第14話 共通点
朝通った道を昼頃に帰れる。学生としてこんなにうれしいことはないだろう。
カバンを背負い手が冷たいのでズボンのポケットに手を入れて歩く。
その横、というか上でマラは僕の頭の毛をいじっていた。
ちなみに、マラは温度というのに鈍いらしい。真冬の氷点下のときでも普通に外で雪遊びをしていた。つきあわされた身としてはとても寒かった。
これがマラ特有のものなのか、他の迦微も一緒なのかは知らない。
「そういえば、マラは僕とあの四人の共通点がなにかわかりますか?」
「どうしたんだ急に」
帰り道を無言で歩いていたためか、マラが少し驚いた反応を見せる。
感覚としては、あまり共通点のない人から話しかけられたようなものだろうか。
「学校の課題で明日までに共通点を探してこいと言われたんです」
「普通に全員が初対面みたいなことじゃないのか」
「そんなトンチのような回答ではないかと」
「学生というはのいつになっても面倒だな」
「それは他に遊び相手がいなくて、僕との時間が減っているからですか」
「そうだ。だからいつも私にかまえ」
「洋犬の相手をするのは嫌です」
自分より上の存在に対して洋犬と比喩するのは不敬だろうか?まぁ、相手がマラならばいいだろう。
すると頬をフグのように膨らませて進行方向を妨げる。実際は紙に隠れて顔が見られないが、多分そんなかんじだろう。
「そろそろ紙で覆い隠している素顔で見せてくれませんかね」
「駄目だ」
「理由は」
「それは言えない」
小中学、ずっと紙で顔を隠していたマラの素顔は一度も見たことがない。
興味が湧いてめくろうとしたことがあったが、触ることができなかった。実態がないみたいな感じだ。
ただ視覚では認識ができる。
マラ曰く、心の距離的なものらしいが、いかんせん本人が自称をしているだけなので半信半疑だ。
「話を戻しますけど、僕達を見ていて心当たりはありますか」
「心当たりはないが、お前たち5人は面倒そうな奴が多いぞ」
「その中に僕は入っていますか」
「当たり前だろう」
自然に肯定をされた。
自分としては面倒なことを起こしたり、はしていないと思うのだが。
「確かに面倒なことは起こしてはいないな」
「ナチュラルに脳内を除くのやめてもらえます。怖いので」
僕の発言を聞き入れたのか入れていないかマラはそこで口を閉じた。
急にこんな事をするのは本当にやめてほしい。
理由があるわけではないが、精神的疲労が溜まやりやすくなるとでも言っておこう。
「だが、結果的には面倒なやつになっていると思うぞ」
「結果的問題児というわけですか」
確かに考えてみれば、自分含め他の三人も大概おかしい。
一人は会って数時間の男の部屋に無断で入る者、テストで人を殺すような行動をとる者、取っ組み合いで相手の腕を折ろうとしたり人に蔑むような目線を向ける者、相手の名前を知りたがらず周囲を困らせる者。
こうして考えてみると、雲珠未さん以外いろいろと問題ごとを起こしている。
「じゃぁそれを明日言ってみようと思います」
「いや、この後の話し合いで言ったらどうだ」
「多分、天納さん以外は否定するのでいいです」
「なんでそんな事がわかる」
「彼女曰く全知なのでもう答えを知っている可能性が高いのと、多分この考えが一番静さんのような人が考えそうなことだなと」
「あー、確かに。あって数日の私たちが言うのも何だが、それはあっている気がするぞ」
近くには田んぼ、遠くにはいくつかの建物が見える道を歩きながらマラと会話をする。
自分以外の通行者は誰もいない。車もあまり通らない。
何も知らない町で自分一人しかいない状態になると何かこう変な感じになる。
目に映るものが全て自分の一部であるかのような、そんな錯覚を起こすのだ。
「でも天納以外は何で否定するんだ?」
「簡単な話ですよ。人は自分の悪い部分に目を向けるのは嫌がりますから。見たとて否定するだけですよ」
「そんなものか?お前はあいつらの、というか人のどこを見て言っているんだ?」
「最低値」
そんな会話をしながら体を歩き進めていると、まだ見慣れない家が見えてくる。
外から見ると自分たちが住んでいる家は意外と大きいらしい。
そして今更だが、未成年の男女を一緒に住まわせているのはどうなんだと思う。
健全な男子高生と女子高生。
面倒なことがおこるしかないような字面だ。
正直、そういう面倒事は嫌なので個別にしてもらいたかった。
「もうすぐ家だぞ」
「そうですね。今気づいたんですけど、とく何もやることがないです」
「よぉーし、なら私とゲームでもしよう」
「何のゲームですか」
「鬼ごっことか?」
「小学生じゃないんですから。あと何故に疑問形」
冬とも春とも言えない季節の間で、太陽が雲と入れ替わりながら光を自分たちに注がせる。
風が体当たりをしてきて服がなびく。
平日の昼だと言うのにどこか活気というものがあまり感じられない。
それは前の町での感覚がまだ残っているからだろうか。
マラが宙で自分の髪を指でくるくるとまきながら暇をつぶしている。
ちょっと立ち止まって後ろを振り返ってみると、あの四人のどれかに当てはまりそうなシルエットが小さく見える。
「よし決めた。おい、千明、散歩するぞ」
「散歩ですか?」
まだ家にもついていないというのに再び外出するのは気が引ける。
私的には家の中でまったりとしていのだが。
「ここらへんの土地になれるまで毎日の日課だ」
「...毎日は無理ですけどたまになら良いですよ」
そんな会話をしながら家の玄関までやってきたのでバックから鍵を取り出す。
鍵は2つあるらしく、その一個を学校で鍵をもらってきておいたのだ。
なお、今日の最後は雲珠未さんだったらしい。
多分、このルームシェアの中では一番の常識人のような気がする。
鍵を穴に入れて回すとカチャッという音がなりロックが取れた音がなった。
扉を引いて中に入ると、勿論あの4人の靴はない。
純粋に疑問なのだが、何故あんなに登下校というものに時間をかけることができるのだろうか?。目的地と道のりは同じのはずなのに。
「家と言うにはまだこの玄関からの背景は慣れないな」
「まだ数回しか使ってない玄関に慣れるほうが、多分すごいだろ。私はそんなのも気になったこともないから何も言えないが」
たまに自分とマラの感覚に差があるなと感じるのは個々のものなのか、もしくは次元の違いによるものなのか...どちらにせよ感じ方もそれぞれということだ。
靴を脱いで揃え、そのまま2階へと上がる。
自分の机にカバンと上着を置いてそのまま布団へとダイブ、をせず手と手を合わせてを伸びをする。
初日の学校、慣れない環境での生活ということで変な力が入っていたので、筋肉が適度にほぐれて気持ちがいい。
制服から私服に着替えて身軽になる。
時間を確認すると、ちょうど正午を回るところだった。
「マラ、昼飯を作るけど何が良い?参考程度に聞いておくぞ」
「そば!!」
「食料庫にあれば作るけど、多分昼は炒飯になりそうです」
「あいつらの分も作るのか?」
「一応そのつもりでいます」
引き出しの中から適度に使い古されたエプロンを取り出す。
自分の部屋から出て、階段を降りながらエプロンを着る。
1階に降りてトイレに行ってから台所へと入る。
手を洗い、朝の残りのご飯の量を確認すると、だいたい5人分の米飯があった。
どうやら1人分が足りないので、これはマラだけそばになるようだ。
「先に炒飯の方を作りますか」
誰もいない台所とリビングに一人の人間の呟きが響いて浸透する。
恩を売るつもりはないけれど、あの4人と暮らすならこのくらいはやっておいたほうが良いだろう。
まずは基本というのもおこがましい手洗いをする。
包丁で食材を切り、フライパンに胡麻油を敷いて肉と野菜を中火で焼いていく。
程よく肉の色が茶色になったら少し強めの中火にして卵、ご飯の順に入れて混ぜていく。
味付けは...市販の素と塩コショウでいいだろう。
適量を入れて味のムラができないよう弱火で混ぜていく。ここは予熱でも良かったかもしれない。
もうほぼ完成だ。後はお皿に盛るだけ。
少し遅いかもしれないが一応メールでご飯を作ったことを伝えておこう。
そう思いスマホを手に取ってメッセージを送る。
すると、それと同時に玄関の開く音が聞こえた。
遅かったようである。
「ただいまー」
廊下から声が鼓膜を揺らしながらも食器棚から丸いご飯茶碗ひとつと、なんの変哲もない皿を取り出す。
足音がリビングの扉に近づいてきて、扉が開く音が部屋の空気を振動させた。
「おかえりなさい」
「ただいま。まだ慣れないけど貴方もこういうことはするのね」
「村雨さんは僕を何だと思ってるんですか」
「変な奴」
「ド直球で言われるとさすがの僕でも傷つきますよ」
「それに関しては変な貴方が悪いんじゃない。それにしてもいい匂いね」
鼻をひくつかせながらリビングのソファーへと勢いよく座り込む。
ご飯を作っているのだからせめてもうちょっとホコリが飛ばないようにしてほしいものだ。
「今ちょうど炒飯ができたんですよ。食べます?一応5人分ありますけど」
「食べるわ」
「なら制服から着替えてきてください。そういえば他の3人はどうしたんです?」
「あの3人ならもうすぐ着くと思うわ。ちょっと川にいた亀を眺めていただけだから。それじゃ、着替えてくるわね」
「はい。あ、ちゃんと手は洗ってきてくださいよ」
「親みたいなことはいうな」
リビングの扉が閉まり再び一人戻る。
人は孤独に耐えれる生き物ではない。誰かがそういった。
今までほとんど一人でいたというのに人との会話はどこか楽しい。
つくづく自分が一端の人間であることを思う。
「何考えてるんだ俺」
そんな自分の顔を叩く。
変なことを考えながらも手はちゃんと動いており、盛り付けはほぼ終わっていた。
「戻ったはよ」
ガチャリ。
戻ってきた村雨さんの声と玄関の開く音が同時に鳴った。
「疲れたー」
「ただいま帰りました」
「...」
2人の声が聞こえてくるが、天納さんの声は聞こえてこない。
ただ足音の数は3人分だった。
ここだけを切り取れば一般人ではないと感じかもしれないが、やうと思って、慣れれば意外と分かるものである。
「おかえりー。ご飯できてるわよ」
「ありがとうございます。お料理楽しみです」
「品は何?」
「炒飯よ。ほら、香りが漂ってきているでしょ」
「お料理できたんですね」
玄関先で会話をしているようだがドアがひらっき放しなので丸聞こえである。
無論、聞こえるのであって聞いているのではない。
「天納さん、今の私の心が汚いからかもしれないけど、嫌味に聞こえるからやめたほうが良いわよ」
「いや、嫌味なので何の問題もありません」
「自覚あるタイプは面倒ね」
「お二人さん、そこまでそこまで」
マッチで火を起こすような会話を白抜井さんがなだめながら靴を脱いでリビングに入ってくる。後の3人も続いて入ってきた。
因みに今僕はキッチン下で一人用の鍋を探していた。だから姿は見えていないはずだ。
「美味しそうだな」
「そうでしょ」
「これが村雨さんの作った炒飯ですか」
「え、んぅ。まぁね」
「何自分が作ったみたいな雰囲気出してるんですか。作ったのは僕ですよ」
「あ、紙雅さんいらしゃったんですね」
見栄を張ろうとした村雨さんを切り捨てて台所の下から鍋を持って姿を見せる。
村雨さんは少し残念そうに、けれど安堵したような顔をしていた。
「ところで何故鍋を?」
「マラがそばを食べたいと言うので。食料庫にあったので作ろうかと。炒飯も1人分足りないですし」
「意外と優しいんですね」
「天納さん、意外は余計です」
「なら、俺の主の分も作ってくれないか?」
「え、ご飯必要なんですか」
「昨日から何も食べてなくて、ちょっとやつれてるんだよ」
「私もお願いしてもいいですか?」
白抜井さんと雲珠未さんからそう言われる。
念の為に他の二人にも聞いておこう。
「まあ作るのはただですし良いですけど、2人もですか」
「私もそうなるわね」
「よろしく」
つまりはそば5人分らしい。食料の消費が早そうだ。
「わかりました。あ、ご飯食べたら共通点での話でもしますか」
「うん、そうしようか」
「異論なし」
「わかりました」
「わかったわ」
こうして追加5人分の調理とその後の予定が決まった。
それじゃぁ、まずは料理後半戦を初めていこう。
そう心に決めて、そばのある食料庫に足を進めた。
遅くなりました。
すみません。
生活がちょっと忙しいのでこれからも遅れかもしれません。
元から不定期ですけど、基本週一投稿を心がけてます。
長文の後に面倒なのも何なのでそれでは。




