手に“結界”内に入っちゃったワケだし……もしあの黒鏡の子になんかあったら、責任取らされるかもしれないし……。──や、やっぱり、やめない?」

「はぁ!? 今更何言ってんのよ、我考! あんな“落ち零れ”一人がどうにかなったトコロで特に何かあるワケもないし、そもそも真っ先に“結界”に入ったのはアンタ・・・じゃないっ・・・・・!」

「それ、は……っ」


──そう。

“結界”内に侵入した三人の中で、誰よりも早くこの“異界域ダンジョン”に足を踏み入れたのは、意外にも橙真 我考その人だった。

その事実を焔呪に指摘されて言葉を詰まらせる彼を見て、光輝が更に話を続ける。


「……でも、焔呪に袖引っ張られてお前が部屋を抜け出そうとしてるのに気付いた時は、本当に驚いたぞ。お前でも、こんな大胆な真似をするんだな、って」

「………………せない」

「うん?」

「……あんな……“劣等種”風情に、好き勝手させない。させるわけにはいかない……だからっ!」


光輝の言葉を聞いた我考は、肩を震わせながらも、はっきりとした口調でそう口にした。

それを耳にした光輝と焔呪は、突然大きな声を出されたコトもあって、驚き思わず足を止めて振り返る。

……が、二人ともすぐに似たような──犬歯を剥き出しにするような獰猛な笑みを浮かべて、我考に言った。


「当たり前でしょ、我考。ここでは、アタシ達がルールなんだから」

「七名家から追放されたヤツなんかの思い通りにさせはしない……そんなの、俺達だって思ってるさ」

「焔呪ちゃん……光輝くん……」

「行くぞ、我考。真っ先に行動を起こしたのはお前だが、俺達もそれを止めずについてきたんだ。何かあれば、三人全員で受ければいだろう。……それが勝手をしたお怒りでも、今回の功績・・に対する賞賛であっても」

「安心しなよ、我考! アンタはちょっと頼りないけど、ココにはアタシも光輝もいるんだから」


もう一度前を向きながら、そう口にする二人の姿を見た我考は、足を進め始めた二人を追いながら震えた声で言う。


「そう……だよね。三人いれば、何とかなるよねっ!」


努めて明るい声を出そうと紡がれたその言葉に、光輝と焔呪は「当然だ」と軽い調子で返しながら、三人で道を進んで行く。

……が、


「──────あ」


僅かに数歩進んだ所にあった曲がり角を曲がった瞬間、焔呪がそう、間の抜けた声を出した。

そこには、分かりやすく綺麗に分かれた三叉路があった。

それを見た三人の間に、嫌な沈黙が漂い始める。


「あ……えーと……どうしよう?」


先程「三人いれば何とかなる」と言ったばかりの我考が、二人から軽く視線を逸らしながらそう尋ねる。

その言葉を聞いた光輝は、憮然とした表情を浮かべながら問いに答える。


「流石に今更戻る、ってのは無理だろう。折角入ったのに何もせずに帰ったら、それこそ罰則を喰らうだけで旨味が一切ない」

「だからって、全部を一つ一つ回ってるような時間もないわよ? 絶対に後から誰かが入ってくるだろうし。それに……何か霧も出て来てるから、体力の消耗も激しくなりそうよ」


焔呪がそう口にした通り、今まで三人が歩いて来た方の通路から、徐々に霧が流れてきて三叉路にまで入り込んでいっている。

猛暑や極寒と言った状況も戦いに向いていないのは確かではあるが、霧という天候も厄介さで言うなら前者二つに引けを取らない。

視界が悪くなるコトは想像に容易いだろうが、それだけでなく、気温が低くなるコトによって体力が、湿度と比例するように不快指数が高まり集中力が奪われる。

雪姫ゆきひめ銀架ぎんかのように水属性や“ミスト系列シリーズを頻繁に使う魔導師なら霧の中の戦闘にも慣れているが、実戦経験が少なく水属性魔導師でもない光輝達達には好ましくない環境であり、火属性魔導師の焔呪に至っては火力が落ちる不利な気候でもある。

もし、天上院てんじょういん 彦麻呂ひこまろと戦闘を行うコトになったとしても、長期戦を行えないのは、まず間違いない。


「……じゃあ……」


掠れるような声を出した我考にゆっくりと頷きながら、光輝は言った。


「ココで、三手に分かれて進むしかないだろう」


その言葉を聞いた二人は一度顔を見合わせたものの、すぐに揃って首肯をし、一人ずつ分かれた通路の前に立つ。


「……また、合流出来たらいいね」

「別に、このメンバーなら誰か一人だけでも何とかなるだろう」

「それもそうよね、光輝」

「まぁ、一番の手柄は俺が貰ってやるから、お前らは安心してろ」

「ちょっ、ズルいわよ!? ソレはアタシのモノなんだからっ!」

「ぼ、僕だって負けないからねっ!」


そうやって、軽口を交わし合いながら緊張を解した三人は……、


「それじゃあ──」

「「行く(わ)っ!」」


その声で、一気に駆け出す。

その通路はどれも、距離こそ長かったものの、幸いなコトに他に分岐点などは存在しなかった。

だから三人共、道に迷うコトなく通路を駆け抜けて行き……、




「目的地に着いたは──」

「私達二人ね、光輝」


無事、ドーム状に広がった空間で合流するコトが出来た光輝と焔呪が、軽く息を整えながらそう言葉を交わし。


「……おっ、と。どうやら、来たみたいですねぇ」


そんな彼らの姿を見たドームの中心にいた人物──天上院 彦麻呂が、のんびりとした口調で呟く。

彼の足元に、今回我考が“結界”内に侵入しようとした原因──黒鏡くろかがみ 那月なつきがいるのを確認した光輝達は、それぞれの幻霊装機アーティファクトを眼前に構え、獰猛な笑みを浮かべながら言った。




「それじゃあ、とっとと──」

「──終わらせてやるっ!」




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