女の嘘その6
そこには、ジャンに刃を突き立てるシュリの姿があった。
「さあ、すべて吐いてもらいますよ」
刃を突き付けながらそんなことを言うシュリ。
そして、その先にはうなだれているジャンがいた。
そして、彼、いや彼女は口を開いた。
「まったくもって降参です。お望み通りすべて話しますよ。ただ、ほかの人には言わないと誓ってください」
そういって手を挙げるジャン。
いまの彼女に敵意はなさそうに見えるが…
「それは先にあなたの話を聞いて判断することです。ちなみに嘘をついていたらすぐわかりますからね」
シュリはそんな彼女に対しても容赦しない。
厳しい言葉でジャンに対してそう言い放ったのだ。
ちょっとシュリさんや、敵意のない人に向けてそれはちょっと厳しいんじゃ…
「甘いです、マスター。この女狐は女ということを隠して私たちに近づいてきたのですよ。もしかしたら、隠したたままマスターに迫って既成事実を作る気だったという可能性も…」
いや、え、シュリさん。
あんた自分で何言ってるかわかってる?
いや、冗談だよなうん。
「シュリは言ったて本気ですよ、マスター。こんなどこの馬の骨かわからない奴なんかにマスターは渡しません」
いやいや、まだ俺16歳!
成人もしてないんだよ?
「そんなこと関係ないです!ねえ、マスター今夜くらいにも」
「ダメに決まってるでしょ」
そう俺は全力で否定する。
やばいシュリが暴走してる。
どうしよう…
「あのー、そろそろ話してもいいですか」
暴走してるシュリをどうしようかと悩んでいた時、ふいにシュリの隣にいるジャンが声を出す。
「うん、ジャン話して」
「まず、シュリさんが言ってることは的外れです。私はそんな目的なんてみじんもないです」
いや、まあそうだよね。
今回はシュリがバカすぎるだけだよ…
「ふん、じゃあなんであなたは自分の性別を隠してるの?普通ならそんなことする必要ないじゃないですか。きっと悪いたくらみを計画してに違いない」
馬鹿と言われたことに対して逆上して、ジャンにきつく当たるシュリ。
なんかジャンがかわいそうになってきたな…
そう思いジャンを見るが。
彼女は冷静にただそこに座っているだけだった
これじゃどっちが勝ったほうかわからないな…
そんなことを考えてるとますます怒り出すシュリ。
「ほら、早く言え。このすかし野郎がよ」
おーい、それ美少女が言っていい言葉じゃないよー
「落ち着いてシュリ。とりあえずジャンの話を聞こう」
そう言ってシュリを落ち着かせようとする。
「いや、けどこいつ…」
シュリは一人でぶつぶつ文句を言っていたが、最終的には
「まあ、マスターがそう言うなら」
と言って納得してくれた。
そうして、やっと落ち着いた状況でジャンが話し始める。
けど、彼女の口から語られた秘密は俺たちのこれからを大きく変えるなんてその時の俺らは知らなかった。
「まず、僕の名前はマリー・ホープ。ホープ家の長女だ」
その時、俺は彼女が最初に言ってた名前についても思い出す。
確か…ジャン・M・ホープだったっけ。
「もう御察しだと思いますが前、名乗った名前のミドルネームのMはここから来たものです」
やっぱりそうだったのかと納得する。
が、それは理由になっていない。
俺は彼女に問いかける。
「それについては分かった。ただなぜ男装してたかの理由になってなくないか」
そういうと彼女は顔をしかめる。
うん、すごく嫌そうだ。
「あのーそれって絶対言わないといけないですか?」
そう聞いてくる。
「そうだよ、さっさと言え。なめたこといってんじゃねえ」
あーあ、隣のシュリちゃんが切れちゃった。
こうなるとどうなるかわからないな。
にしても、さっきから口悪くないか?
俺に対してはそんなことなかったんだけどな…
まあ、彼女にも思うとこはあるんだろうな…
「わかりました。ただ、ほかの人には自分が女だって言わないと約束してくれますか」
そういってくる。
「なめた口きいてんじゃねえ」
はい、まだ暴走中のシュリさんです…
まあ、けど敵意感じないしな。
「わかった約束するよ」
「じゃあ、契約してもらえますか」
そう、彼女が言ってくる。
って、契約って何?
シュリと主従契約を結んだ漢字のことを言うのかな?
「分かったよ」
「本気ですか、マスター。契約を破ると死んでしまうことになりますよ!」
へ?
いやいや、それは話が変わってくるよ。
え、契約破ったら死ぬの?
「契約はお互いの合意のもと神の名によって成り立つもの。契約を破ったりするようならこの世界から消えてしまうのです。また、契約はお互いの同意がなければ解除することもできません」
シュリががそう解説してくれる。
なるほどこの世界では契約は命の次くらいに重要なものなんだな。
迂闊にはできないや。
その時、俺に妙案が浮かび上がった。
「分かった。俺はジャンが女だということは言わないと誓う。その代わりジャンらが僕らに危害を加えないということも誓ってくれないか」
「いいですよ」
そう彼女が納得する。
そして
「フィム」
とつぶやいた。
途端に彼女の手から魔法陣みたいなのが出てきた。
「手をかざしてください」
そうジャンに言われ俺も慌てて手をかざす。
「早くフィムって言ってください!」
そうジャンに言われる。
いや、まあ怒られても仕方がない。
けど、俺、知らないんだって。
「フィム」
そういったらその魔方陣は消えた。
「契約は終わりました。それではなぜ私が男装していたのか、それについて話します」
そう彼女が告げる。
一気に空気が張り詰めた気がした。