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迦微と神と捻くれ者  作者: ユウ
新しい生活
10/14

第10話 自己紹介

「付け足すって何をですか」



 面倒な事を言われやや不機嫌気味に返すと、当の本人はそんなことお構い無しに話を続ける。



「自己紹介で名前だけっていうのも何か寂しいだろう」


「寂しくないですよ。ただ純粋に面倒です」


「君の意見はここで聞いていない。さぁ、さっさと何か付け足したまえ」



 半強制的に会話を切られて数秒の沈黙が続く。


 本当に面倒なので適当なホラでも吹いていいだろうか。



「はぁ、家族以外と話したのはこれで二ヶ月ぶりです」



 半ば棒読みで話し終えて一息つく。


 勿論、マラは家族と言う枠組みに入っている。迦微だが、まぁほぼ家族のようなものだからだ。


 自分の番が終わったので静さんに目配せをすると少し呆れた表情で場を回す。



「じゃあ、次は君だ」


「わっ、私ですか!」



 そう言って少しチョークの付いた指先で紫髪の人物を指す。


 指先から微細な粉が空を舞い消えていった。


 指された人物は自分に回ってくるとは思っていなかったのかあたふたとしている。


 それもそのはず、こういうのは時計回りか、反時計回り、出席番号が定番だと思うが今指されたのは完全にランダムだからだ。



「え、その、雲珠未 清です。...すっ好きなものはらっこです」



 恥ずかしそうにしながらも自己紹介を終える。


 静さんは僕の時のように何かを付け足せということも無く終わった。


 次に静さんが指を指したのは赤黒い髪のツリ目の人物が指された。


 彼女は雲珠未さんのように慌てることも無く、たんたんとした態度で始めた。



「村雨 麟です。昨日はどこかの誰かさんが名前を教えてくれなかったのでとても苦労しました」



 人を斬れるような目線でこちらを見てくる。


 名前を教えなかったからの問題より僕自身の言動の問題だった気もするが、そこは一旦置いておこう。



「ははは。厄介なやつとクラスメイトになったな」


「笑い事ではありません」



 誰かとは明言せず、ただ先程の視線で自分というのはわかる。人のことを名前を挙げずに笑うのは苦手だ。


 もしかすると、その対象が自分だからかもしれないが。



「よし、では男子は最後に取っておこう。ということで君だ」



 次に指されたのは昨日、僕の部屋に勝手に入っていた人物。


 メガネを掛けていて薄緑髪が顔の全容を伝えてはくれない。



「私は天納 椿です。後は一言でしたか。これから少なくとも一年間よろしくお願いします」


「お手本のような挨拶だな。他にはないのか」


「それ以上はパワハラとなりそうですが」


「パワハラが怖くて教師がやれるか」


「では、先生の昨日のツマミはエイヒレです」


「お前、何でそれを......あぁ、あっているよ」



 有無を言わさない態度で自己紹介を終えてとうとう最後となる。


 静さんは指で指すこともなく目くばせだけで最後の人物を指名した。



「最後はお前だ」



 そう言われて最後の人物は少しの緊張をはらみながら自己紹介を初める。



「白抜井 宮で良いのかな。僕はまだよくこの状況を理解はできていなんだけどよろしく頼むよ」



 数秒何もない沈黙がばお支配する。先生も何も言わないし他の人も反応を示さない。


 かく言う自分も何も音を出さない。


 なぜならこの後の現象が見たいからだ。



「何でそこで沈黙になるんですか。これだから最後はいやなんです」


「悪いな。いつも自己紹介の最後はこんなふうになるんだが、毎回の醍醐味なんだ」


「先生も人が悪いんですね」


「人聞きが悪いな、お前も大概だろう」


「僕は僕なのでなんとでも」



 静さんと会話をしながら犠牲となった白抜井さんを憐れんでいると、静さんは教卓で伸びをして出席簿に出席の有無を記入する。


 記入が終わった後はダラーとして、教師が教師でないかのような行動をとっていた。


 学校の校長の挨拶などは不要なのだろうか。



「よーし、体育館にいくぞー」


「急にどしたんですか」


「これから簡単な体力測定だ。面白い事もあるからな」



 そう言って静さんは教卓から降りて教室を出る。


 


「遅れるなよ~」


 


 気の抜けた声で廊下を進み出す。


 自分たちも急いで教室を出てついて行った。


 簡単な説明しかされずついていき体育館に到着する。


 道中の他クラスには人が誰もおらず電気もついていなかった。


 職員室は人がいるかまではわからなかったが電気はついていた。



「先生、説明が少なすぎます。一体何をやるんですか」


「言葉通り体力測定だが」



 村雨さんが静さんに噛みつくと静さんは意に返さずあしらう。


 実際、普通の体力測定なのかもしれない。


 ただ、入学初日にやるのかとか、先程言ってた面白いことは何か、と色々な疑問点はあるが今は置いておこう。



「おい、さっきから何で私のことを無視するんだ」



 マラがほっぺをつねりながらそう問いかけてくる。


 つねる力はさほどだが、ただ回転がかかっているので痛い。



「今は学校です。中学の時に学校では話しかけないって約束したじゃないですか。それに話しかけられても無視すると」


「それは中学の時の話だ。高校では違う」


「屁理屈も程々にしてくださいよ。これから体力測定なので」



 不満顔のマラを無視して体育館のステージ前につくとそこには机があった。


 机の上には全員分のジャージが置かれていてサイズも分けられている。


 自分のサイズを勝手に知られているのは恐怖だが細かいことを気にしてもしょうがないだろう。



「お前達、これに着替えろ。女子は更衣室で、男子は教室で着替えてこい。着替えたら再度ここに集合だ」


「先生、更衣室の場所ってどこにあるんでしょうか」


「そういえばまだ知らないか。私が案内するから女子はついてこい」


「わかりました」



 そう言って去っていた先生と女子を尻目に状況を整理しよう。


 残されたのは自分と白抜井さんで、彼も自分と同じように状況の理解ができていない。



「とりあえず教室で着替えましょうか」


「そうだね、まだ状況が飲み込めていないけどね」



 体育館は2階に位置していて自分たちの教室は4階。つまりは階を跨がなければならない。


 二人の間に会話は無く、終始無言で着替えて体育館へと戻る。


 このときにマラは白抜井と話さないなら私の相手をしろとわめいていたが無視した。



 体育館に着くと女子はまだ来ておらず、逆に昨日ここまで送ってくれた満さんがい


た。



「おはようございます」


「おはようございます。他の方々は」


「女子は静さんはと更衣室に行ったのでそろそろ戻ってくるかと」


「この人は?」


「ああ、白抜井さん。この人は昨日僕をあの家まで送ってくれた満さんです」


「満です。昨日君たちの担任と酒盛りをしていたら副担任になってました」



 唐突なワードに驚きつつも、あの担任ならおかしくないと思い返す。


 そう思い返したとき、体育館の入口から出席簿が投げられた。


 そして顔の真横を通り抜けて体育館の壁へと当たる。顔とは1cmの隙間があったかなかったぐらいだ。



「おい、いま失礼な事を考えてなかったか」


「どうですかね」



 冷や汗を流しながら出席簿が投げられた理由を探す。


 しかし思い当たったフシはなかった。


 そうこうしていると体育館の入口から静さんとジャージに着替えた女子が入ってくる。


 これで全員が集まったので今からやることを伝えられるだろう。


 


「よし、みんな着替えたな。それではまず反復横跳びをやってもらう」



 そう言われて体力測定が始まった。


 シャトルラン、長座体前屈、幅跳び...一番辛かったのは言うまでもないだろう。


 今日の夜は早く布団にでも入ろう。


 ただ、今回の体力測定で全力を出したかと問われればいいえと答えるだろう。


 実際に少し不真面目に体力測定を行っていた。理由は単純で静さんが言っていた面白い事を後に残しているからだ。


 面白い事、その全容がわからないので無駄に体力を使うのは控えた。


 決して中学生の、俺まだ本気出してないから、のような無根拠な自信と余裕を持っているわけではない。


 他の4人は全力でやっていた。素直に羨ましい。


 結果的には男女差もあるが普通の結果に収まった。


 一番運動ができるのは白抜井さん、二番目に同率で雲珠未さんと村雨さん、三番目に僕こと紙雅、最後に天納さんといった感じだ。


 


5人全員が体力測定が終わり5分ぐらい休んでいると、体育館のステージに腰をかけていた静さんが声を発する。


 


「これから君達5人で争い合ってもらう」


「はい?」



 誰かの声が静かな体育館のかで反響する。


 あるいは自分の声だったのかもしれない。


 そんな様子の学生5人を前に教師陣はこの状況を理解しているのかしていなのか、説明を初めた。


 


「今からこの男が持っているペンシル型の発信機を身につけてもらう」


「先生、なぜこのような事をするんです」


「その問いに会えて答えるのだとしたら、君たちの状況による対応の仕方を見ようと思ってな」


「静さん、それは今の問いに対する回答になっていませんよ」


「しょうがないよ、この人はこんなんだから」


「何だ満、こんなんだから...何だ?」


「いえ、なにも」



 とても説明することのできない圧を満さんに与えながら笑顔で彼を見ている。


 今この瞬間に限って言えば静さんは満さんの生殺与奪の権利を所持しているかもしれない。


 


 満さんから5人全員がペンシル型の発信機を持つと静さんは更に詳しくルールの説明を初める。



「今からタイマーを使って十五分をはかる。十五分までに多くのペンシルを持っていた人物が優勝者だ。範囲はこの体育館全体。以上、何か質問はあるか」



 一人の生徒が手を挙げた。



「ペンシル...ペンは奪われたらどうなりますか」



 つまりはペンを奪われた後はどうなるかということだ。その場で脱落となるのか、それとも十五分という時間制限の中で奪い返せばいいのか。


 後者なら大胆に動くこともできるはずだが、前者であれば慎重にたち舞わなければならない。



「大丈夫だ。奪われても奪い返せばペンシルの所有者とみなされる。因みに最後にペンシルを持っていなかった者は罰ゲームがあるからな」


「では、どうやって奪うんです」


「君たちなら簡単だろう。自分の力と、君たちの使えている主の力を使ってだ。これは自分の力をどう使うのかを見るためのテストでもある」


「でも先生、自分の主は秘匿するんじゃないんですか」



 自分の主は秘匿する。


 初耳である。つまり自分はマラという手札がバレた状態でこのテストに挑まなくてはいけないわけだが、不利と言われればそうかも知れない。


 相手の主の力はどんなものかは知らないが、マラができるのは精々、物理干渉と壁をすり抜けることだけだ。


 考えてみると、一日だけだが皆自分の主をおおやけにはしなかった。


 主は秘匿し、秘匿されるもの。その常識がなかった。


 


「同じクラスになるんだ。隠し事は良いが自分の主くらいは知られていても損はないだろ」



 そう言われたことで先程の自分の考えを考え直す。


 ...多分、これなら問題はないだろう。



 全員が一定の距離を取ったあと、満さんがブザーを鳴らす。


 そのブザーと共にテストが始まった。



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