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第二十七話 視線集まるAthletic Field

魔法・挿絵を募集中です!

──幻奏高校本棟の四階、三年Sクラス。

そこでは今、老年の男性教師による魔法生物学の授業が行われていたのだが──、


「──えー、それでは誰かに基礎教科における“遺伝”と、魔法生物学における“遺伝”の違いを説明して欲しいのですが……藤壺ふじつぼさん、お願い出来ますか?」

「はい。──生物学的には“遺伝”とは遺伝子の働きにより、親が子にその形質を伝える現象であり、通常は二親の遺伝子を合わせて子の遺伝子が作られると考えられています。しかし、遺伝子内の魔力を分析すると、父親と同じ特徴を持つ魔力と母親と同じ特徴を持つ魔力の他に、その子供特有のものと思われる魔力が見付かるため、魔法生物学的には二親に加え個体特有の形質も遺伝子が持っていると考えられています」

「丁寧な説明、ありがとうございました、藤壺さん。今彼女が言ってくれた通り、魔法生物学では両親の形質の他に、“固有形質”と呼ばれるその個体特有の形質があるものと考えています。その“固有形質”について研究をした有名な日本な生化学者がいるのですが……分かりますか、蒼刃あおばさん?」

「えっ!? あ、えーっと……秘禍神ひめかがみ 架純かすみ、ですか?」

「はい、正解です。が、ちょっとボンヤリしていたようですので、気を付けて下さいね」

「す、すみません……」

「はい。えー、では、この秘禍神博士ですが、闇属性の符呪魔法を利用して、DNAの構成単位の配列順序を正確に読み取り、約2000もの標本サンプル解読・・することで、帰納法を用いて“固有形質”の存在を証明しました。また、この時に偶然、“属性配列エレメンタル・コード”を発見したことでも、彼女は有名です」

「? “属性配列エレメンタル・コード”って何ですか、先生?」

「いい質問ですね、綺天塚きてんづかくん。えー、皆さんは生物の授業の中で、形質を指定する遺伝情報が、アデニンやチミンなどのヌクレオチドを構成する四種の塩基の配列順序に組み込まれていることは習ったと思いますが、秘禍神博士はこの順序を読み取った時に、属性魔法を扱える人間には必ず、特定の配列順序を持つDNAがあることに気付きました。その特定の配列順序のことを“属性配列エレメンタル・コード”と呼ぶのです」

「それはつまり、その“属性配列エレメンタル・コード”によって、僕達の属性が決まっているということですか?」

「はい、その通りです。その人が持つ“属性配列エレメンタル・コード”が組み込まれたDNAの量や種類、割り合いによって、その人の魔法の得手不得手や、どれ程強く、どれだけの魔法が使えるかが決まります。分かりましたか?」

「はい、先生」

「では、話を“固有形質”に戻しますが、この“固有形質”は魔法生物学的には二親から遺伝した形質とは別物と考えられていますが、それらには多くの類似点や共通点があるのが特徴です。ですので、子が親と同じ属性の魔法が得意になることは多々あります。しかし、ごく稀に親とは全く異なる形質を持った子が生まれることもあります。この時、この子の属性は親と同じになるのか、それともその“固有形質”に反映されるのか……どっちだか分かりますか、黒鏡くろかがみくん」

「確か……“固有形質”の方が反映される筈だったと記憶していますが」

「正解です、黒鏡くん。メンデルの説いた優性の法則とはまた少し違いますが、二親の形質と“固有形質”では後者の方が強く現れるということも、秘禍神博士によって証明されています。また“固有形質”から発現した魔力は、その量・技術力・質などの点において二親から受け継いだ形質よりも上回るモノと推論されています。それ故に、秘禍神博士はとある有名な論文を発表しているのですが……知っていますか、神白さん?」

「………………」

「……? 神白さん? 神白さーん?」

「──っ!? え、あ、そのっ……すみません、聞いてませんでした」

「……どうしたのですか、神白さんも、蒼刃さんも? 今日は二人共、心此処にあらずと言った感じですが?」

「「すみません……」」

「……まぁ、分かってくれたらいいのですが。えー、正解は『イエスの持ち得る力』と言う論文です。これは、もし二親の形質を受け継がずに“固有形質”だけを持って生まれた子がいた場合、その子がどれ程の力になるのかを推測し纏めたモノです。この題名は父親がいない、または精霊と言われているイエス・キリストのことを指しています。えー、この論文は実証の仕様が無く、一部の学者の間では机上の空論とも呼ばれていますが、テストには出てくるのでちゃんと覚えて置いて下さい」

「「「はい」」」

「それでは、次のページに行って──」


──と、老教師が慣れた手付きでページを捲り、次の単元に移る中、先程名前を呼ばれた二人の少女は、心配そうな表情で窓の外に目を向けていた。


 □□□


──幻奏高校本棟の三階、二年Sクラス。

そこでは今、中年の男性教師による魔法理論学の授業が行われていたのだが──、


「──このように、水属性“アクア系列シリーズの中級魔法《蒼水導波リキッド・ストリーム》と雷属性“サンダー系列シリーズの上級魔法《天雷霊紗ライトニング・ヴェール》や、火属性“ファィア系列シリーズの中級魔法《炎導波フレイム・ストリーム》と風属性“ウィンド系列シリーズの上級魔法《旋風酸素導波トルネード・オキシゲンストリーム》等、特定の魔法を組み合わせてそれらの威力を上げる技術を“連係魔法コンビネーション・マジック”と呼びます。これは、魔法と魔法の足し算のようなモノですが……皆さんはどんなモノを思い付きますか?」

「えー……例えば、土属性“エラー系列シリーズの魔法で銀とかの鉱物を作り出して、そこに雷属性の魔法を流すとかですか?」

「そうですね、氷室ひむろさん。電気の伝導を利用した“連係魔法コンビネーション・マジック”は数多く存在しています」

「では……風属性“ウィンド系列シリーズの魔法や火属性魔法等を用いて空気のレンズを作り出し、屈折を利用して光属性の魔法を収束させた場合も、“連係魔法コンビネーション・マジック”になるのですか?」

「はい、そうですよ、翠裂みどりざきさん。屈折を利用して光属性魔法や風属性の“サウンド系列シリーズを収束させ威力を上げるのも“連係魔法コンビネーション・マジック”の一つで、風や火属性魔法以外にも、水属性魔法や土属性“エラー系列シリーズの上級にあたる“橙晶クリスタル”系の魔法なども使われます」

「分かりました。ありがとうごさいます、先生」

「いえ、いいですよ。──それでは、次のページに行きまして……えー、このページからは“魔響共鳴レイド・レゾナンス”について習っていきます。と、言う訳で、この“魔響共鳴レイド・レゾナンス”について軽く説明して下さい、黄道こうどうくん」

「ぅえっ!? お、俺?」

「はい、そうですよ」

「そ、その、レ、“魔響共鳴レイド・レゾナンス”ってのはその、ア、アレっすよ。“連係魔法コンビネーション・マジック”の進化形っつーか、何つーか──」

「……まぁ、あながち間違ってはいないのですが、それではとても点をあげられませんよ、黄道くん」

「ッスよねー……」

「……えー、黄道くんの説明では分かりにくかったと思うので、教科書の方で確認したいと思います。ですので、19ページの第一段落を……そうですね、穂群ほむらくん、読んでくれますか?」

「はい、えーと……『“魔響共鳴レイド・レゾナンスは、二つ以上の同じ属性の魔法を融合させることで、“連係魔法コンビネーション・マジック”より強力な魔法を創り出す現象です。“連係魔法コンビネーション・マジック”と違い、この“魔響共鳴レイド・レゾナンス”では使用する魔法の性質を根本から作り変え、掛け算の要領で魔法の威力を上げる魔法なので、術者に元となる魔法以上の技術力を要求します。また、この時に創り出された魔法は、等級外魔法として扱われます──』」

「はい、そこまでで十分です。今、穂群くんが読んでくれた箇所にもあった通り、“魔響共鳴レイド・レゾナンス”はとても高度な技術を要求するモノなので、コレが使える魔導師には滅多にお目に掛かれないのですが……橙真とうまさんは、実際に等級外魔法を見たことがあったりしますか?」

「はい、何度か拝見させて頂いたことがありますね」

「やはり、橙真さんは見たことがありましたか。……因みに、どういう魔法なのか教えて貰えませんか?」

「そうですね……。特に印象的なのは、思奏しそう高校にいる“蒼刃の双子姫”の《溺死迷宮ドラウト・ラビリンス》とか、夢奏むそう高校にいる赤羽あかばね兄弟の《迦楼羅焔翼ガルーダ・ウィング》とかは凄かったですね」

「そうですか……。他校にはそれ程の魔導師がいるのですか」

「勿論、幻奏高校ココにも、神白家の伝家の宝刀である《勇輝絶剣ブレイヴ・ストライク》が使える白亜はくあさんと光輝こうきくんがいますし、そしてもう一人」

「もう一人……?」

「一番最近に見た等級外魔法、且つ今まで見た中で最も衝撃的だった等級外魔法は、《幻闇の漆黒剣ファントムダーク・ブラックソード》です」

「《幻闇の漆黒剣ファントムダーク・ブラックソード》……? 《獄闇剣ダークネス・ソード》と《影鋭刃シャドー・エッジ》の“魔響共鳴レイド・レゾナンス”と記憶していますが、確かソレは、さして珍しい魔法ではなかった筈ですが……」

「私が衝撃を受けたのは、ソコじゃなんです、先生」

「と、言いますと?」

「私は、ソレがたった一人で遠距離・・・・・・・・・から発現されたから驚いたんです」

「──っ!? “魔響共鳴レイド・レゾナンス”をたった一人で扱える人がいるんですかっ!? そ、それは一体──!?」

「──私の愛しの元婚約者こと、神白 銀架ぎんかくんです♪」

「「「──────っっっ!!?」」」

「まぁ、本人の前で言ったら、物凄く嫌な顔をされるとは思うんですけどね」


──と、クラス全員が唖然とした表情を浮かべる中、いつもより柔らかく、いつもより優しげで、どこか蕩けたような笑みを浮かべて、橙真 椿つばきはそう口にする。

その言葉を聞いた数名の生徒は悔しげに唇を噛み締め……激しい憎悪の籠もった視線をグラウンドに向けた。

授業はまだ中盤だと言うのに、教室内にはとても授業を続行出来るような空気はない。

生徒達が発する混沌とした雰囲気に堪え兼ねた中年教師は、諦念を滲ませた溜め息を吐き、自らも一人で“魔響共鳴レイド・レゾナンス”を扱う少年を見るために、窓側に近付いていった。


 □□□


幻奏高校の職員棟五階、理事長室。

そこでは、その部屋の主である蒼刃 妃海ひみともう一人、漆黒の地に白銀の幾何学模様が描かれた、十二単と浴衣を足して二で割ったような奇抜な和服を着た、異様・・な少女がいた。

異様、と言うのは別に服装に限った話ではない。

むしろ、服装以上に、彼女の容姿は異常・・だった。

十七歳前後に見えるの女の容姿は、顔立ちだけ・・を見るなら、大和撫子と言う言葉が相応しい美しいモノだ。

しかし、その双眸は煌びやかな黄金色であり、結い上げられた銀髪は本物の白銀のような輝きを──とても生物のモノとは思えない、金属光沢に似た光を放っている。

とても日本人だとは思えないし、そもそも本当に人間なのかどうかも怪しいレベルだ。

そんな少女の姿を見た妃海は、動揺を隠せないまま彼女に思わず呻く。


「な、何と言いますか……凄いお姿をされていますね……」

「そうだろう? 我も中々この着物を気に入っている」

「あ、いえ……確かにその御召物は奇抜、もとい、独創的ですが、そうではなく──」

「何、皆まで言わずとも主の言いたいことは分かっている。服装ではなく姿そのもの・・・・・に驚いているのだろう?」

「え、えぇ……」

「まぁ、その答えとしては……一応、我が“女神”だから、で納得してくれ」

「え? あ……そ、そうでしたね」


少女の答えを聞いた妃海は、一瞬唖然としたものの、しかしすぐに何かを思い出したかのように小さくそう言う。

それを見た少女は満足げに頷き、接客用のテーブルに置かれていたコーヒーを一口啜って……顔を顰めて妃海に言った。


「……何だ、コレは? かおるの淹れたモノと比べると生ゴミとしか言い様がない味をしているぞ」

「──っ!? すみませんっ! それは鈴木が淹れたモノでして──」

「……鈴木? あぁ、あのバーコード眼鏡か。まぁ、あんな小物に上手いコーヒーが出せるとは到底思えんが……まともに茶も淹れられんほど使えない部下を持つとは、お主も苦労しているんだな」

「その……本当に申し訳ありません」

「まぁ、いい。我もこんな些事を気にしていられる程暇ではない。この生ゴミはもういいから、とっとと本題に入ろう」

「あ、ありがとうございます、ティ──」

「っと、待て、妃海。今我の真名を呼ばれるのは困る。この姿のことをあの勘の良い小僧に気付かれるかもしれんし、その小僧が言うには幻奏高校ココには我の存在に気付きかねない者がいると言っておったからな」


頭を下げながら名前を口にしようとした妃海を少女は慌てて止め、早口でそう妃海に告げる。

その言葉を聞いた妃海は、“我の存在に気付きかねない──”と少女が口にした瞬間に軽く目を瞠ったが、すぐに表情を戻して少女に問う。


「では、何とお呼びしたら……?」

「フム、そうだな……。では、我のコトは“コスモス”と呼ぶといい」

秋桜コスモス、ですか……?」

「まぁ、どう捉えるかはお主の勝手だが、な。我が遮っておいてこう言うのもなんだが、いい加減、お主が我をび出した理由を教えて貰おうか」

「……そう申されましても、それはティ──コスモス様も既にお分かりなのでは?」


少女にジト目で睨まれたため慌てて呼び名を訂正しながらも、妃海は少女──コスモスにそう問う。

それを聞いたコスモスは、革張りのソファの背もたれに踏ん反り返りながら答える。


「まぁ、確かにそうではあるが、一応な」

「では、お話させて頂きますが……本日コスモス様を喚び出させて頂いたのは、今回私の部下がやらかした・・・・・コトについて、お詫びしようと思ったからです」

「詫び、か……。やらかしたコトとやらを、詳しく聞かせて貰えるか、妃海?」

「……端的に申しますと、教師の中で七名家を信仰・・するのが暴走し、貴女の“お気に入り”である“極光”の魔導師──銀架くんを幻奏高校ココから追い出そうと画策していたのです」

「……“お気に入り”とは、また少し違うのだがな」


ポツリと、コスモスが呟くのだが、妃海はそれには気付かずに言葉を続ける。


「魔法実技と武術実技の、どちらの授業でも何も無かったから油断していました……。まさか、対人演習、しかも一年生の全クラスが合同で参加する今回の演習に、鈴木を始めとする約二十名の教師によって多対一の演習が組み込まれてしまいました。貴女ももうご存知だと思われますが、今回の演習では銀架くん一人とSクラスとAクラスの生徒計十人が戦うことになっています」

「……フム。それは、お主の力でどうにかすることは出来なかったのか?」

「……申し訳ありません。教師の間で情報を回して時間稼ぎをしていたらしく、私に報告が届いたのがつい昨日だったのに加え、銀架くんの正式な入学が決まったのが一週間前だったからスケジュールの変更で忙しかったという言い訳があるので、私の力だけではどうも出来ませんでした……」

「──そう気落ちするな、妃海。我は特に気にしていないし、小僧にとってはむしろ願ったり叶ったりの状況だと思うぞ」

「それは……っ! そう、かもしれませんが……」


コスモスの言葉を聞いた妃海が、しかしそれでも悲しげな様子で目を伏せる。

そんな様子を見たコスモスは、ニヤリと笑い、ソファから立ち上がりながら言った。


「──お主、馬鹿だな」

「……え?」

「あの小生意気な道化じみた小僧が、たかが十人のガキを相手にした程度でどうにかなると思ったのか?」

「っ!?」


その言葉を聞いた妃海が、小さく息を呑む。


「安心しろ、妃海。どうせ、その暴走した教師達は痛みを与えて恥をかかせて自主退学でもさせようとしたんだろうが、あの小僧はそんなコトは気にしない──否、最初から・・・・勝っている・・・・・勝負・・と思って笑顔で受け入れるだろう」

「最初から、勝っている……」

「あぁ。何せ、教師と小僧では、目的も覚悟も違う。自分で追い出そうともせずに、生徒をけしかけるだけの輩が、小僧に勝てるワケがない。何せアレ・・は、七名家に一人で渡り合おうとするような大物バカだからな」

「………………そう、ですね」


小さく、掠れるような声で妃海が同意する。

それを聞いたコスモスは、一つ満足げに頷き……そして、自分の体が淡い銀色に光っていることに気付いて、妃海に告げる。


「フム、もう限界のようだな……。そろそろ食事も始まるだろうし、我も戻ることにするが……その前に一つ、言っておこう」

「? 何でしょうか、コスモス様?」

「何、軽く聞き流して貰っても良いのだがな」


コスモスは、透け始めた自分の腕を面白そうに見ながら、軽い調子で続けた。


「あの小僧は、無意識に・・・・心の支えとなる存在に気付いているから、この程度は笑って受け流せる。賭けても良い、あの小僧は絶対内心で現実チョロいとか言っているだろう」

「ちょ、チョロ……」

「だからな、妃海……今はただ、あの小僧の傍に居てやってくれ。我は、それ以上は望まん」

「──────っ!? ……分かりました、コスモス様」

「そうか」


妃海の言葉を聞いたコスモスは、もう一度満足げに頷く。

そして、虚空に溶け消えていく自身の体を見てから、妃海に別れの言葉を告げた。


「ではな、妃海。一ヵ月後にまた会おう」

「はい、コスモス様。それでは──」


妃海が頭を下げそれに応えると同時、見かけとは不相応な程大人びた笑みを浮かべていたコスモスの姿が、完全にこの場から消滅する。

その場に残されたのは、苦笑気味の表情を浮かべる妃海と、銀の台座に美しい蒼い砂が特徴的な砂時計のみ。

妃海はじはらくの間、コスモスの代わりに残されていたその砂時計を眺めていたが、やがて笑みを浮かべながら窓の外に見えるグラウンドに視線を向けた。

そして──────、


 □□□


──幻奏高校の第一グラウンド。

そこでは今、数人の教官と一年生全員が集まり、対人演習の授業が行われていたが。

授業も終盤に近付き、多くの生徒が影で“本日の目玉”と呼んでいる多対一の演習の準備が整っていく中、多対一の“一”に選ばれた生徒──神白 銀架は、いつも通りの無邪気な笑みを浮かべながら、心の中で呟いた。




(何て言うか……現実チョロい)




(僕は、普通じゃないからね)


『……お主、基本ドSだな』


『頑張れよ、天上院てんじょういん! そんなヤツ、ブッ飛ばせ!』


(――――――もう、止めてっ!)


「――初めましてアンシャンテ、ムッシュー神白」


「……意外だな。あの人がそんなコトを言うなんて」


「分かって頂けましたか、ムッシュー?」


「――――――本当に、十人でいいの?」




次回、“第二十八話 始まる前のConclution”




「――――――もう、貴方は七名家最強とは呼ばれていないんですよ、ムッシュー」


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