第5話 朱雀 〜チュートリアルクリア〜
「朱雀」
その言葉が発されたとともに周りが暗くなった。
いや、暗くなったのではない。
目の前の炎の塊が明るすぎて周りが暗くなったと錯覚したんだ。
それほどまでに目の前の塊は巨大で明るかった。
そしてそれは、俺を殺すのにも十分すぎるものだった。
しかもその上どんどん大きくなっていっている。
さて、どうしよう?
このままじゃ殺される。
もう一度謝ってみるか
「本当にごめん」
「グルルルル」
だめだ。
全くもって聞こえていない。
さっきもそうだがこいつは怒ったら話が通じない。
いや、こんなけ強い奴がこんなに短気で怒ったら相手殺すって…
もはやサイコパスだなw
って俺の馬鹿!!
そんなこと考えてる場合じゃないだろ。
とりあえず逃げないと。
いやちょっと待てよ。
さっきみたいにコピースキルで打てばいいだけじゃね?
そうじゃん。
さっきだってそれで跳ね返せたし。
俺は向かってくる炎の塊に対して叫ぶ。
「スキル コピー」
《この技は人間にはコピー出来ません》
ふざけるなーーー
やっぱりコピースキルなんてクソじゃないかーーー
なんてって場合じゃない。
とりあえずこの迫り狂う炎どうにかしないと。
その時、ふと『そうださっきペーストしたスキルを使ってみよう』と考えた。
確かスキル名はフレイムだったな
「スキル フレイム」
この言葉を言った瞬間、炎は俺の方へ襲ってきた。
同時にさっきと同様、炎の塊が出てきた。
そして、さっきみたいに押し勝ってくれる、そう思っていたのだが現実はそううまくいかないものだ…
圧倒的な炎の塊は俺の炎を遥かに凌駕する物だった。
もはや敵ではない感じ。
ただなんか、向かい火みたいな原理なのかなんか炎の勢いは少し止まった。
と言っても、もって数秒ってとこだろう。
その間にどうにかしなければ…
しかも、追加でスキルを打ってくる可能性もある。
さてどうしたものか…
その時、俺の腕輪が光だす。
俺は藁にもすがる思いでボタンを押す。
もう時間はない。
説明はゆっくり読めなかった。
ただ、そこには、剣が落ちていた。
おそらく報酬なのだろう。
剣か…
俺は剣を持つ。
もしかしたら、この剣ならあいつにダメージを与えれるかもしれない、そんな希望を持って。
剣とは不思議な物だ。
持つことで自然と俺らへ力を与えてくれる。
しかし、俺がまた真剣を持つなんてな…
なんて考えながら剣を持ったが、結果的にこの判断は正しかった。
剣道部だったこともあって、剣を楽に操れたのだった。
さあ、まずは相手の翼、および手だ。
おそらく、あそこからスキルを出してるのだから。
そして、俺は飛ぶ。
まあ、かっこよく言ってるだけでただジャンプしただけなんだけど…
ただ、前の世界に比べられないくらいジャンプできた。
まあ、それは後で考えようか?
そして俺は剣を手に翼に切り掛かる。
その動きは今まで何度もしてきたものだった。
「小手」
手応えはあった。
まあ、翼は炎っぽいしダメージ入ったか分からないけど
さてどうだろうか。
というか、炎の塊は?
不意にそのことが気になり、後ろを見る。
そこには大きく成長した炎の塊があった。
そして俺は気づく。
もしかして、このスキルって相手に向かって炎を打つスキルではなくて爆弾みたいに爆発させて同心円上に撒き散らすものではないか。
そして、こんなに大きな爆弾なら、ここら一体、何もなくなってしまうのではないか。
もしかして、ここが砂漠になったのもこいつがこれ使ったのかな。
なんて言ってる場合ではなかった。
けど、こいつがこの世界でもトップクラスに強いって言うことは本当だったのだろう。
いきなり名乗ってきて、なんかこの世界について教えてくれてどこか馴れ馴れしくしていたのかもしれない。
それがこのトップクラスのやつのプライドに触れたのかもしれない。
完全に俺が実力を見誤ったせいっぽい。
もはや give up だ。
「キャンセル」
突然聞こえてきた声に俺は驚きを隠せなかった。
同時に目の前の大きな炎はどんどん小さくなっていった。
俺は当然困惑した。
だって俺のこと殺そうとしてきた敵がいきなり矛を収めたんだぞ?
えー、スキルキャンセル界隈?
なわけないよな…
ここ異世界だし…
全く何言ってんだか…
「お前の混乱は全くもってその通りだ。すまなかった」
いや、謝られても…
「先ほどまでの無礼、本当にすまなかった。実は私は貴方の事をずっと試してたんだ」
試してた?
一体どういう事だろうか?
「だから、最初っから、私は本気でこのスキルを打とうとは思っていなかったっていう事だ」
なる…ほど?
つまり俺がどんな奴か試してたって事かな?
確かに、あんな事で自称神が暴れる事はないか。
「その通りだ。転生者っていう事は最初から分かっていた。ただ…な。いや、まあ…ちょっと理由があり、貴方のスキルを見てみたかったんだ。」
ここまできて話さないのは無しだろうと思う。
だが、彼は話す気は無さそうだ…
その時、腕輪が光り出した。
「ちょっとその話後で」
そうマースを止め、俺はボタンを押す。
マースは何か言いかけたが、後でだ。
そこには《クエストクリア》とでていた。
そういえばクエストあったな。
すっかり忘れてた。
俺は画面を押す。
《リワードとしてアイテムボックスを渡します》
ふーむ?なんだこれ?
「それはアイテムボックス。ツールや武器、獣などを保管できるボックスだ」
いや思考読まれるのってなんか嫌だな…
まあ、けどこれが使えるものだって分かった。
うんで、次のクエストは?
《チュートリアルクエストを全てクリアしました。リワードとして???の鍵を渡します。それではこの世界を楽しんでください》
なんだってーーー。
これでクエスト終わり?
チートスキルは?
しかも最後なんかいらん鍵渡された?
「チートスキルとは何だ?」
やっぱり邪魔。
「ごめん、マース。一旦俺の思考読むのやめてくれないか?」
「あ、ああ。分かった」
全く、記憶を読まれたら気が収まらない。
いやーよかった。
これで、何考えてもさっきみたいにはキレられないな。
いや、さっきのはわざとだったのか。
まあ、けどあいつ短気なのは間違いないしな。
俺は少しマースの方を見る。
マースは俺の方を睨みつけて…はいなかった。
全く関係ない方向を向いていたのだ。
つまり、彼は俺の思考を読んでいない、そう言うことなのだろう。
ちょっと頭は悪いけどいいやつなのは間違い無いだろうと思った。
そして俺はマースの体を見る。
赤色に燃えた炎で作られているように見える体…
ん、ちょっと待て。
俺、今さっきあいつを切ったんだよね。
つまり、炎を切ったって言うこと…
俺はふと前世のことを思い出す。
嬉しさと共に。
小説を読んでいただきありがとうございます。
初心者ゆえ誤字、脱字、変な言い回し、話の繰り返しがあると思いますがよろしくお願いします。
面白い、続きを読みたいなど思った方は↓の☆に評価を入れてくれると作者の励みになります。
どうかよろしくお願いします。