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《155万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第八章 ジークレヒト事件

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ヘレーネの追想(5)(ヘレーネ視点)

オットー様と私は異母姉弟です。


でも、オットー様からもオティーリア様からも姉妹だとは認めてもらえていません。

家ではお二人の事を『様』をつけて呼ぶよう言われていました。正式に養女になった後でも、そうでした。


オットー様がアカデミーに入られる時「話しかけるな」「血の繋がりがある事を人にしゃべるな」と言われました。

そんな事を言っても知ってる人は知っていると思うけれど。と思いましたが、その指示に従いました。


子供であっても醜聞は大好きです。そもそも、名字が同じなのです。私達が姉弟である事はすぐに噂になりました。


私達が姉弟である事が皆に知られると、オットー様は私に嫌がらせをして来るようになりました。なので、できるだけ顔を合わせないよう私はオットー様を避けていました。

そしてある日、オットー様はレベッカ様にガツン!とやられてしまいました。(『新しい家族達・7』での話です。)

その後は、オットー様には無視されるようになりました。


「オットーもいじめられているのよ。」

とエリーゼ様が言われました。


「父親の女性関係が極彩色な事でからかわれているの。それで、いじめて来る奴らにあなたをいじめるよう指示されているのよ。嫌だ、と言ったら自分がいじめられる。だからあなたにちょっかい出して来るわけ。でも、ベッキーににらまれて以来あなたに手が出せなくなってしまって、相当ストレスをためているはずだわ。なので、気をつけなさい。どこかに呼び出されたりしても無視するのよ。あのグループの連中『尻軽の娘は尻軽に決まっている。頼めば簡単にやらせてくれるはずだ』とかアホな事言ってるから。」


ぞっとしました。


それと同時にオットー様も可哀想な人なのだな。と思いました。私もオットー様も父親を選ぶ事はできませんでした。

もっとも、オットー様は私に同情などされたくないと思いますけれど。


なので、12歳の秋。建国祭の直前に

「ヴィンターニッツ様から、建国祭で学校が休みの時お茶会に招待された。おまえも連れて来いって命令だ。だから、学校が休みになったら一緒に行くぞ。」

と言われた時ぞわっとしました。


「私、そんな、お茶会に来て行けるような服を持っていません。」

「嘘つけ!あの怪力女のお茶会に何度も招待されてるの知ってるんだぞ。どうせ、あのクソ親父に何枚も服を買ってもらっているんだろ!」

「・・怪力女って、ベッキー様の事ですか?ベッキー様のお茶会のドレスコードはいつも制服です。服なんかお父様には買ってもらった事はありません。」

「うるさい!おまえの服なんか何着てたって誰も気にしやしねーよ。俺に逆らうな。それと親父やエリザベート様にしゃべるな。しゃべったらおまえただでは済まさないからな!」


どうしよう。と思いました。そんなお茶会行きたくありません。行っても不快な思いしかしないのは目に見えています。


何とか断る方法はないかしら?と思いつつ選択授業を受けているとベッキー様に授業の後声をかけられました。


「どうしたの?顔色が悪いわ。何か悩み事?悩んでいるなら相談に乗るよ。解決できるかどうかはわからないけど、誰かに話すだけで気が楽になるかもしれないでしょ。」


そう言ってもらえて私はじんと来ました。

そして、行きたくないお茶会に誘われていると話しました。


「そうかー。建国祭の間。私は別邸に引きこもって一歩も外に出るな。と言われているのだけど。」

ベッキー様はつい最近、シュテルンベルク家のお屋敷を訪問して毒殺されかけて、なのでどこの家にも今は出かけてはいけないと言われているのだそうです。


「別邸の森に、栗と胡桃とリンゴが鈴なりになっているのだよね。だから、孤児院の子供達を招いて、栗拾いやリンゴ狩りをしようかと思っているの。」

「そうなのですか。」

「で、ちっちゃい子供達が、森の奥深くに迷い込まないようにとか、湖に転がり落ちないようにとか見守る大人が必要なんだよね。ヘレン様、手伝ってくれない?建国祭の間ずっと私と一緒に別邸に泊まり込んでさ。弟君おとうとくんには、私が言ってあげるからさ。」


侯爵令嬢であられるベッキー様が言ってくだされば、オットー様だろうとヴィンターニッツ様だろうと逆らう事はできません。しかも用件は、遊びではなく孤児院の子供達に対する奉仕活動です。尚更文句を言う事はできないはずです。


「ありがとうございます!ぜひ行かせてください。」

と私は言いました。

『寄らば大樹の陰』という諺もありますが、身分の高い方に庇護してもらうって、こんなにも安心な事なのだ。と嬉しくて泣きそうになりました。


ベッキー様がすぐさまアカデミーの中等部中に情報を流しましたので、オットー様達の耳にもこの話は入りました。

そして情報はミレイ様やリーシア様の耳にも入り

「私も行きたいーっ!」

とお二人は言われました。


オットー様は

「困るんだよ!何とか理由をつけて断れよ!」

と怒りましたが

「侯爵令嬢のご命令には逆らえません。それに嘘をついて断って、ヴィンターニッツ様のお茶会に行った事がバレたらヴィンターニッツ様のご迷惑になるはずです。」

と答えました。

「どうしてもと言うのなら、オットー様からベッキー様におっしゃってください。」

と言ったらオットー様は黙ってしまいました。




その時のお茶会の主宰がヴィンターニッツ様で、エーベルリン様やルイトボルト様もおられました。

そのお茶会に行かなくて良かったと。心から思います。行っていればおぞましい事になっていたかもしれません。


そう考えていたところ、ドアをノックする音が聞こえて来ました。

「はい。」

と返事をすると

「夕方の散歩のお時間です。」

と、司法省の方が声をかけてくださいました。ずっと部屋にこもっていると足が弱くなってしまうので、一日二回、朝と夕に散歩の時間があるのです。


「それと、今日の分のお手紙です。」

と言ってたくさんの封筒を渡してくださいました。


「ありがとうございます。」

今は、弁護士以外の方との面会は禁止です。でも手紙のやり取りはできます。なので、毎日ベッキー様やミレイ様達がお手紙を届けてくれるのです。

ただ、手紙の内容は全部開封されて確認されます。


「今日のお話も素晴らしかったですよ。」

と司法省の方が言われました。

ベッキー様は、手紙とは別に必ず一つ物語を書いた紙を同封してくださるのです。それが司法省の方達の間でも話題になっていて、皆楽しみにしているのだそうです。


私は手紙を一旦机の上に置き、廊下に出ました。ちょうど隣の部屋のドアも開き

「お姉様ー!」

と言いつつ、エミールが出て来ました。


エミールは私の異母弟でまだ四歳です。こんなに幼いのにオットー様の罪に連座させられ捕えられました。母親は奥様ではなく愛人の方なので、母親は捕えられていません。四歳の子供が決まりとはいえひとりぼっちで部屋に閉じ込められているのだと思うと、胸が痛くなります。司法省の方々もエミールには同情的で、朝と夕の散歩の時間を私と一緒にしてくださっているのです。

私達は手を繋いで中庭に向けて歩き出しました。


「お姉様。お話して。」

とエミールが言います。


「じゃあ、昨日のベッキー様のお手紙に書いてあったお話をしようね。」

と私は歩きながら言いました。


「『猫の舞踏会』というお話なの。」

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