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第7話 面倒くさい

 何故か俺の部屋にメガネとマラがいて談笑しているのはひとまず他の人に相談したことでなんとか自分の体裁は守れただろう。



「なんでお前が俺の部屋にいるんだ。お前の部屋じゃないぞ」


「いや、さっきは言いすぎたと思って謝りに来たのですが、マラさんしかいなかったので」


「私が上げて話し合ってた」


「お前は俺の部屋の主じゃないだろう」


「だがお前の主だ」



 誰かこの迦微を引き取ってくれないかな。とても面倒だ。



「で、何で謝りに」


「先程も言った通りただ謝りに、...言い過ぎたと思ったので」


「本当にそれだけか」


「私そんなに嘘つきそうですか」



 腕を組みながら抗議をしてくる。逆に考えてほしい。


 あって二時間ちょっとの人を信用できるだろうか。


 俺だって人だ。警戒心がって最低限はある。勿論無視をするときのことが多いが。



「いや俺はお前のことを知らないし、興味も湧かないな」


「それなら今私のことを知ればいいじゃないですか」


「お前は馬鹿なのか?」


「なぜです」


「考えてみろ、見知らぬやつに自分の情報を渡して活用されたらどうする」


「大丈夫ですよ」



 自身をタップリと入れた声で線を引かれているような声で高らかに言った。



「私は全てを知っているので」


「全知ってことか。それはお前の主のおかげか?」



 呆れ気味に言うとそうですよと返事が返ってくる。


 自分の主と比べてると大層なものだが、はたして脳の処理機能はその情報に追い付いているのだろうか。



「追いついていますよ、ただ慣れるまでに随分と時間を有してしまいましたが」


「なるほど、全知って便利ですね」


「まぁ、そうですね」


「なのに俺に対して自己紹介をさせようとしたのはなんでなんですか。全知なら必要ないでしょう」


「それは他の人が知らないから説明をさせる必要があったからです」



 俺の問をあしらうように答えると腕を組んだポーズを崩さず目を細めて微笑みを顔に貼り付けたままこちらを見てくる。


 すると完全に置物とかしていたマラが我慢の限界なのか飛び上がって、元から浮いているがこの場における解を出した。



「まったく、どっちもお互いのことを警戒して上っ面だけの会話じゃないか。そんなに信用できないならお前の名前でも当ててもらったどうだ」


「そんなことで良ければ」


「おい、俺は了承してないぞ」



 そう言うも目の前のやつは止まらず俺の名前を言った。



「紙雅 千明」



 っつ。


 自分の名前を言い当てられたことに驚きつつもそれを外面に出ないように表情筋をコントロールする。



「それで、あたっているんですか」


「それは明日のお楽しみだな」


「偽名を使うだなんてことはしませんよね」


「どこまで疑り深いんだよ。俺も一応はお前と同じクラスメイトだぞ」


「それにお前は全知なんだろ」



 そこで彼女は、多分女性であると仮定して、見事なまでに美しい凍るような目線を送ってくる。


 何か地雷でも踏んだだろうか。地雷を踏んだのなら、いや別に気にしないでいいだろう。どうせ3年後には縁も切れている可能性が高いのだから。


 ずっと腕を組み自分を守るように周囲に気を配っている彼女は前髪を直すために少し顔を揺らす。前髪が目にかからなくなったが、そのかわりにメガネがズレてしまっていた。


 なのに彼女はそのズレたメガネを直す気配はない。


 指摘するのも面倒なので放置していようとすると、そのことに見かねてマラがメガネにさわり、つけ直す。


 さっきほどよりも表情は柔らかくなっていた。


 気が緩んだのか何かマラがしたのかは知らないしどうでもいいのだが、そこで自分も相手の名前を知らないことに気がついた。


 だが、見知らぬ人間と過ごすという貴重な体験を天秤にかけると答えは出た。名前は明日の自己紹介で知ればいいだろう。



「俺はお前のことを知らないが、まだ名乗るな。明日名乗ってくれ」


「理由を話さないってことは信頼を得たと見ていいですか」


「お前が俺の言葉をどう取ってもらっても構わないが、それは無いとだけ言っておく」



 その言葉を最後に薄緑髪のメガネをかけた少女はこの部屋を去っていった。


 なんだか嵐の目の近くにいたように時間が過ぎたように感じる。とりあえずは疲れた。


 人と話すことには慣れているが、今回は妙に緊張をした。なにせ相手は全てを知っているらしい。はなから信じてはいないが、万が一のことを考えると少し緊張をする。


 自分が次にとる行動も、相手が次にとる行動も、果てはいつ宇宙が消滅するのかも知っているのだとしたら、どんなものにもやる気は起きないだろう。少なくとも俺はそうだ。


 だからせめてもとして、知られているうえでのエンタメを提供しなければならないだろう。


 滑稽でも、泥臭くとも、必要とされなくとも。



「おい、あいつが行ったんだから私にかまえ」



 マラが不機嫌という雰囲気をふんだんに撒き散らしながら話しかけてくる。


 その顔、顔にかかっている紙を見ながら返答を返す。



「その理論がよくわからん」


「なぜだ」


「はぁ、お前も最初の頃は威厳があったんだけどな」


「常に仮面を被っていることができるのは迦微にもできないんだ、元から被っていないやつもいるがな」


「猫かぶりかよ」



 呆れて言うとマラは俺のスマホを取り上げ何やら操作をし始める。


 自分自身では会話も受け答えも脊髄反射で行っていることが多い。唐突に話が始まって唐突に終わる。それが常々だ。


 時計を見ると6時半を示しておりお腹も空いてきたので、買ってきたカップ麺を食べるために部屋を出る。


 せっかくだ、マラのも作ってやることにしよう。


 そんなことを思いながら階段を降りてキッチンへと向かうとすでにカップ麺の山が小さくなっていた。


 一人ぐらいとは鉢合いそうだなとは思ったが案外そうでもないらしい。


 各々の食べる時間はズレているようだ。


 薬缶でお湯を沸かしながらぼーっとしていると廊下側から階段を降りる音が聞こえた。


 


 一階に降りてきたのはマラで何故か足を地につけている。基本迦微というものは宙に浮いているのだが、地と接している。


 すたすたと俺の元へやってくると大量のカップ麺が入ってあったコンビニのビニール袋に手を入れて何かを探り始めた。


 しかしお目当てのものが見つからなかったのか手のひらには空が乗っている。



「おい、三色団子はどうした」



 ジト目でこちらを見てくる。食欲旺盛な迦微もいるものだ。



「多分、冷蔵庫だと思うぞ」


「そうか、買ってきた褒美で一本くれてやろう」


「褒美も何もその団子買ったのは俺だ。それは俺のセリフだ」


「要求したのは私だ。故に我のものだ。それにお前は従者だろ」


「お前が無理矢理に契約させた従者だけどな」



 不本意だったという旨を伝えるとマラがいきなり悲しいオーラを出してきた。そんなキャラではないだろ、お前。


 相手をするのも面倒なので沸騰して音がなっている薬缶を持ち上げ、事前に開けておいたカップ麺へとそそぐ。


 一つは自分の、もう一つはマラの分だ。



 そこから五分ほどまち、かけていたタイマーがなる。


 フタを開けると空気と絡み合っただしの匂いと黄金と呼ぶにふさわしい色をした汁が目から口へと食欲をかきたたしてくれる。


 更には白色の麺と大きな油揚げが表面上の8割をしめてより古代ローマの黄金比へと近づいている。


 もう一つの方は汁が地獄の業火のように赤く、表面に小さな無数の赤い物体が浮かんでいる。絶対に辛い。


 麺はたくさんの赤の中で埋もれまいと黄色くストレートなくせ一つない。


 チャーシュウやネギが忘れるなと先程までフタで覆われ見ることができなかった場所から現れる。



 断言しよう。


 これはどちらを食べても光の速度を超えて天国へと到達することができるだろう。


 空腹のときはただのカップ麺でもこのように美味しく見えてしまうのだからすごい調味料だ。


 2つのカップ麺をおぼんにのせてリビングのテーブルへと運ぶ。


 箸を忘れたので取りに戻り、2つ持ってきて片方をマラへと渡す。



「ほれ、どっちか選べ」


「なんで上から目線なんだ。仮にもお前の主だぞ」


「つべこべ言わずさっさと選べ。俺は腹が減ってるんだ」


「ならきつねを」



 そう言っておぼんからきつねのカップ麺を自分の元へと取り上げた。


 消去法で俺が辛味噌ラーメンを食べるのが決定した。



 夕飯を食べ終わり容器を洗っていると何やら上から大きな声が聞こえる。


 何かを言い合っているような会話だ。



「マラ、上の様子見てきてくれ」


「わかった。これじゃどっちが主かわからんな」



 ならそれなりの行動を起こせと声を大


きくして言いたいのをこらえる。


 


 数分後、マラが降りてきて言ったのは救助要請だった。



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