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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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世界樹の枝の上でアイスクリームを食べる

作者: 翠蓮
掲載日:2026/08/29

甘いクリーム スプーンにたっぷり 

あなたの口へ つっこむわ 

愛して クリーム アイスクリーム


口ずさみながら、女の子がボウルいっぱいのアイスクリームを混ぜた。


「なんだその歌は」

たっぷりのクッションにもたれて、けだるげに上体だけ起こしている男がツッコミを入れた。

「地球で見つけました!恋の歌らしいです!」

そう言いながら、ボウルのアイスクリームをスプーンに取った。

「はい、師匠!」

「食べない…むがっ」

言い終わる前に、その口にスプーンを突っ込んだ。

「このためにアイスクリームも作ったんですよ!」

得意げに少女は胸を張る。

きれいな水色のツインテールも一緒に揺れる。


「……お前は相変わらず地球が好きだな」

「面白いじゃないですか、あの世界」

そう言いながら手はまたアイスクリームをすくい取り、師匠と呼んだ男の口に運ぶ。

2回ほどそれを繰り返してから、男は口元を拭った。

「もういらん」

「はぁい!」

少女はおんなじスプーンで、自分も食べ始めた。






ギャーは自分の名前はギャーだと思っている。

自分を見た人間たちが、「ギャー!」というからだ。

ギャーは生まれたとき、手も足も顔もなかった。

母親はその肉の塊を見て叫び、捨てろと命じた。

近くの森に捨てられたギャーは、そのまま死ぬはずだったが、魔力だけはたっぷりあったので、周りから命を吸い取って生きながらえた。

森には気味の悪い化け物が住んでいると村の人々は恐れ、近寄ることはほぼなかった。


ところが旅の冒険者が、化け物を退治してやろうと森へやってきた。

ギャーはすぐに見つかった。

警戒心などなかったから。

そして剣を突き刺され、痛くて悲しくて苦しくて、気がついたら冒険者は死んでいた。


冒険者が殺されたので危険だと、もっと人がやってきた。

ギャーは森の奥へ奥へ逃げた。

どうして、どうして。

人と育たなかったギャーは、悪意というものが分からなかった。

疲れ切ってもう動けなくなったとき、ギャーのそばに一人の男が立っていた。

「ほう、ヒルコが自力で生き延びたか。珍しい」

ギャーは目もなかったけれど、魔力で周りを『視る』ことができた。

男の人は、細くて長身で、白く長い髪をしていて、とてもきれいな顔をしていた。

「面白い。お前に身体をやろう」

男の人がそう言うと、ギャーは小さな女の子になった。

「名前もいるな」

そう言われて、ギャーは答えた。

「ギャー」

ギャーが初めて出した声だった。

「ギャー?それがお前の名前か?」

ギャーはこくこく頷いた。

「その名前では不自然だ。新しい名前をやろう」

人間らしい身体になったが、うまく動かせず舌もまわらず、うーうーと小さく唸った。

「よし、お前は今からルールーだ」

とても適当な命名だったが、ギャー改めルールーはまったく気にしなかった。


「うーうー」

「俺のことはそうだな、師匠とでも呼べ」

「うー」

師匠はルールーを抱き上げると、そのまま歩き出した。



それから2人は世界中を旅して回った。

その間に人間の国がいくつも興されては滅び、時には魔族と争い後に不可侵条約を結んだりと色々あった。


そのうちに人間は、他の星まで行けるようになった。

他の星には人間ではない知的生命体もいて、そこでも交流したり対立したり色々あった。

師匠とルールーはいつも、コソッと人間たちに混じってなに食わぬ顔でそれを眺めていた。



それから星もたくさんなくなって、ある日、師匠は言った。

「ふむ、そろそろこの世界も寿命が来たようだ。一つの世界にこれだけいたのは久しぶりだった」

傍らのルールーを見た。

ルールーの外見は、10代くらいの少女で止まっていた。

中身もあんまり変わっていなかった。

「お前はこの世界の生き物だ。世界とともに消えるだろう。ともに旅をするのもここまでだ」

「師匠と離れるのはイヤです!」

「お前が嫌でも、この世界で生まれ、この世界と繋がっているのだ」

師匠も、ほんの僅かに情のようなものは芽生えていたが、これ以上連れて行くことはできない。

『そういうもの』だからだ。

「ここまでだ。ではな」

あっさりと、師匠は消えてしまった。

ルールーがどれだけ探しても、世界に師匠の気配は見つからなかった。


いやだいやだいやだ

置いて行かないで師匠

師匠師匠師匠


世界が終焉を迎え、静かに消えていっても、ルールーはひたすら師匠を呼び続けた。


師匠師匠師匠

置いて行かないで

師匠

師匠

師匠



世界が消えたあとの何もない世界に、ルールーは漂っていた。

生きているのか死んでいるのか、どちらでもない状態で、でもその中にあるのはただ師匠を呼ぶ声だけ。



「世界が消えても超えて来たか。本当にお前は面白い」

懐かしい声がした。

「師匠!!」

別れたときと同じままの姿で、師匠が立っていた。

「師匠!置いて行かないで」

ルールーは師匠にしがみついた。

「ここまで追ってきたなら、連れて行くしかあるまい」

そうして、初めて会ったあの日のように、師匠はルールーをひょいと抱え上げた。



とてもとても大きな木があった。

「世界樹と呼ぶものもいる。ここが本来の俺の居場所だ」

ルールーを下ろすと、師匠は適当に横になった。

「今からはお前の居場所もここだ」

ルールーは師匠に抱きついた。

「師匠!大好き!」

「なんだ急に」

呆れたように師匠は言ったが、ルールーは嬉しいでいっぱいだった。



そのあとは、いろんな世界を覗いたり、たまに中に入ったり、次元の狭間で迷子になっているものを見つけたりしながら、ルールーは師匠のそばで楽しく暮らしている。


愛して クリーム アイスクリーム

ルールーは歌いながら、アイスをまた口に放り込んだ。





歌詞、いにしえのボカロ風だなぁと思いました。

ルールーのビジュはミ◯さんなのは内緒。

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