第16話 素行不良
天納さんが3人を呼びに行って数分後、戻ってきた天納さんと3人を出迎える。
「早いのね」
「元からここにいたので」
「それじゃあ、始めようか」
白抜井さんがそう声を掛けると全員が席につく。
始めると言ってもどのように話し合いをするかは知らないので、まずは様子見も込めて静観することにしよう。
「まずは共通点を見つけるために思い当たることを言っていかないか」
「全員が初対面みたいなものですか?」
「多分、先生はそんな事を求めているわけじゃないと思う」
雲珠未さんの意見を切り捨てて話を展開する。
その後もこれだ、という意見は出ないまま時間は過ぎ去っていった。
「残念ですが何も共通点はありませんでしたね」
「そうですね。利き腕も全員一緒というわけではないですし...」
「性別も2人が違うものね」
「悪かったですね。男性で」
「そういう事を言わせようと思って言ったわけではないわ」
共通点が見つからないまま無為な時間だけが過ぎていく。
流石のマラでも暇すぎたのか、下に降りてきてソファーに寝っ転がっている。
ぼーっとリビングからガラス越しに外を見る。太陽が雲で遮られてはまた現れるのを繰り返していた。
流石にそれらしい解答を作っておかなければならないだろう。
けれど言うほど簡単には作れない。
なら無理にでもでっち上げたほうがいっそ楽だろう。
「あ!」
「どうしたんです?急に声なんかあげて」
「お前達、まだ気づいてないのか?」
ソファーに寝っ転がっていたマラが突然飛び起きて、ぐるりとそれぞれの顔を一周する。
一同は呆けた顔をして何に気づけていないのかわかっていないようだ。
「貴様ら全員が主の眷属だろうが」
「あー、確かに。盲点でした」
「そうですね。それじゃあこれで共通点の話は終わりですね」
「そうしようか。流石に長時間考えるのは疲れたからね」
そう言って白抜井さんは席から立ち上がり自室へと戻るために扉のもとに行きリビングから出ていった。
それに続いて雲珠未さんもリビングを後にして、残るは僕と天納さん、村雨さんとなった。
「お二人は自室に戻らないんですか?」
「自室でもここでもあまり変わりませんから」
「私はお腹が空いたから何か食べようかなってね」
「食べすぎると夕飯が食べられませんよ」
「そこまで食べないわよ」
じゃれつく二人を見ながらマラに目線で意思疎通を図ると、マラは自室....僕の部屋からジャンバーと靴下を持ってきた。
「少し散歩に行ってきます」
「夕飯までには帰るのよ」
「貴方は僕の親ですか」
「違うわよボケ」
その声を最後に靴下を履き、ジャンバーを着て玄関に向かうとすでにドアに手をかけているマラがいた。
共通点探しから一夜明けて今は学校の教室。
つまりは静さんに昨日出された課題を確認されるところだ。
「よし。お前達、共通点は探し出せたか」
「......」
「返事が無いのは肯定と取らせてもらうぞ」
誰も反応せずにただただ静さんを見つめる。なお、ちゃんと後ろで満さんも話を聞いている。
「それじゃ挙手制だ。話し合いもしただろうが、早いものがち。わかったやつは手を挙げろ」
そう言われて一番最初に手を挙げたのは白抜井さんだった。
「お、白抜井」
「この場にいる5人が何かしらの眷属であること。ですか」
「流石だな。だが違う」
「え、他になにかあるんですか!」
「2人はもうすでに気づいてるんじゃないのか」
気づいているぞという目線を他の3人にバレないよう向けてくる。
あくまでも白を切るために首を回すと、同じく白を切ろうとしたのか天納さんと目があった。
そして昨日の手筈通りにやれと目で訴えてくる。
「次はいないのか?」
静さんも次の意見を求めているようだ。
「手を挙げたのは紙雅か」
昨日の約束通りに内容を言う。
「ここにいる5人全員が問題児ということじゃないんですか」
「まあ半分正解だ」
「残りの半分はなんです?」
「最初から理解していたのに天納と2人して共有もせずに他3人を泳がしていたことだな」
「ちょっと待ちなさい。なんで問題児なのあたしたちが」
「ほら、他の教室を見てくださいよ。この教室は5人だけですけど他は少なくても、28人用の椅子がありますよね」
「ええ、詳しい数は知らないけど多分そうね」
「普通5人だけ人が余る状況なんて学校は作りません。それに他クラスや在校生も登校をしていないですし、そうなるとある程度絞れるんですよ」
「問題がある生徒を一箇所に集めてる」
話している途中、最後の最後を天納さんに持っていかれてしまった。
「先生、...それって本当なんですか」
驚きながら雲珠未さんが静さんに真かどうかを聞く。
白抜井さんは...あまり気にしていないようだ。受け入れていたといったほうが正しいのかもしれない。
「本当だ。君たち問題児はだからここにいる。こんな寒い3月にな」
担任の言葉がトドメとなったのか雲珠未さんと村雨さんは固まってしまった。
だが、トドメを刺した本人は気にもとめずに黒板に体を向けて白チョークを持つ。
「固まってるとこ悪いが今から授業だ」
「なにするんです。まだ教科書も開いてませんけど」
「今からするのはそんな座学じゃない。幽鬼力と神力、妖精力についてだ」
「なんですかそれ」
「まずは授業を聞け。満、前に来て適当に今言ったやつの絵を描いてくれ」
「絵ヘタすっけどいいすか」
「構わん」
そうして持っていたチョークは満さん渡り、黒板に3つの絵がかかれた。
お化けと神、クリオネのようなものが三角形を作るように描かれている。
「よし、これはお前たちが持っている力のどれかに当たる力の表記名だ」
「いや急にそんな事を言われても理解が追いつきませんよ」
話の流れについて行けていない僕を差し置いて他の4人はさも常識のような態度で聞き流している。
少なくとも義務教育でこんな教えを説かれたときはない。
「幽鬼力というのは妖怪や呪い、うぶめや幽霊、そんな奴らの力の呼称だ」
「後は名前通りの力だ」
「これらはジャンケンのように力の強弱がある」
黒板には幽鬼力→神力、神力→妖精力、妖精力→幽鬼力と描かれた。
「基本のルールみたいなのはジャンケンと同じだ。だが、圧倒的質量の前では何も意味をなさなくなるから気をつけろよ」
先程から一向に理解できずに話が進んでいく。
要は三種類の力がありジャンケン式での強さ関係ということであっているのだろうか。
「よし、まずは何事も習うより慣れよだ」
そう言った静さんは一旦教室から出ていき、ゴーグルを持って返ってきた。
「これからお前たちには基礎中の基礎。体にこの今言った力を流してもらう」
「力の源はどうするんですか」
「お前にはマラがいるだろう。力を分けてもらうんだよ」
「そんなこと出来るんですか?」
「さあな、私自身も誰かに力を分けたときがないから知らん」
頼りにならないマラを横目に他の4人を見るとすでにできていた。
どうやらまだできていないのは自分だけのようである。
「何かコツとかないんですか」
「俺は生まれつきできたからな」
「私も昔過ぎてよく覚えてません」
コツを聞いてみるがことごとく人に教えるという才が無いらしい。
同年代に求めるというのが間違っているのかもしれないが。
「先生、どうするんですか」
「それは血を巡らせるイメージでやってみろ」
そう言われてマラからの力を体に巡らせるイメージで流す。
すると体中が少し温かくなった。
「お、意外とすぐにできたな。ちなみに力を体に巡らすだけでリウマチ、腰痛、肩こりに効き目があるぞ」
「温泉の効能じゃないんですから」
「それだけ人ならざるモノの力は強大ということよ」
すんなりと主であるマラの力を体に浸透させることができ少しテンションを上げていると直ぐに次のステップへと進む。
「次は体の外に放出してみせろ」
そう言われて体の外に力を放出しようとするがなかなか難しい。
他4人は2人ができて、もう2人はできていなかった。
なお、できているのは白抜井さんと天納さんだ。
「やっぱりここでつまるか。毎年いるんだよな」
「俺の時よりかは良いんじゃないですか。できている人がいて」
「お前のときは一人しかできなかったからな最初」
「しかも嫌味で上から目線でしたしね」
「それは彼女性格だろう」
昔話に花を咲かせる先生方を横目にどうやったらそんなにうまくいくのかを聞いてみる。
「どうしたら放出できるんです?」
「俺の感覚で言うのなら蛇口をひねって放出する感じかな」
「蛇口ですか?」
「そう、手のひらに蛇口をイメージして、水を出す時みたいにするんだ」
その事を聞いて真似をしてみるが一向に体外に放出が出来ることはなかった。
「お前達、サ◯ヤ人みたいにオーラを出す感覚でやったほうが出やすいぞ。後の応用にも使えるからな」
言われた通りにやってみると先程より上手く行っている気はするがそれでも微々たるものだった。
結構手前の段階で詰まってしまっている感覚があるのだが実際のところどうなのだろうか。
「まぁ、気長に慣れていけばいい。最長だと2週間かかったやつもいるからな」
「2週間ですか...」
長いのか短いのか微妙な期間だ。
2人を見るにそれだけ個人差があるということだろう。
「じゃ、次の課題は力の体外への放出だな」
「先生、これが終わっている人は何をすればいいんですか」
「それができた力の物質化だな」
「物質化?」
「力を見える化するとも言うな。手本としてだが、このようにナイフからメガネ、はたまた家の鍵を作り出すことも出来る」
先生の手のひらからは無から生成されたナイフにメガネ、次に鍵へと形状を変化させる。
粘土のような感じなのだろうか。
その後も授業は続いて気がつけば日が沈みかけていた。
...完全に寝ていた気がする。
周りを見てもクラスメイトの姿はなく教室には自分だけが残っている状態だった。
教室にはただカタカタとキーボードを打鍵する音が響いていた。
音のする方を見てみるとそこでは静さんが教卓で何かぶつぶつと言いながらキーボードを叩いている。
「何やってるんですか静さん」
「あ、起きたのか。この不良生徒が。二日目から寝るなんてのはお前で二人目だ」
「もう一人はだれなんです」
「満のやつだ」
「類は友を呼ぶって本当だったんですね」
「全く、笑い事ではない」
「それで彼は」
「あいつなら仕事に行った」
「なら静さんは何してるんです」
「お前が起きるのを待ってたんだよ。私が鍵担当だからな」
「すいません、早く帰ります」
「おう。そうしろ」
そう言って急いで帰る支度をして教室を出た。
今回も遅れてしまいました。申し訳ございません。
インフルであまり書けていませんでした。
来週は少し用事があるので挙げられないと思います。すみません。




