第十五話 真夜中のAssembly
只今挿絵・魔法を募集中です!
「──“──あぁ、何と寄る辺もない俺の身か。完成への燃え上がる想いの数々を、俺はもうどんな聖像に献げても構わない”」
一寸先も見えないような暗闇の中、朗々と歌い上げるように、男とも女とも付かない中性的な声が響く。
直後、闇の中から別の──若い男性の声が聞こえてきた。
「──“地獄の季節”ですか、宣教師様。中々良い詩ですね」
「そう? それは良かった」
宣教師と呼ばれた声の主は、何処か嬉しそうな声でそう返す。
それを聞き、次は若い女性と思しき声が響いた。
「……それで? 宣教師様はいきなりその詩を歌われていましたが、どうかしましたか?」
「いや、ワタシの信仰心を、今一度皆さんに知って欲しかったので、この詩にその想いを込めて歌ってみたのです」
「ははぁ……ですから、その一節ですか」
宣教師の言葉にそう返したのは、老いた男性の声。
そしてそれ以外にも、数多くの……不協和音のように闇に響く老若男女入り乱れた人の声。
それから、この暗闇の中に百人以上がいることが分かる。
宣教師は、闇の中に響くその声が静まるの見計らってから、言葉を発した。
「──皆さん、こんばんは。本日は、突然の召集にも関わらず、これ程の数の信者に集まって頂いて貰えたこと、心より感謝を申し上げます」
闇の中に響き渡っていくその声は、何処か妖艶な魅力を含んでおり、人々の心を強く惹き付ける。
「さて、早速ですが、今回皆さんにこうして集まって頂いたワケを話させて頂きます」
「──何かあったんですか、宣教師様?」
「もしや、“幻皇様”の身に何か!?」
「安心して下さい、皆さん。我らが崇拝する“幻皇様”は、絶対なる存在です。今も、我々のことを遥か高みから見守っておられます」
宣教師は、不安を孕んだ信者の声をしっかり聞き分け、一人一人の顔を闇越しに見詰めながら、優しい声を掛けた。
「今回皆さんに集まって貰ったのは、とてもいい知らせがあるからです」
「朗報、ですか?」
「それは一体……?」
「実は……本日、“幻皇様”に捧げる巫女となる少女──“彩色の乙女”が見つかりました!」
「「「──────っっっ!?」」」
喜びを一切隠そうとしない宣教師のその声を聞き、闇の中にいる信者達が一斉に息を呑む。
沈黙は一瞬。
次の瞬間、信者達の歓喜の声が暗闇の中に轟いた。
「それは……なんと喜ばしいことか!」
「これは……我々の悲願達成への大きな一歩となる!」
「えぇ! この知らせを聞き、“幻皇様”もとても喜んでおられます」
「それは真ですか、宣教師様!」
「はい。本日は“幻皇様”の機嫌もとてもよく、我々にお言葉を賜わして下さりました」
「「「おぉっ!」」」
宣教師のその言葉を聞き、信者達が再び喜びの声を上げる。
そんな彼らに答えるように、懐から巻物を取り出して宣教師は言った。
「それでは、只今より“幻皇様”のお言葉を拝読させて頂きます」
「「「………………」」」
「──“今回の諸君らの知らせを、我はとても喜ばしく思う。これも全て、力無き我の為に働いてくれている諸君らのおかげである。我は諸君らに感謝しよう”」
「「「──────有り難き幸せであります」」」
「──“諸君らの今後の活躍にも、我は心より期待している。諸君らなら、次は何をすべきか理解しているであろう?”」
「「「──────勿論にございます!」」」
宣教師の紡ぐ言葉を聞き、信者達が一斉に返事をする。
宣教師が、叫んだ。
「貴方達は何者だ!?」
「「「我ら、世界の平和を“幻皇様”に託す力無き者共!」」」
「貴方達は何をする者だ!?」
「「「我ら、“幻皇様”への対価として、その雄姿を彩る舞台の礎を築く弱者!」」」
「貴方達は今、何をすべきだ!?」
「「「今、我らが払う対価は一つ! 世界の記憶を宿しし巫女を、“幻皇様”の血肉と変える!!」」」
「宜しい! 今こそ我らが動き出す時だ!」
信者達の言葉を聞いた宣教師は、口元を大きく歪めて言った。
「さぁ、皆さん! “幻皇様”をこの世に呼ぶため、“彩色の乙女”を捕らえるのです──!!!」
闇の中を宣教師のその言葉が通り抜け、その日の集会は幕を閉じた……。
「何故だ!? 何故裏切ったっ!?」
「全く理解出来ないって言いたげね?」
「待て、○○○○っ! お、お主、一体何を……?」
「まだ、こんな時間………………」
『……朝から精が出るのぉ、小僧?』
「分かってるって、シロガネ。その為に、このコートに色々と仕掛けたワケだし」
『それに、腹が減っては戦は出来ぬと言うしな』
「だから……さっきも言ったでしょう? 準備万端だって」
次回、“第十六話 始まりの日のMorning”
「――さぁ行こうか、シロガネ。ここからが、本番だよ!」




