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外伝 ある病室にて


ピッピッピ…


部屋に機械の電子音が鳴り響く。

その音は俺、島本健吾の心を不安へと駆り立てさせて行くのには十分なものだった。


「瑠衣…」


目の前の光景に俺は思わず息を呑んだ。

同時に涙が出てくる。

そこにはさっきまで冗談を言いながら楽しく話していた親友がいた。

ただそいつはすっかり変わり果てた姿になっていた。

背中は血で真っ赤に染まっており、足は複雑骨折。

その上、意識は戻っていない。

医者ですらもう…と言っているくらいの状況だ。

はっきり言って生死の境をさまよっている状況と言ってもいいだろう。

そしてそれは素人の俺の目から見てもわかった。

これではもう生き返ることは無・

そこで俺は慌てて頭を振る。

そんなわけはない。

そんなこと信じたくない。

俺はこいつを信じてる。

そう俺はあの時の事を思い出して力強くうなづいた。


『そうだアイツあの時だって…』


あの時、それは俺と瑠衣が出会った日だ。

それはまだ俺らが小学一年生の時だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

彼と初めて出会った日も今日のような大雨だった。

俺、いやこの時は僕だったっけ?

いや、そんなことはどうでもいい。

とにかく俺はあの日もいつも通りに家を出た。

俺の家からの俺らの母校である三田小学校までは歩いて10分くらいかかる。

もちろん小学一年生の頃からやんちゃだった俺がしっかり登校できるはずもなかった。

その日も近所の友達と一緒に鬼ごっこをしながら学校へと向かっていた。

それは俺は鬼となり友達を追い回していた時に起こった。

いつものように友達にタッチしようとした幼い僕には横断歩道が危険なんて思っていなかった。

そして友達が横断歩道を渡って向こうへと言ったのを見て、車が来てるか来てないかなんて確かめずに飛び出そうとした。

そして勢いをつけて足に力を入れた時、グッと後ろから掴まれたのだ。


「危ない」


もちろん僕はいきなり止められたことで躓いてしまった。

慌てて手をついて派手に転ぶのを防ぐ。

そして俺は横断歩道の向こうを見た。

当然そこにはさっきまで追いかけていた友達はいなかった。

俺は怒って止めたやつに向かって大声で言った。


「なんで止めたんだよ。逃げられちゃったじゃないか」


「だって危ないんだもん。横断歩道の時は右、左を見てから手を挙げて渡らないといけないよ」


そう、はっきりと言ってきたんだ。

これが彼との初めての出会いだった。

後から知ったことだがそれは彼の経験から言ってくれたらしい。

しかしその時の僕は逃げられたことで頭いっぱいでその全く知らない人に興味なんてなかった。

なので僕は掴まれてた後ろの手を振り払い横断歩道を渡っていった。

後ろで何か騒いでいるが知ったことが無いと思っていたと思う。

そして僕はその勢いのまま学校の教室へと入った。

そこでさっき追いかけ回していた奴には追いついた。

さあラウンド2だと言わんばかりに僕らは鬼ごっこを続けた。

お互い夢中になっていて、チャイムが鳴ろうが無視してやり続けていた。

しかし不思議な物だ。

先生の気配がした瞬間、教室はシーンと静まり返った。

その時僕は今までなかった隣の場所に机が置かれている事に気づいた。

しかし一年生の俺にはまだそれが何を意味するのかわからなかった。

その時、ガラガラとドアが開いて先生が入ってきた。

そしていつも通り黒板の前で挨拶をし終わった瞬間に言った、先生の言葉に僕らは喜びが隠せなかった。


「えー 突然だけど今日から新しい友達が増えます。入ってきてください」


そして一人の少年が入ってきた瞬間、僕は驚いてしまった。

だって入ってきたやつはさっき俺のことを後ろに引っ張って止めた奴だったからだ。

思わず


「えっ」


と声を出してしまった。

瞬間、教室中の視線が集まる。

うん、恥ずかしい。

そう思った時、先生が


「はい、みんな前向いて。この子の名前は…自分で言えるかな」


それでみんなが前を向いた時、俺の体から力が抜けた。

おそらく見られて緊張していたのだろう。

ま、この時は緊張なんて理解できてなかったけど。

そして彼は自己紹介を始めた。


「僕の名前は水下 瑠衣です。よろしくお願いします」


「って事でみんな仲良くしてやってな。席は浅尾の横だ」


そこで初めて俺は隣になぜ机が置いてあったのか理解した。

そして瑠衣が席につき、朝礼は終わった。

それが終わった後、僕は瑠衣に話しかけた。


「なあ…」


その時、俺が何を言ったのか俺は覚えていない。

しかし、その言葉を聞いた時の彼の笑顔をこれからも忘れることはないだろう、と思ったことは覚えている。

それほど、彼の笑顔が満足そうだったからだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



これが瑠衣と出会った日の事だ。

その放課後知った事だが、彼は僕の家の隣に引っ越してきていたらしい。

そんな事もあって、僕らはすぐ友達になった。

そして年が経つにつれて、僕らは親友となっていった。

そんな訳で俺は瑠衣のことを世界で一番知っていると思っている。

もちろん彼の過去も…

だからこそ俺はあいつがすごい奴ということが言える。

そう、そうだ。

俺は世界で唯一、瑠衣が実はすごい奴だって知っている。

いやすごい物なんかじゃない、あいつは全てにおいて天才だ。

例えば、剣道。

あいつの剣道の腕は俺なんかじゃ叶わないくらいにすごいのだ。

だがなぜか、あいつはいつも何にもないとこでつまずいて、俺に隙を与えてくる。

そして、俺がそこをついて、いつも勝利してしまうのだ。

他にも、大会とかでも、前日、熱が出たーとか蛇に噛まれたーとかトラブルばっか。

平和に当日を迎えられた日でも、あいつが乗っているバスが遅れたり、あいつの持ち物が盗まれたりと…

とにかく運が悪いのだ。

だからなのか、瑠衣がすごい奴だと言うことを周りも知らない。

瑠衣も自覚していない。

そんな瑠衣に俺は少しもどかしく思っていた。

だから発破をかけたり、一緒の部活に誘ったりしたのだが、あの時の笑顔、そしてあいつの本気を見れたことはなかった。

ただいつの日かまたあの笑顔を見れる日は来るだろう軽く思っていたのに…

俺はもう一度瑠衣の方を見る。

依然、彼はピクリとも動かず、目も閉じたままだった。


「なあ、戻ってきてくれよ」


絞り出した言葉にも、彼の顔に落ちた涙にも、彼は反応してくれなかった。


そして、俺はその部屋を出た。

心にぽっかり穴が空いたように感じる。

それと同時に犯人に対しての憎悪が更に強まった。


「なぜ、瑠衣をこんなんにしたんだよ」


そこが病院だと言うことを忘れて俺は叫んでしまった。

すぐに我に返ってやっちまったとは思ったが後悔はなかった。

その時待合室の方から聞き覚えのある地名が聞こえてきた。

僕は慌てて待合室の方へ向かう。

そこにはさっきまで瑠衣といた場所が映っていた。

しかしそこはさっきまでの景色とはまるで変わっていた。

僕らがいた交差点には警察官が多くおり封鎖されていた。

そのすぐ奥の駅前バスターミナルがあったところの方に関しては、バス停などの建物なんて立っていなかった。

アナウンサーがその前で話し始める。




「えーニュースです。春斗市、高区、 天原駅で大規模な事件が発生しました。

午後五時ごろ、『車が爆発した』と駅員から警察に通報が入りました。

警察によりますと犯人はそこに来るまでに来るまで多くの人を引き、そしてバスターミナルの多くの人がいる所で自ら爆弾に引火したと見られています。

すでに63人の死亡が確認されており、戦後最大、最悪の殺人事件になりそうです。

また、3人が重体、数百人が軽傷を負ったとの事です」


そうなのだ。

犯人は瑠衣などを引いた後、すぐにバスターミナルの方で爆弾を爆発させたのだ。

許せるわけもない。

俺はそのニュースに犯人の素性が気になった


「警察の調査によると犯人は車の中で全身を強く打った状態で発見されました。

警察は犯人の身元解明を急いでいます。」


くっそ、まだ身元も分かってないのかよ。

俺はその言葉にもどかしく思った。

その時、ニュースキャスターがいきなり声音を変えて放送し始めた。


「速報です。警察が犯人の遺書を見つけたと発表しました。

警察によりますと遺書で犯人は不死 亜流と名乗っており、世間全員が憎いなど無差別殺人だったとわかることが書かれていたほか、他の人みたいに生きたかったや、過去に戻りたいなど、自分に対する深い後悔なども書かれていた模様です」


その言葉を聞いた瞬間、俺の体の中からブチという音が鳴った気がした。

全身の血液が沸騰しているように感じる。

人というのはどうしようもないくらいの怒りが湧き上がった時にはこう言うふうになるんだと思う。

それほどまでにこの犯人に対しての怒りが込み上げてきたのだった。

まず、名前からしてふざけてる。

誰が不死だって?

ああ?

ふざけ上がって。

そして俺は瑠衣のところに戻り、彼に対して


「絶対あんな奴に負けずに返ってこいよ」

と言った。

それは瑠衣の今の状況では難しい事だろう。

医者がもう無理です、と言ってしまっているくらいの状況だ。

それでも俺はこんな奴に負けてほしくなかった。

こんなこと言う奴に…

その時、瑠衣の顔が微かに揺れたように見えた。

それが錯覚だったのかもしれないし、ただ少し床が揺れただけだったのかもしれない。

それでも俺はそれを瑠衣の意思だと思った。

その時、俺は瑠衣は絶対生き返って来ると確信したのだった。



小説を読んでいただきありがとうございます。

初心者ゆえ誤字、脱字、変な言い回し、話の繰り返しがあると思いますがよろしくお願いします。


面白い、続きを読みたいなど思った方は↓の☆に評価を入れてくれると作者の励みになります。


どうかよろしくお願いします。

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