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《160万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第八章 ジークレヒト事件

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国立医大病院の廊下にて(1)(ルートヴィッヒ視点)

ルートヴィッヒ視点の話になります

事件の翌日、どうしてレベッカが病院を出禁にされたのか?という話です

アカデミーの男子寄宿舎で、大変な騒動が起こった翌日の事。


前日、あっちこっちと動き回った疲れもあって僕は少し遅めに起きた。顔を洗って朝食を食べていると、従兄弟のフィリックスが訪ねて来た。


「今、朝食か?のんきだなあ。何時に起きたんだ?」

「別にいいだろ。そういうおまえは何時に起きたんだよ?」

「夜明け前には起きたよ。それから、河に様子を見に行って、新聞を何紙か買いに行って、朝食を差し入れがてら父上に会いに行って、クラウスの所に見舞いに行ってから芳花宮ここに来た。」


朝からアグレッシブに行動していたらしい。


「クラウス、どうだった?」

「昨日より更に熱が上がってた。喉は腫れているし、鼻水が止まらないらしいし、アレは風邪だな。」

「叔父上は?」

「手の甲の内出血がすごかった。どれだけ、人を殴りつけたんだか。でも、聞き取りは順調に進んでいるようだった。それより、新聞の内容を聞いてくれ。」

「昨日の今日だぞ。まだ新聞に記事は載っていないだろう。」

「二紙が報じていた。そのうちの一紙はガルトゥーンダウムがオーナーの新聞社だ。エーレンフロイト侯爵が国に反逆した。とデカデカと載せていた。」


僕は飲んでいたコーヒーを吹きそうになった。


「あの野郎っ!新聞の現物はないのか?」

「テオドーラ様が読みたいとおっしゃったので、持って来た新聞は蛍野宮に置いて来た。」

「もう一紙は何て書いてあったんだ?」

「そちらは僕らが知っている事実を忠実に書いていた。女子寄宿舎で起きた事も、事細かに書いていたので、誰か女子寄宿舎に情報を提供した人間がいるのだろう。ところで、これからコンラートの様子を見に行こうかと思っているのだけれど、一緒に行くか?」

「ああ、行く。歯を磨いて来るから待っていてくれ。」


と言った後、一応聞いてみた。


「・・河の様子はどうだった?」

「司法省と情報省の人間がたくさんいたが、ジークレヒトは発見できていないそうだ。捜索は本人を探すというものから、水死体を探す方に、既にフェーズが移っているようだったな。」

「そうか。」


さすがに胸が痛かった。


だが、司法大臣が言った通りだ。できなかった事を悔いていても仕方がない。それよりも、できる事に集中すべきだ。

僕は僕に今できる事をする。そう思いつつ、僕はカップの中のコーヒーを一気にあおった。


病院に着くと、病室内で騒ぎが起きていた。

コンラートの入院している『桜桃さくらんぼ』の間のドアの前の廊下に人垣ができている。人垣のほとんどが、シュテルンベルク騎士団とエーレンフロイト騎士団だ。そして、ユリアーナ・レーリヒもいた。


という事は、もしやベッキーがいる?


僕はウキウキしながらドアに近づいた。僕とフィルの姿を見て騎士達が左右に割れ、道をつくる。


ドアの前に立つと、室内から声が聞こえて来た。後から聞いた話だが、病院のドアという物は、患者が苦しんでいたり、助けを求めていたりする声が聞こえやすいよう、わざと薄く室内の声が外に聞こえやすいようにできているのだそうだ。


中からはコンラートとシュテルンベルク伯爵が、怒鳴り合う声が聞こえてきた。


「家に帰ります!」

「頭を16針も縫う重傷だったんだぞ。肋骨も何本も折れていて内臓に傷を負っている可能性があるんだ。絶対に駄目だ!」


「・・確認したい事があるんです。確認しないと・・いけないんです!」

そう叫ぶコンラートは体調が悪いのだろう。息も絶え絶えという感じだ。


「今は絶対安静にしていなければ駄目だ。何も考えずに自分の体の事だけ考えるんだ。」

と伯爵が言う。全面的に伯爵に賛成する。コンラートの息づかいと声の様子からして、まっすぐ歩く事さえできるとは思えない。


「病院を抜け出しても、屋敷には入れないからな!」

「なら、エーレンフロイト邸に行きます。絶対に・・行きます。」

それはエーレンフロイト家も迷惑だろう。いったい、ボロボロの体で何が確認したいのだろうか?

やはり、ジークレヒトの事だろうか・・・?


その時だった。


中からベッキーの声が急に聞こえてきた。


「うち?うちは駄目だよ。今、ヒルデブラント侯爵とジークルーネ様がうちにいるから。」


声が止まった。


そして十秒後。


「ううぅっ!」

というコンラートの苦しそうなうめき声が聞こえてきた。


「コンラート!」

「若君、大丈夫ですか⁉︎」


伯爵の声と、もう一人は使用人の声だろうか?


「横になってください!」

「お医者様を呼んで来ます!」

中ではパニックが発生しているようだ。


そして、それら全ての声より遥かに大きな声で


「レベッカーーーッ!」


とエーレンフロイト侯爵夫人の絶叫が響いた。


「おまえという娘はっ!何故、それを今言うの⁉︎」


昨日、ジークルーネ令嬢はコンラートを裏切っていたわけではない。という話をヨーゼフから聞いた。

だけど、その話を肝心のコンラートは知っていたのだろうか?

万が一、知らなかったとしたら、今のは相当の衝撃発言だっただろう。


「ヨーゼフ。レベッカを外に連れ出してちょうだい!」

侯爵夫人が、喉が裂けそうなほどの大声で叫ぶ。廊下にいる僕でも頭がくわんくわんするから、至近距離にいるコンラートにはけっこうなダメージが入るのではないだろうか?


ヨーゼフがベッキーを連れて廊下に出て来た。僕がベッキーの側に寄ろうとすると、すかさずユリアーナが僕らの間に割って入る。


この女!


と思って僕がユリアーナを睨むとユリアーナは睨み返して来た。そしたら、すすすーっとベッキーが僕らから距離をとった。(作者注・レベッカは二人が熱く見つめ合っていると勘違いして邪魔をしてはいけない、と考えています)


慌ててベッキーに声をかけようとした時・・・。


コンラートはミュリエラを助けた通りすがりの女性が、ジークルーネなのか確かめに行きたいと思っていました。

それを何となく察したレベッカが、遠回しに教えてあげたのですが、タイミング悪くコンラートの傷の調子が悪化したので、お母様に叱られてしまいました。


更に騒動は続きます(^_^;)

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