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親族会議(1)

その日の夜。


緊急親族会議が行われた。


会議のテーマは『ジークルーネの今とこれから』だ。


会議参加者は、私、お父様、お母様、ヨーゼフ、リヒャルト様、コンラート、ノエル伯母様、ライルさん、リナさん、それにシュテルンベルク家の執事のオイゲンさんと侍女長のヨハンナさんだ。

ただ周囲には我が家の侍女長のゾフィー、お母様の護衛騎士のビルギット、私の乳母のユーディット、それに私とジークルーネの友人のユリアがいる。それと何人かシュテルンベルク家の騎士がいる。


もしかしたら五年間、ジークルーネが男装をしてジークレヒトのふりをしていた。という話題が出るかもしれないので、その事実を知っているメンバーだけエーレンフロイトサイドはいてもらっている。

シュテルンベルクの騎士達やノエル伯母様の家族はその事を知らないらしいが、仮にその話題が出ても大丈夫な信頼できる騎士だけを選抜しているのだろう。



ユリアが側でお茶の用意をしたりするのに、他の友人は立ち入り禁止という事にしてしまうと、後々もめる事になるので、時刻は夜だが私は他の友人達を家から追っ払った。


リーシアは、エイラとカレナと一緒に別邸にご飯を作りに行っていて不在なので問題ない。


ミレイには

「今日あった事を大至急、エリーゼ様に報告に行って。」

と頼んだ。情報の補足と護衛の為にアーベラにミレイの付き添いを頼んだ。


コルネとドロテーアは

「デリクさんの所に行って、ブラウンツヴァイクラントの他の王女様の情報が何か入ってないか聞いて来て。その代わり、今日あった事は全部しゃべっていいから。」

と頼んだ。こちらは、ヨアヒムに護衛についてもらった。



ちなみに。


私がジーク様と一緒にハーゲンベックの領地に殴り込みに行ったと知って、お母様の額には青筋が浮かんでいた。


「親族会議が終わったら説教ですからね!」

と言われているので、会議が永遠に終わらなければいいのに。と思っている。



一番最初に口を開いたのは、この場にいる人達の中で一番身分の高いお父様だった。

「ヒルデブラント侯爵令嬢の事で相談があるという事だったけれど。ヒルデブラント家は謎の多い一族だ。五年前の件も実のところ何があったのか僕達はよくわかっていない。それを教えてもらえるのだろうか?そうでなければ、どうしてあげれば良いのかも僕達にはよくわからない。」


「勿論です。」

とコンラートは言った。


「そのつもりで、この手紙をオイゲンに持って来てもらいました。私の話を聞いたうえでジークルーネに力を貸すか、それとも距離をとるかご判断ください。」


そう言ってコンラートは一通の手紙を皆に見せた。誰からの手紙だろう?『コンラート・フォン・シュテルンベルク様へ』と宛名が書いてあるが、私の見た事のない筆跡だった。


「今から話すのは、ヒルデブラント家で五年前に何があったのか?という話です。まず、どうしてそれを私が知っているのかからお話しします。そうでなければ私の話に信憑性がないからです。一言で言うと『ジークレヒト』から五年前の真実を書いた手紙をもらったからです。その手紙がこれです。希望者には後から読んでもらってもけっこうです。

この手紙をもらったのは、ヒンガリーラントに天然痘が流行していた頃です。具体的に言うとヴァイスネーヴェルラントの穀物大臣アルネストロート伯爵夫人とギルベルト・イステルが天然痘が流行するエーレンフロイト領を訪れた時です。伝染病がこれからどういうふうになっていくかわからない。もしかしたら自分も感染して死ぬかもしれない。死んでしまう前に私に本当の事を伝えておきたい。そして妹の事を許して欲しい。そういう書き出しで始まった手紙をギルベルト・イステル経由で渡されました。」


あっ!と思った。


この手紙を書いた『ジークレヒト』は、ジークルーネじゃない。本物のジークレヒト様の方だ。と思った。

ギルベルトと一緒にヴァイスネーヴェルラントに亡命し『ジークハルト』と名乗って、絵本の挿絵画家をしている人だ。


私は五年前に、何があったのかをジークルーネに聞き、その内容を更にコンラートに伝えた。それ以外の情報が何か書いてあるのかな?と思う。

ジークルーネが五年前嘘をついた。とは思いたくなかった。

(ジークルーネが五年前に話した内容は、第二章の『駆け落ちの真相』で紹介しています。もう忘れた。という方は、ぜひ読み返して頂けますとpvが増えて嬉しいです。)



コンラートはまずライルさんとリナさん相手にヒルデブラント家がどういう家門かを説明し始めた。


その内容は(第二章の『ヒルデブラント家』で)エリザベート様が私に話してくださった内容とほぼ同じだった。

七人も王女が降嫁し、三人の王妃を家門から出した。という話は初耳だったが。


そして話はグレーティアを拒否してギルベルトが地下牢に収監されたところまで話が進んだ。


で、確かここで斧を持ったジーク様が突入して来るんだよね。


その時、ちょっと不思議に思った。どうしてジークは斧なんか持っていたのだろう?普段から持ち歩いていたとか、そんなわけないよね。


疑問は間もなく解けた。斧は地下牢に最初から置いてあったのだ。何の為に置いてあったのかは、正直考えたくない・・・。


そして話はどんどんとおぞましいものになっていった。


ギルベルトに会いに来たジークレヒトに、ハーゲンベック子爵夫人の息子は最っっっ悪な要求をしたのだ。


自分と性関係を持つように。と。


そんな要求飲んじゃダメだ!と私は心の中で叫んだ。正直、コンラートの話から耳を塞ぎたかった。でも手がぴくりとも動かなかった。


そして、ジークレヒトはその要求を受け入れてしまった。その後の事をコンラートは淡々と抑揚を込めずに話した。


私は思った。

ジークルーネ様。来たらダメだ。見たらダメだ!お願い来ないで!


だけどジークルーネ様は来てしまった。そして見てしまったのだ。


そして。


ユーフェミオという変態の頭をジークルーネ様は斧で叩き割った。



何て事だ・・・。


どれほどショックだった事だろう。見てしまったジークルーネ様も。見られてしまったジークレヒト様も。


ジークレヒト様は、捕らえられたギルベルトさんに毒を渡し、心中するつもりで地下牢に来た。実際一周目の二人は心中したのだ。死ぬつもりでいたからこそ、残酷な要求をジークレヒトさんは受け入れたのだろう。なのに、まさかジークルーネ様が現れるなんて思いもしなかったに違いない。


ジークルーネ様には共感しかない。ジークレヒトさんは14歳だった。今のヨーゼフと同じ年だったのだ。もしも、ヨーゼフが我が家で働く使用人にそういう目に遭わされたら。私は絶対にその相手を殺す。ためらう事なく殺す。デイムの叙勲式の時、突如現れたゴ◯ブ◯を目にした時のように秒で殺す。


「それって・・ジークルーネ様は罪に問われるの⁉︎」


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