女の嘘 その2
「大丈夫ですか?」
そう俺は馬車に声をかける。
護衛の人が命をかけてまで守ろうとした人だ。
おそらくすごい人なのかなっと思ったりする。
そう言えばさっき、少女の声が聞こえたな。
どっかの貴族のご令嬢だったりして。
「いや、おそらく違うと思いますよ」
そうシュリが答える。
あ、そうかシュリは中の人の考えもわかるのか。
「いえ、考えは何かに邪魔されて読めないです。ただ中の人が見えるスキルを使ってるだけです」
え、なにそれ。
えっと、透視できるの?
なんかそれ、男のロマンだな…
「何馬鹿な事考えてるんですか、マスター。ほら、中の人のお出ましですよ」
そうシュリが言った瞬間、馬車の扉が開き始める。
そして中から人が出てくる。
そこには俺が想像してた通りの美少女…なんてではなかった。
そこには顔の整った少年が立っていた。
いわゆるイケメンってやつだ。
羨ましい…
ま、それはともかく、俺は少年の服装を見る。
それはアニメとかの貴族が着るような服装である。
そして、胸に宝石がついていた。
青い宝石だ、前の世界のものでいうとサファイヤみたいな感じ。
年は…俺と同じくらいだろうか?
「助けていただき感謝しますます。」
そう礼儀正しく言ってくる。
「自己紹介をしたいとこですが少し待っていただけないでしょうか」
「分かりました。私たちのことはお気になさらず」
「ありがとうございます」
そう告げて彼はしゃがみ込み、亡くなった護衛達を見る。
もうすでに彼らに息はない。
そんな彼らに彼はさみしそうな表情で呟く。
「私を助けてくれて、守ってくれて本当に本当にありがとう。どうか安らかに眠ってくれ」
その時の彼は心からそう願っているように見えた。
そして同時に確かにこれは家来が命をかけてまで守ろうとするだろうなとも思った。
それほどまでに彼から出る言葉には重みがあった。
「ツール アイテムボックス」
彼の手にアイテムボックスがあった。
そこに護衛の死体が入っていく。
「せめて安らかに葬ろう…」
そうして、全員の護衛の死体が吸い込まれて辺りには何もなくなった時、彼がこちらを振り向く。
「改めて先ほどは助けてくれてありがとう。私の名前はジャン・M・ホープ、ホープ家の長男です。よろしくお願いします」
そう名乗ってきたのである。
にしても年,俺とほぼ変わらないように見えるけどすごく大人っぽく見えるのはなんでだろう?
というかなんか外国人みたいな並びだな。
JFKさんみたい
まあ、けど俺も自己紹介しないとな…
「ジャンさん、初めまして。僕の名前はミズシタ ルイって言います。よろしくお…」
名前を言った瞬間彼の表情が一気に変わる。
あれ俺なんかまずいこと言ったかな。
「今、名前をルイと言いました?」
「へ、あ、はい」
「君、それは王の名前である。そんな名前を付けるなんて王に対しての侮辱と当たるぞ」
え、え、ちょっと待て。
理解が追いつかない。
つまり、王の名前もルイだから同じ名前使ったら侮辱罪に当たるってことか。
「いつもならその場で打首だが…君は僕の命の恩人だ。今は目を瞑っておこう」
あっぶねえ。
普通に殺されるとこだった。
「けど、名前は変えとくべきだ。じゃないといつか殺されるぞ」
肝に銘じておこう…
「そうだ、私は急いで帰らないといけないんだった。ちょっと馬車引き上げるの手伝ってくれない?」
なんか話し方、結構フランクになったな。
けど、こっちのほうがいいや。
「分かった、手伝うよ」
そうして、俺らは馬車を起こそうとするが…それは悲惨な状況だった。
車輪が折れており、馬もいない…もはやこれを馬車と呼んでいいものか疑うレベルだ。
もちろん、こんな状況じゃ帰るなんてとてもできないだろう。
事実彼はさっきからずっと思いつめた顔で悩んでる。
まあ、こんなアクシデント初めてなんだろうな。
俺は彼を誘ってみる。
「あのーもう暗くなってきたし、俺の寝床くる?」
その言葉を聞くと同時に彼の表情が一気に明るくなっていく。
よほどうれしかったのだろうか。
「ありがとう、君は命の恩人だ」
そういいながら彼が近づいてくる
そんな、大げさなとは思ったが、別に安心してくれたならそれでいっかと思い直した。
にしても、と俺は彼の顔を見る。
さらさらとした金髪に少し長いまつ毛、くりっとした目に少し長い鼻。
いやー本当に整った顔立ちだな〜と思う。
あーあ、俺もこんなイケメンに生まれたかったぜ。
「何馬鹿なこと言ってるんですか、マスター。早く寝床に戻りますよ」
シュリがそんなことを言ってくる。
そう言えばシュリのこと紹介していなかったな。
「えーと、ジャン・M・ホープ様」
「ジャンでいいよ。敬語もなしでok」
あ、そう?
貴族っぽいから一応敬語で話しておこうと思ったが…
許可もらったしまあ普通に話す方が楽だしね。
まあ、よくよく考えたらさっきから若干ため口ぽかったし。
「じゃあジャンって呼ばせてもらうね。僕のことはルイで…」
「だから名前は変えなって」
そう突っ込まれてしまった。
「まあ、とりあえず暗くなってきたし、僕たちの寝床、紹介するね」
そうして、俺らは新しい仲間?を連れて寝床へ戻って行った。