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《180万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第二章 アカデミーへ

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手紙の行方(6)

私としては、もうほうじ茶飲んで、歯あ磨いて寝たいくらいの気持ちだったが、ユーディットの方は怒りに震えていて

「明日を待ってなどいられません!今すぐ侯爵夫人に報告に行って参ります!」

と言って、寄宿舎を飛び出して行こうとした。


「いや、待ってよ。外は暗いし危ないよ。それに、せっかくお父様に内緒にしていたのに、こんな時間に帰ったらバレるじゃない。」

「バレてもかまいません!というより、侯爵様にも報告して、猛抗議をしてもらうべきです。お嬢様。何か危険があってはいけませんから、お嬢様は部屋の外にはお出にならないでくださいね。殴り合いのケンカでお嬢様に勝てる人など、この寄宿舎内にはいないでしょうが、下手に大けがをさせると後日問題になるかもしれませんから。」

「心配しなくても、私の拳はゴ◯ブ◯と子供を虐待する人間を殺す時しか使わないよ。」

「◯キ◯リを素手で殺すのはおやめください。」

人間はいいのだろうか?


ユーディットが出て行ってだいぶ経った後、コンコンとドアをノックする音がした。

いきなりガチャっと開けて来ないので、エリザベートではないだろう。ユリアの表情に緊張が走った

「開けてもかまいませんか?」

副校長の声だった。

ユリアがドアに駆け寄りドアを開く。

「失礼しますね。」

と言って副校長が入って来た。


「あの場にいた皆さんから話を聞きました。公平に判断したいので、エーレンフロイト嬢の話も聞きたいのです。」

「はあ、わかりました。」

私はお母様に呼び出された事から始まって、ついさっきまでの話を順に話した。副校長は遮る事なく最後まで話を聞いてくれた。


「エーレンフロイト嬢は、関係者をどう処分してほしいと希望していますか?」

そんな事を言われてもなあ。『処分』という意味の重さが、日本とは全然違うのだ。

「誰が一番悪いのかと聞かれたら、手紙を違反だとわかっていて送ってきた男の方達ですよね。でも、別にその人達にどうなってもほしくないです。むしろ罰を与えられたら、ちょっと困るといいますか。」


正直、ルートヴィッヒ王子は、停学になろうと退学になろうとどうでもいい。だいたい、婚約者なんだから、コソコソルール違反をしていないで、手紙くらい家に送って来いよ。と、思うのだ。おまえは、うちの両親に知られたらまずいような内容書いて送って来てたのかよ!

だけど、ジークが罰を受けるのは可哀想な気がするし、コンラートが罰を受けるのはとっても困る。

「アーベルマイヤー嬢の方はどうですか?」

「もし、本当に彼女が第二王子殿下の恋人で、私のせいで引き離されたのなら可哀想だと思いますし、こんな事をした件についても同情します。」

「お優しいのですね。」

「いいえ、どうでもいいんです。彼女が私にとって大事な人だったら本気で叱ります。やり方は間違っていたと思いますから。」

「そうですか。」

「そんな事より、リーシア様は大丈夫でしょうか?コンスタンツェ様がかなり興奮していたので、リーシア様とエイラさんの事が心配です。」

「『そんな事より』ですか。本当にエーレンフロイト嬢は変わっていますね。ほんの少し誇りを傷つけられただけでも大騒ぎする生徒が多いのに。デューリンガー嬢は大丈夫ですよ。アーベルマイヤー嬢の侍女が直ぐにご実家に連絡を入れられて、先程ご家族がアーベルマイヤー嬢を家へ連れて帰られました。アーベルマイヤー嬢には、自主退学を勧告するつもりです。手癖の悪い生徒は、おそらくこれからも騒動を起こすでしょうから。彼女一人の権利や未来を守るより、その他大勢を守る事が教育者には必要なのです。彼女を守るのも立ち直らせるのも、それはご家族の責任ですから。」

「理解しています。」

「男子寄宿舎の方には、二度と女子生徒に手紙を送って来ないよう通告します。生徒も使用人も、次に明らかになった時は厳罰に処します。厨房メイドのマイケはクビにします。本人の為にも王都から離れた方が良いはずです。彼女は平民ですから立場が弱いのです。」

言いたい事はわかる。お金をもらって王子の手紙を盗む片棒を担いだのだ。そして、平民の立場は常に貴族より弱い。


「では、失礼しますね。お二人共ゆっくり休んでください。」

と言って副校長は出て行った。

こうして、行方不明になっていた手紙を巡る騒動は収束した。


次の日の朝。

通常の朝ごはんは、各自の部屋でとるのだが、今日は副校長からお話があるという事で、全員食堂に集合させられた。

食堂に集められた女子生徒達は、もう、みんな昨夜の事を知っていた。

とゆーか。今現在、アグネスとリーシアが大げんか中だった。

正確にはけんかではない。アグネスがリーシアを一方的に怒鳴り回しているのだ。


「同じ部屋なのに気づかない、とかある⁉︎ありえないでしょっ!あなたも、あの女とグルだったんじゃないの!」

リーシアは、うつろな瞳でただ、アグネスの罵声を聞いている。

きっと彼女は、家でも親からの虐待をこんな感じで受け流しているのだろう。怯えたり、口答えをすると状況が悪くなるのだ。


気づかない、という事はじゅーぶんある。と私は思う。

リーシアは打てば響くというタイプではない。良い意味でも悪い意味でもスルー能力が高い。コンスタンツェが何かしていても、気にしないようにしていたのではと思う。

それに、昨日のコンスタンツェの態度からして、リーシアに相談とか協力要請とかしないだろう。コンスタンツェは、リーシアに『コニー様』呼びを許していなかった。それだけでも、二人にはかなりの距離感があった事がわかる。


「アグネス様、やめなさい。私は、手紙が私の物だと言った時の、リーシア様の表情をこの目で見ているの。リーシア様は知らなかったのだと信じてるわ。」

「ベッキーお姉様。」

「そもそも、コンスタンツェ様は自分より身分が下の人を信頼したり、相談をしたりする性格じゃないわ。同じ部屋で暮らしていたからって、話してもらえなければわかるわけがないじゃない。アグネス様だって、同じ伯爵令嬢同士なのだから、何か知っていたのでは、とか言われたら困るでしょう。」

「それは・・。はい。ごめんなさい、お姉様。」

「私にじゃない。リーシア様に謝りなさい。」

「・・ごめんなさい。リーシア様。」


とりあえず、素直なのはアグネスの長所だ。リーシアに対してひどい態度ではあるが、はっきり顔を見て文句を言うだけ、まだマシかもしれない。心の中でそう思っていて、陰口を叩く人間もいるだろう。


正直言って、リーシアが知っていたとしても知らなかったとしても、私はどうでも良い。コンスタンツェの性格や、二人の身分差を考えると、知っていたところで止められたわけがない。リーシアは何も悪くないし、何の責任も義務も無いのだ。

私はリーシアの背中を軽くポンポンとたたき、耳元で囁いた。


「謝られたとしても、許したくなければ許さないでもいいのだからね。」

「・・わた・し。」

リーシアの瞳が途端に涙で潤んだ。


「ほんとに気づかなかったんです。コンスタンツェ様は、男の人にモテるんだなあ、としか思ってなくて。・・私、バカだから。」

「リーシア様はバカじゃないよ。コンスタンツェ様がずるかったの。気づけなかったって、ちゃんとわかってるよ。」

「う・・うぇっ・うっ。」

リーシアはポロポロと涙をこぼし始めた。


そんなリーシア様をふてくされた顔で見るんじゃない、アグネス様!そして、ユリア。なぜ君まで睨むんだ?


「私も気づかなかったんです!」

と、違う子にも突然言われた。コンスタンツェ様の友達・・というか、取り巻きだった子だ。

「本当です。信じてください!」

と言って頭を下げる。この子には何度も

「王子殿下から、お手紙が届かなくて寂しいですわねえ。」

と言われたな。もう今更、どうだっていいけれど。

他にも何人か、何か言いたそうな女の子がいた。全員、コンスタンツェ様の取り巻きだった子達だ。派閥のボスがいなくなって、きっとすごく不安なのだろう。人間関係って、ほんとめんどくさいよなあ。と思う。


副校長が食堂に入って来たので、話は一旦中断になった。

コンスタンツェの事は、副校長は一切話さなかった。

ただ、男子寄宿舎との手紙のやり取りは禁止で、もしも手紙が届いたら、開封せず届け出る事。違反した者は退学処分とする。と発表があった。


コンスタンツェが退学したという話は、翌日噂という形で皆の間を駆け巡った。

理由は、領地で暮らす祖母の体調が悪く側にいて欲しいと祖母が希望したから。というものだった。

もちろん皆、それが言い訳だってわかっているけれど、エリザベート様が

「『あの女』の名前なんて、耳の穢れね。聞きたくないわ。」

と、おっしゃられたので、皆ピタッと噂話をやめた。


エリザベート様がこの反応では王都復帰はもう困難だろう。

彼女とルートヴィッヒ王子との関係もどうなる事やら。

まあ、私の知ったこっちゃないけれど。

ただ、一つほど考える事があった

過去世でも私には、ルートヴィッヒ王子から手紙が来た事はなかった。だから王子は私に関心がないのだろうし、冷たい人だと思っていた。


でも、もしかして。コンスタンツェ様か、もしくは他の誰かが手紙を止めてたんじゃないの?


今回だって、ジーク様が手を回してくれなければ、ずっと手紙の行方はわからないままだった。私は今世でも、王子を冷たい人と思ったままだっただろう。

だからと言って、今更どうしたら良いのかわからないけれど。

今回の事件は、王族絡みの事件なので、お父様もお母様もとりあえず静観する事にしたらしい。もちろんアーベルマイヤー家からの謝罪も無い。ルートヴィッヒ王子がどう考えているかもわからない。

何だかよくわからないまま事件は収束し、コンスタンツェ様のいなくなった寄宿舎は日常を取り戻している。


あ、そういえば、一つ変化した事があったんだった。

エリザベート様にこう言われたのだ。

「今まで私と貴女とあの女が、それぞれ派閥のトップだったから、どちらかを私がひいきして2対1になってはいけないと思っていましたが、今では私と貴女がツートップになったわ。そんな私達が不仲であるかのような印象を与えたら、組織としての運営に問題が生じるので、貴女今度から私を『エリーゼ』と愛称で呼びなさい。私も貴女を『ベッキー』と呼びます。」


私の意思は無視なんでしょうか・・・?


「貴女の派閥の序列五位まで、私をエリーゼ呼びする事を許します。」

「私の派閥の序列五位以内って誰なんですか⁉︎」

「それは、貴女が判断する事です。」


なんか、怖い。カタギの世界じゃない!

とりあえず、ハンドベル仲間から五人イケニエ・・じゃなかった、希望者を募ろう。


そんなふうに毎日を過ごしている中。そのニュースは飛び込んで来た。

「ベッキー様。アカデミーが1ヶ月ほど休みになるそうですよ。」


手紙事件もようやく収束です。

次回で、第二部完結予定です。


ブックマーク、評価ありがとうございます。

とても励みになっています。

読んでくださっている皆さん。いつも本当にありがとうございます。

心から感謝します。

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― 新着の感想 ―
[一言] え?子供を虐待する人間?ハハッ、あれは人型のゴキブリだから叩き潰してもいいんですよ。
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