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婚約破棄され追放されましたが、監視役のS級冒険者と恋に落ちました。

作者: そらら

「ミリアナ様、あなたもずいぶんと大変な人生を歩んでおられるのですね」

 

「あらそう? ライアートこそ、冒険者として人生のほとんどは魔物との死闘だったんじゃない?」

 

 今俺が話しているのは、公爵家の令嬢ミリアナ・エルディンガー。


 俺はどうやら面倒ごとに巻き込まれたらしい。


 この令嬢は今、俺が監視しているのだから。

 

 遡ること数日前、S級冒険者である俺は王城に呼び出された。

 

「一体どうされましたか、第一王子、ルーカス・エルドリア様」

 

 俺は王城の謁見の間にいた。

 

 目の前には、この国の第一王子であるルーカス・エルドリア様がいる。

 

「お前に俺の婚約者である、ミリアナ・エルディンガーを監視してもらいたい」

 

「はい!? 一体どういうことです?」

 

 ミリアナは公爵令嬢だ。そして第一王子と婚約関係にある。


 なぜ俺が監視しなければならないのだ?


  俺は、片膝をついて頭を下げる。

 

 しかし王族の命令ならば、従わなくてはならない。


 たとえそれが訳のわからない命令だとしても。

 

 俺は顔をあげる。


 王子がいつになく厳しい顔つきでこちらを見ている。

 

「俺はあいつと婚約破棄をしたいのだ。だがミリアナの父である宰相、デュロワ・エルドリアがお許しにならなくてな。婚約破棄をする場合条件が必要と言われたのだ」

 

 王族と公爵家の婚姻だ。


 それなのにミリアナの父、デュロワ様は反対しているのか?

 

「条件とは?」

 

「数ヵ月、ミリアナを監視して更生しなければ、婚約破棄を認めてくれるらしい」

 

「なぜ更生の話になるんですか? 殿下は公爵の令嬢と何かありましたか」

 

 一体どういうことだ?


  彼女は公爵家の令嬢だぞ。更生するも何も、罪を犯すはずがないだろう。

 

「奴は悪役令嬢そのものだ。奴といると、俺の評判まで落ちてしまう」

 

「ではどなたと婚約を」

 

「奴より優秀で聖女の素質がある、平民出身のセレーヌだ。 セレーヌ、こっちに来なさい」

 

 すると近くにいたセレーヌが、王子の横に並ぶ。

 

「ルイス様、私はミリアナが更生するはずがありません。婚約破棄には賛成です」

 

「ああ、奴が更生するわけがない。」

 

 更生って言ってもなあ。


 人間そう簡単には変わらないだろうな。

 

「まあ監視はします。ですが、更生しなかった場合はどうなさるのですか?」

 

 そもそも婚約破棄しようって時点で終わってる気がするけどな。

 

「修道院行きだ、爵位も剥奪してな」

 

 それってつまり追放ってことですよね。貴族社会も大変だ。

 





 

 てな感じで、俺は今馬車でミリアナを修道院まで監視中だ。


 正直、今の所悪役っぽいことはしていない。


 まあ俺が見ていると言え、公爵家令嬢という高貴なお方だ、怪しい真似はしないか。

 

「私はね、正直上下関係に疲れてたのよ。でもやっと自由になれた」

 

 ミリアナはこちらを見てにこっと微笑む。


 その笑顔は、とても美しくて、まるで女神のようだった。

 

「笑顔が素敵ですね」

 

「え!?」

 

 ミリアナは微笑みから一変、ぱあっと顔が輝いた。

 

 なんて可愛いのだ。思わず胸が高鳴るのを感じる。


 慌てて咳払いをして誤魔化す。

 

 なんかお互いの話題がなくなって、沈黙が流れる。

 

「ミリアナ様、お腹は空いてますか? 近くに町があります」

 

「空いてるわ」

 

 俺は馬車を止めて御者に伝えると、ミリアナと一緒に馬車を降りた。


 まあ時間的にはちょうどいいぐらいだな。


 俺も腹が減ってきたところだし。

 

「なんておいしいの!」

 

 ミリアナは夢中になってチョコレートケーキを頰張っている。


 みとれているのか、口の周りを汚してしまっているようだが。


 俺はハンカチを取り出して口を拭ってやる。


 するとミリアナの顔はリンゴのように真っ赤になった。


 俺はついからかいたくなってしまう。

 

「貴族なんだから、もっとおいしいものを食べられるでしょう?」

 

「確かに食べられるけど......気を遣わないで食事をとりたいのよ」

 

「大変ですね、令嬢も」

 

 そしてミリアナはあっという間に食べ終えてしまった。


 淑女らしくない姿だ。

 

 令嬢の姿ではなく、まるで子供のように笑っている。


 食べている姿さえ可愛らしい。


 どうやら甘いものに目がないようで、次はどのケーキを頼もうか迷っていたようだった。


 思わず笑ってしまうとミリアナがこちらを睨むように見るので、俺は咳払いして誤魔化した。

 

 俺らは食事を終えた後、馬車まで戻る途中、何やら騒ぎが聞こえた。


 男が何かを騒いでいるようだ。

 

 すると男たちは道行く女性たちを捕まえて、馬車に連れ込んでいるようだ。


 女性は悲鳴をあげているようだが、恐怖で怯えてしまっているようで全く抵抗できていない。


 周りの人たちは巻き込まれないようにしているのか、誰も助けようとしない。

 

「やめなさい!」

 

 ミリアナが男たちに声をかけると、男たちのリーダーらしき男はこちらを振り返った。


 その顔はニタニタと気持ち悪く笑っている。

 

「おお良い女じゃねえか! こいつも連れて行くか」

 

 男はそう言うが、ミリアナは怯えるどころか、真っ直ぐに男たちを見つめている。


 それは決して目をそらせないような強い意志を持った瞳に変わった。

 

「ミリアナ様は、本当に悪役令嬢なんですかね?」

 

 正直、彼女は俺の中で悪役令嬢というより、女神のように見えた。


 こんなまっすぐな目と優しい気持ちを持つ聖女みたいな女を、悪女と呼ぶとは到底思えない。

 

「さあね? ライアートはどっちだと思う?」

 

 俺に聞かれてもなあ。どっちかなんてわからない。


 俺は無言のまま男に歩み寄る。

 

 すると俺の姿に気が付いたようで、女たちを捕まえていた男が俺の方を振り向く。

 

「て、てめぇまさか!? 王国最強の冒険者、ライアートか!? どうしてこんなところに!」

 

「令嬢の護衛みたいなもんだ、それよりも」

 

 俺は右手を広げると、大きな炎を出す。


 男が悲鳴を上げて逃げ去ってしまう。


 パニックになって慌てふためいてやがるな。


 仕方ない、いっちょやりますか。


 俺は奴らを倒すと、女性たちは歓声をあげた。


 ミリアナも嬉しそうに微笑んでいるが、どこか寂しそうな顔をしているようにも見えた。

 

 その後、俺らは馬車に乗り、町を出た。


 そして俺が御者を交代すると言ったのだが、ミリアナが話し相手をしろと言ってきたので、俺は話すことにした。

 

「王城でなんかあったのか?」

 

「色々とね、それにあんな王子とは婚約なんてしたくないし」

 

「婚約したくない!? なんで?」

 

 彼女ならもっと良い相手を選べたはずだ。


 しかし彼女はこちらを見ると、微笑む。

 

「私は王子なんかよりも、この国を魔物から守ってくれてる、冒険者の方が好きよ」

 

「それは......嬉しいな」

 

 それからも俺はミリアナと他愛のない話をした。


 彼女は俺の話に興味津々で、楽しそうに聞いてくれた。

 

 俺が冒険の話をすると、目をキラキラさせて喜んでいる。


 俺が冒険者になろうと思ったきっかけなどを聞いてきて、なんだか気恥ずかしい気分だったが、彼女の楽しそうな顔は、こちらまで温かい気持ちになった。

 

 やがて夜になると、馬車を止めて野営を始めた。


 幸い今夜は星空が美しく見える満月だったためか、明かりがなくても多少は明るく周りが見えた。


 ミリアナの話によると、こんな風に外で過ごすのも久しぶりらしい。

 

「ねえ、ライアートは数ヵ月監視を任されているんでしょ?」

 

「まあな」

 

 彼女は横になったままこちらを見る。


 彼女の銀色の髪が月に照らされて輝いて見える。


 その瞳はこちらをじっと見据えていた。


 まるで心を見透かされているようで、俺は目を逸らしたくなってしまう。

 

「私は更生してないって伝えておいて」

 

「なんでだよ、どう考えても更生してるだろ」

 

 すると突然風が吹いてきて、木々が音を立てる。


 彼女の銀色の髪が揺れて、深紅の瞳に目を奪われる。


 そう見とれてしまうほど、月明かりに照らされた彼女の姿が美しくて見惚れてしまっていたのだ。

 

「私はもう王子なんかに会いたくないし」

 

 王子が嫌いと言っていた割にはどこか寂しそうな目をしていたな。


 一体どうやったら彼女を元気付けられるだろうか。


 俺は勇気を振り絞って、彼女に声をかける。

 

「だったらさ、俺と一緒に冒険してみるか?」

 

「うん」

 

 えっ……あ、あれ?


  てっきり断られるかと思ったら案外簡単に承諾されたんだが。


 てっきり危険な場所だから嫌だと言うと思っていたが。

 

「私はライアートと冒険したい」

 

 なんだろう、俺の胸がきゅーっと締め付けられるような感覚がした。


 これは病気なのか?


  俺までミリアナのことが好きになっていっている気がするが。

 

「どんな世界でも連れて行ってやるよ、ずっと」

 

 俺がそう言うとミリアナは涙ぐみ、俺に抱き着いてきた。


 あまりに突然のことだったので俺は思わずドキッとしてしまうが、泣かれても困るので頭を撫でてやるのだった。

 

 そして俺は数ヵ月ミリアナを監視し、宰相に話を付けて、ミリアナと世界を冒険するのであった。

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