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第13話 違反者には冷たい

 タイマーの音でテストの終了が告げられ皆がステージに集まった。

 静さんは生徒5人を見て満足そうに腕組をとく。

 胸ポケットにしまっているクロマキーのキャップを取り、満さんが準備室から運ん できたホワイトボードにテスト参加者5名の名前を書いていく。


「よし、じゃあこれから結果発表だ。順に名前を呼んでいくからな」

「先生、罰ゲームは何をするんですか」

「それは面倒なものだよ」


 質問をしてちゃんとした答えが帰ってこなかった。

 面倒なものということなのでとりあえず最下位は回避をしておいて良かったと思う。


「天納、まずはお前からだ」

「先生、生徒にお前は良くないと思いますよ。後私はゼロです」

「安心しろ、いつまでも私はこのスタンスだ」


 天納さんの言葉に反応を示しながらホワイトボードにゼロと書き足す。

 意外に思った。

 彼女には、わからなさというものがあるからゼロになることはないと思っていた。

 逆に、わからなさ故にどんな結果になろうと違和感が無い気もする。


「次、雲珠未は何本だ」

「一本です」


 端的にそう言って彼女はペンシルを満さんへと返す。

 会話が飛び交うこともなく雲珠未さんの番は終わった。


「村雨、君は何本だ」

「私もゼロ本です」

「おー、面白くなってきたな」


 棒読みとも取れる覇気のない声でホワイトボードにゼロを書いていく。

 あらかた予想がついたのか、もしくは結果に興味を失ったのか。どちらにせよやる気が少し抜けていた。


「よし、じゃあ結果はわかっている紙雅は飛ばして、白抜井」


 静さんの言ったワンフレーズで3人の視線が集まるが、意には返さない。

 白抜井さんの番だというのに何故か本人もこちらを見ている。


「白抜井さん、貴方の番ですよ」

「あ、あぁ。俺は一本です」

「やっぱりか。これは私の負けだなぁ~」

「なにかしていたんですか」

「...賭け事」


 先生になったことの自分が言うのも何だが、自分の生徒をかけにするのはどうなんだ。と僕は思う。


「で、優勝が決定した紙雅、何本だ」

「7本です」

「つまらないな」

「静さん、俺との賭けに負けたからって機嫌を悪くしないでください」


 満さんが静さんを咎めつつ、ある一人を除いた視線が再び自分の元へと集まった。

 驚きや、怪訝、そういった感情が混ざった顔をしている。


「それじゃぁ何故そんなにペンシルを持つことができたのか説明してもらおう」

「圧迫面接のような威圧感を出さないでくださいよ。貴方も加担したんですから」

 

 僕の一言で視線が静さんの方へと向く。

 そして彼女は相方を売った。


「私だけじゃなくて満もだけどな」

「出来レースというわけですか」


 村雨さんが呆れた声で苦言を呈す。

 出来レースでは無いが、思いつくか、つかないかの違いじゃないだろうか。

 そしてそれを行動にどう移すか。


「出来レースというわけではない。が、発想の問題でもある」

「どういうことですか」


 まだ理解をしていない雲珠未さんを筆頭に他の二人も頭の上にある?が取れていない。逆に、このだいぶふわふわとした会話の中で理解ができたのなら素直に称賛に値するが。

 なお、この三人のようになっていない天納さんは異質と言うか何言えばいいだろうか。どちらにせよ全知と自称をした人は一般人と感覚が違うらしい。

 多分、?が浮かんでいないのは理解をしているからだろう。


「説明してやれ」

「...誰に言ってるんです?」

「お前だよ、紙雅」

「あまり手の内を明かすのは嫌なんですけど」

「つべこべ言うな」


 静さんにそう言われて半ば無理矢理に説明することになった。

 ちなみに、ペンシルが7本だった理由はマラがしっかりと村雨さんと天納さんから盗んでくれたからである。


「まずは最初に配られたペンシルを持って隠れて、予備があると思ったので先生達から4本貰い、後は野放しにしていたマラが二人のものを盗んでくれました」


 とても省略をしながら大まかな事を伝える。

 理解してくれただろうか。


「先生、これは反則にならないんですか」

「無条件なら反則、私たちも審判失格だ。だが、これは何でもありの試験だ」

「そんなのずるいです」


 村雨さんが静さんに抗議をする。基本、こういう状況になった時に正しいの村雨さんのような人たちだろう。

 だけど、静さんは最初に説明したことを繰り返した。


「君たちの状況による対応の仕方を見る。私はそう言ったはずだ」

「だからって、これが許されていい理由にはなりません」

「村雨、私からすると君の発言は負け犬の遠吠えにしか聞こえないぞ」


 静さんにそう言われると村雨さんは一昔前の蒸気機関のような熱を顔に帯びる。

 そこからは羞恥心が勝ったのか、もうこれ以上抗議を立てることはなかった。


「後他に異論反論、抗議申し立てをしたいやつはいるか。なおそれは全て却下するものとする」

「強情ですね。そこまで行くと」


 僕の言葉をスルーして静さんは次の罰ゲームについての説明を始める。

 

「最下位は罰ゲームをすると言ったな」

「二人いますけどその場合はどうなるんです」

「その場合はジャンケンだな。そこの二人、さっさとジャンケンを済ませろ」


 そう言われた二人は手を自分の前に持ってくる。

 天納さんはかけていたメガネを外してジャンケンに挑む。

 何故メガネを外したのだろう。それくらいで勝てるのなら誰でもやっているはずだ。

 細かいことは置いておいて、村雨さんと天納さんのジャンケンを始める。


「ジャンケン」


 結果だけを残すのなら負けたのは天納さんだった。本当にメガネを外した理由は何だったのだろう。



 テストが終わり、制服に着替えなおして教室でボーッとしていると満さんが後ろの扉から入ってきた。

 プリント数枚を手にしながら教卓に立つ。

 窓から入った太陽の光が顔へとかかり眩しそうだ。


「自分の主であるやつの名前をさらせ」


 教師の責任というのが感じ取れないほど不真面目にそう言う。

 今の言葉に僕以外の4人は目で何を言っているんだこいつはと語っていた。

 ちなみに自分はすでにマラが勝手に行動をしているので、説明しなくても良い気がする。本当は名前も何を司るのかも知らないわけだが。

 マラは僕の机と椅子を陣取って堂々と昼寝をしている。


「教師として、生徒同士でも相手の主を把握しておかないと面倒なことになりかねない」


 少し寝癖のある頭を掻きながら理由を言い始めた。

 けれど納得ができないものからは反論が飛んでくる。


「先生、自分の主は秘匿するものだってさっきも言ったじゃないですか」

「まだそんな事を信じてるのか」

「はい?」


 村雨さんは少し怒気をはらんだ声で聞き返す。

 自分の主張を小馬鹿にされた程度でなぜ怒りが湧くのだろう。糖分やカルシウムが足りていないのか、それともストレスが溜まっているのだろうか。

 僕の考えていたことが伝わったのかはたまた偶然か、満さんが僕の思っていた事を口に出した。


「カルシウムと糖分、足りてないのか」

「先生、それは火に油を注いでいるだけかと」


 雲珠未さんが満さんを注意しながら話を前と進ませる。


「あれはまだ子供だったお前たちに説明するための嘘だよ」

「で、本当の理由は何なんですか」

「お前たちのような奴が周りから気味悪がられるのを防ぐためだ」

「あのー、ここにそんな事を一切教わっていない人がいるのですが」

「別に大人になれば気味悪がれるのには慣れるし、自分と同じものが見えているやつには見せてもいいからな」


 スルーをされた。別にどうってことはないのだが話に水を指すのは無視をするようだ。

 まだ日が頂点へと達していない午前11時。まだ肌寒さがのこる教室で白い紙が配られ各々自分の主であるものの名を書きだす。

 僕の場合はマラが何の迦微なのかわからないので白紙のままで放置をする。

 横並びになっている机の中で僕だけが何もしていなかった。


「紙雅、早く書けよ~」

「わからないです」

「わからないってなにが?」

「この場合マラの正体?ってことでいいんですかね」

「あー。お前も俺と似たようなくちか」

「満さんもだったんですか」

「いや、似ているだけだ」


 そう言って何も書かれていない白紙の状態のプリントを教卓から取りに来る。

 他の人達はすでに自分の主の名前を書き終えていた。


「面倒なことになったな。まぁいい」

「おーい。紙雅」


 満さんが僕を見ながら小言を発したとき、教室の扉が開き静さんが入ってきた。


「お前に学級員をやってもらうことにした」

「急な話ですね」

「拒否権はないぞ。お前が了承をしたんだからな」

「あれですか。これで体育館の約束は終わりですね」


 急に僕を学級員に指名したことで他の皆はポカンとしていた。

 脳内処理が追いついた天納さんが静さんへと質問を繰り出す。


「何故彼が学級員なんですか。もう一人のほうが適任では」


 軽くけなされながらも至極真っ当な意見を言ってくれた天納さんに心の中で声援を送り静さんへと向き直る。

 静さんは理由を言うつもりがないのか白を切っていた。


 全員の意識が戻ってから静さんと満さんは今日の最後である授業課題を出してきた。学校初日から宿題があるのは面倒だ。


「明日までこのクラスメイトとの共通点を探してくること」


 そう言い残して教室から二人の大人は出ていく。さり際に、ホームルームはもうこれで終わりだからさっさと帰れよ。と言われた。

 なので今は帰る準備をしている途中だ。

 バックから明日から使うであろう教科書類をあらかた机の中に入れて、来るときよりも軽くなったバックを背負いながら教室を出ようとする。

 すると白抜井さんが声をかけてきて帰り足の僕を妨げた。

 なお、今更であるが僕以外のもう一人の学級員は天納さんである。

 ジャンケンで負けたことにより罰ゲームでそうなってしまった。


「ちょっとまってくれ。今から先生が言っていた俺達の共通点を考えないか?」

「早く帰れと言われたので、そこら辺のカフェ、はあるかは知りませんけど家でなら良いですよ」

「わかった。家でまた言うよ」


 会話が終わり再び手を扉にかけて廊下へと出る。

 まだ冬の終わりぐらいの時期なので教室の温度に慣れた体では少し肌寒かった。

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