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《155万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第八章 ジークレヒト事件

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ヘレーネの追想(4)(ヘレーネ視点)

それは私とミレイ様が十歳の十三月の事でした。


私達は、エリーゼ様に呼び出されてこう言われました。

「来年の新年祭が終わったら、エーレンフロイト侯爵家のレベッカ嬢がアカデミーに入学します。」


私とミレイ様は顔を見合わせました。侯爵令嬢が入学して来るという事は、アカデミー内の派閥構成に幾らかの地殻変動が起こるかもしれない、という事です。

「お一人でですか?それとも、寄子を引き連れて入学なさるのですか?」

とミレイ様が聞きました。

「八歳になる弟が入学するようですが、他に一緒の者はいません。」

「エーレンフロイト家の序列は、ヒルデブランド家とどちらが上なのですか?」

と私は聞いてみました。これは、間違えてはいけない重要な問題です。


「ヒルデブラント家は筆頭侯爵家ですので、ヒルデブラント家が上です。しかし、個人的な序列はレベッカ嬢の方が上です。レベッカ嬢は第二王子であるルートヴィッヒ殿下の婚約者に定りました。対して、ジークルーネの婚約者は伯爵家の人間です。私の婚約者が誰になるか次第では私よりも上になります。」


・・すごい人が入って来るのだと緊張しました。

ローザリンデ様みたいな意地悪な人でないと良いけれど。と不安になりました。


「ヘレン、ミレイ。貴女達は、レベッカ嬢が入学して来たら取り巻きとして彼女にはべり、彼女の情報を逐一私に報告しなさい。」


・・・。

えーーー!と叫びそうなのを、かろうじて耐えました。


「・・む・むむむ無理です。そんな事。」

声が震えました。

「そうです。私達なんかよりツェツィーリア様やクリームヒルト様の方が。」

とミレイ様も言われます。


「嫌なのですか?」

「・・いえ、そんな。」

「嫌と言うなら強制はしません。」

「・・・。」

「どうしますか?」


これを拒否したら、エリーゼ様に見放されてしまうかもしれません。

当然の事です。

私達はエリーゼ様の指示に従うから、その代わりに庇護を受けているのです。指示に背いたらもう寄子ではいられません。


「「・・わかりました。」」

と私とミレイ様は答えました。


「あの・・どういった情報を報告したら良いのでしょうか?」

「全てです。貴女達が取捨選択する必要はありません。判断は私がします。」

「アカデミーの生徒の中で、親しくしている家門の方はどなたなのでしょうか?」

「貴女達は先入観を持たずに、レベッカ嬢に近づきなさい。憶測はいらないのです。事実だけを報告しなさい。」

「「はい。」」

と私達はうなずきました。


内心ではうなだれていました。


新しい年が来るのが不安で不安でたまりませんでした。


しかし、心配は完全に杞憂でした。


レベッカ様は、とても優しいご令嬢だったのです。


レベッカ様はアーベルマイヤー伯爵家のコンスタンツェ様のように高飛車でもなく、ヒルデブラント侯爵家のジークルーネ様のように孤独を愛する近付き難い人でもなく、親しみやすい気のおけない方でした。


侯爵令嬢と思えないほど慎み深く、腰の低い方で、エリーゼ様やジークルーネ様のような上級貴族は勿論下級貴族や平民それに寄宿舎の使用人にまで敬意を持って接しられます。王族の婚約者である事や『聖女』の子孫だという事を自慢したり、それを理由に横暴に振る舞われる事は決してありません。かと言って、決して気が弱く卑屈なわけでもありません。いつも笑顔で前向きで、陽気な方なのです。


レベッカ様はとにかく勉強がお好きで、授業中は勿論默学室でもいつも熱心に勉強しておられます。読書も好きなようで、図書館が利用できる日は必ず図書館へ行っておられました。


同室者のユリアーナ様は平民で商人の娘で、ものすごく頭が良くて、そのせいで近付き難い雰囲気の方だったのですが、レベッカ様はあっという間に友達になってしまいました。同じ頃に入学されたユスティーナ様はレベッカ様と仲良くなりたいようですが、声をかけるのが恥ずかしいようで常に5メートルくらいの距離の物陰からじーっとレベッカ様を見ておられます。少し後に入学されたアグネス様はレベッカ様の親戚でも何でもありませんが、「お姉様ー!」と呼んで常にまとわりついています。


私も遅れをとるわけにはいきません。

午後からの選択授業は常に同じものを受け、レベッカ様が図書館に行く日は必ず図書館に行きました。レベッカ様と共通の会話が持てるよう、レベッカ様が読まれた本を私も読みました。そしてレベッカ様が孤児院の慰問仲間を募られた時には真っ先に手を挙げました。


レベッカ様は聞けば何でも、誠実に質問に答えてくださいます。おかげで、情報を集めるのはとても簡単でした。

そしてレベッカ様も私やミレイ様にいろんな質問をされます。

好きな食べ物、好きな季節、趣味や特技、困っている事はないか?です。


そして頑張っている事は褒めてくださり、困っている事はさりげなくフォローしてくださいます。


私にとってエリーゼ様は尊敬と畏怖の対象です。

でもレベッカ様は『大好き』な相手になりました。


私やミレイ様がいつもレベッカ様の側にいるのを見て、ある時ジークルーネ様に

「すっかりレベッカ姫と仲良しだね。」

と言われました。


「はい。レベッカ様は私のような身分の者にも優しくてとても親切にしてくださいますから。」

と答えると


「それはちょっと違うんだよなー。」

と言われました。


「私やレベッカ姫のような地方貴族は、君やエリーゼ様のような王都貴族とは別な生き物なんだよ。地方の領地で暮らしているとね、自分の親戚と側近以外に貴族ってモノを見る事がないんだ。周りにいるのはみんな平民。領主の館の中に養老院と孤児院があったりするから、話し相手や遊び相手もみんな平民なの。そんな私らは、『伯爵令嬢』とか『子爵令嬢』って人達とは距離感がわからないんだよ。むしろ、平民階級の方が話しやすいし、一緒にいて気が楽なんだ。だから、エリーゼ姫は副校長に、レベッカ姫の同室者を子爵令嬢のユスティーナ様ではなくて、平民中の平民のユリア姫にするよう提案したんだよ。だから、君らにも努力して優しくしてるんじゃなくて、君らといる方がコンスタンツェ令嬢やツェツィーリア令嬢と、まあ、おほほ。と話をするより気が楽なんだよ。」


そう言われて、とても嬉しかったです。


そして、エリーゼ様が何故私とミレイ様にレベッカ様につくよう指示されたのか、わかりました。

さすがはエリーゼ様です。

エリーゼ様の判断に間違いなどはないのです。


エリーゼ様やレベッカ様、ミレイ様達のおかげで私のアカデミーでの生活はとても充実した楽しいものになりました。


勉強はあまり得意ではないし、行動が遅くてダンスやピアノは苦手でしたけれど、それでもアカデミーでの毎日は楽しかったです。

オティーリア様がアカデミーに行く機会を譲ってくださった事に、心の中で感謝していました。


ただ、一つほどアカデミーでの生活で憂鬱になる事がありました。


それは、一学年下のオットー様の存在でした。

どうして、レベッカが入学当初ユリアと同室になったのか?何故、部屋が一階だったのか?

ようやく、その理由が書けました。


ヘレーネ視点の話はもう少し続きます。よろしくお願いします^_^

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