アース国 その3
「ナントが落ちました」
ジャンの部下であるアルクが俺らにそう告げた。
途端に周りの空気が変わる。
その原因は…もちろんジャンだった。
「お前、何を言ってるんだ!?ナントはこの国でも有数の都市だぞ。落ちるわけなんてないじゃないか」
その言葉を言っている彼女の言葉は少し動揺しているように見えた。
まあそれも当然だろう。
俺でさえ、目指してた所がなくなったなんて聞いて少しは驚いている。
ましてやジャンにとっては故郷、家族もいるところだ。
そんな反応にもなるだろう。
「残念ながら事実です。ナントは落ちました」
「誰だ、誰によってやられたのだ?」
「それがわからないのです。私が見た怪物は緑色の汚い小人、大きな豚、後は、恐らく伝説のドラゴンと思われるものです」
「ドラゴン?ドラゴンってあの?」
「あのドラゴンです。私もしっかりこの目で見ました」
そうアルクが告げたとたん周りが静まり返る。
そして彼は自分が見てきたことを話し始めた。
ここでは長くなるので割愛するが、主に怪物の話と、ジャンの祖父についてであった。
そして彼は最後に
「おそらく当主様はもう…」
その言葉と同時にジャンの目から涙が落ち始めた。
「そんな、おじいさまが亡くなっただって…」
周り一体が暗い空気に包まれ、静かに感じる。
が、その静寂を破ったのはシュリだった。
「多分、お前が言っているのはドラゴンではないな」
小さな声でアルクに向かって言う。
「貴様、何を言っている。伝説のドラゴンでなければナントが落ちたのも当主様が亡くなられたのも説明がつかないだろ」
その言葉を聞いたアルクが怒りながらシュリに反論する。
少し考えれば当たり前のことだ。
今、そんなことを言う時ではない。
ましてやシュリは人の心を読めたはず。
なのになんで今…
そんなことを考えてる間にもシュリは話を続ける。
「いいか、ドラゴンだったら町一個どころじゃない。国が一つ滅んでもおかしくないだろう。ましてやそいつらは何匹もいたのだろう?そんなのドラゴンなわけがない。ドラゴンとは最強であり、この世界に一体しかいないものなんだぞ。おそらくお前が言うドラゴンとはせいぜいワイバーンのことではないか。それにお前が言っていた怪物もそれぞれゴブリンとオークだろ?」
「ワイバーン、ゴブリン、オーク、あなたはさっきから何を言ってるんですか?未知なる怪物の名前はこれ?何ですかこいつらは?」
ワイバーン、ゴブリン、オーク。
もちろん俺はこいつらに聞き覚えがあった。
そいつらはよく異世界小説などで魔物や敵として忌み嫌われる存在。
特にゴブリンに関しては小説の中では身近にいる魔物の代表例であるはず…なんだけど。
アルクの反応は魔物について何も知らない様子だった。
「はーー、ここまで人間も落ちたのか。貴様の言い方からもしやと思ったがまさか魔物も知らないなんて…」
「魔物!?そいつがおじいさまの仇なのか?」
突然シュリが声を上げる。
その声は今まで聞いたこともないほど大きな声であった。
が、シュリはそれに対して首を振る。
「半分正解、半分不正解だ。魔物とは無限に増殖していくもの。大本を絶たないと何も解決しないのだ」
「では大本を倒せばいいのだな」
それに対してシュリは厳しい声でこう告げたのだ。
「それはつまり`魔王′を倒すってことだぞ!できると思ってるのか?」
その言葉が出た瞬間、ジャンとアルクの表情が変わったのを感じた。
同時にシュリの雰囲気も。
それは僕が出会ったあの時と同じ感じの気迫だった。
「魔王ってあの伝説の魔王か?」
その言葉に静かにうなづくシュリ。
「お前らに魔王を倒せる覚悟はあるのか?」
そうシュリが告げた瞬間、あたりが沈黙する。
が、少しした後、ジャンは顔を上げてシュリに面と向かってこう言った。
「もちろんだ、僕が魔王を倒し、敵を討つ」
その言葉を聞いたシュリの雰囲気は瞬時に低くなった。
「よく言った。ならば我も手伝うとしよう」
あれ俺への相談は?
「さあマスター、行きますよ。前みたいに強くなるための修行を行いましょう!」
終わった。
よみがえるのは悪魔のような記憶。
「思いたったら吉日です。さあここで特訓始めましょうか!」
そう、シュリに押し切られそうになる瞬間、アルクが止めた。
「お待ちください、シュリ様。一度ジャン様を一度アンジェへお連れしたいのです」
「なぜ?」
そうにらみつけるシュリ。
が、アルクも引かなかった。
「騎士団全員が新たなご当主様にいち早く忠誠を誓いたいと願っております。当主様、および騎士団長が亡くなった今、皆の便りはジャン様だけなのです!どうかお願いします」
その言葉にシュリも納得したようだ。
「貴様の言い分は分かった。ならばいち早くアンジェに案内してくれ!」
そうして俺らは進路を変えアンジェに向かうことにしたのだった




