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《155万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第七章 聖少女達

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ボランティアの記録(2)

大陸歴316年も、やっぱり私はボランティアに明け暮れていた。まず、向かった先はエリーゼ様の寄子のツェツィーリア様の実家ハルトヴィッヒ子爵領だ。ここで参ったのは、並行して違う伝染病『伝染性紅斑』通称リンゴ病が流行した事だ。


実は、文子はリンゴ病になった事があるのだが、レベッカはリンゴ病になった事がなかった。

リンゴ病は感染力の強力な伝染病だ。幼児がかかる事の多い病気だと言われているが、10代だってかかる時はかかる。私はリンゴ病を発症し寝込んでしまった。

そんな私の枕元では、ユリアとコルネが「私がベッキー様の看病をするのだ!」と大げんかしてやかましい。

友人達は全員幼少期にリンゴ病になった事があって免疫を持っており、リンゴ病になって迷惑をかけたのは私とアルテミーネ先生の二人だけだった。


リンゴ病は21世紀の日本でも治療薬が無く、解熱剤と痛み止めを飲んでひたすら回復するのを待つしか無い病気だった。

私はツェツィーリア様に、「迷惑をかけてしまって申し訳ない」と謝ったが、ツェツィーリア様とご家族は自分達の領地で私が死んだらどうしよう。と真っ青になったらしい。紅斑が引いた後私は一旦王都に戻った。


その二ヶ月後。私はバーベンブルク子爵領にいた。アカデミーの副校長の領地だ。


「土地も痩せているし、何も無い領地でしょう。」

と副校長が言ったバーベンブルク領にはすごい物があった。


ナイアガラか!


と言いたくなるほどデッカい大滝である。


轟々と爆音をたてて流れる滝を見て私は感動してしまった。舞い上がる飛沫しぶきと共に振りまかれるマイナスイオンが半端ない。


確かにバーベンブルク領は寂しい田舎町だった。土地は痩せており目立った産業も無い、鉱物資源も無い。

だから先代の子爵は教育省で働き、夫の死後副校長はアカデミーで働いているのだ。


私は勿体無いと思った。地球でこのレベルの滝があったら、大量の観光客を誘致できるのに!


ヒンガリーラントにはまだ『観光旅行』という概念がない。鉄道も飛行機も無く、リゾートホテルも三つ星レストランも無い世界だから仕方ないのかもしれないけれど。旅行と言えば金持ちが自分の持っている別荘に行くか、平民が実家に里帰りするかなのだ。


だが、まだ存在しないジャンルの産業だけに、無限の可能性を感じた。当たれば大きい事業だ。地球でも『観光産業』が最大にして唯一の産業なんて海洋国がいっぱいあった。挑戦してみるのも面白いかもしれないぞ!


この大滝だけではない。ブランケンシュタイン領の鏡のように美しい湖。ファールバッハ領の地平線まで続いていそうなほど広大な花畑。そしてついでに我がエーレンフロイト領の、幽霊が出ると噂のホテル。観光客を呼べそうな物はどの領地にもいろいろある。

快適なホテルとおいしいレストランがあって交通網が整備されれば、絶対需要のある商売だ。


だけど、それ以上に滝を見ていて『勿体無い』と思った事業。それは『電気事業』だ。これだけの水量があれば、水力発電ができるはずなのに!


地球で最も大きな滝は、パラグアイにあるイグアスの滝だ。この滝の水力から得られる電力で、狭くもないパラグアイ国の全ての電気がまかなわれているという。更にパラグアイは余った電気を他国に売っていた。

この大滝で電気が作れたら、ヒンガリーラント中に行き巡らす事も可能だろう。そうすれば、冷蔵庫とかエアコンとか電子レンジとかドライヤーとかが使えるようになるかもしれない!


でも、電気の作り方がわからない!

滝の水の力でタービンとやらいう物を回すと聞いた事があるが、その先の理論がわからない。

高校の授業で、アンペアとかボルトとかオームの法則とか暗記させられたけれど、そんな事だけわかってどうしろと言うのか⁉︎

今すぐ、発電所の建築作業員に異世界転移して来て欲しい!


そういう事を大量のマイナスイオンを浴びながら私は毎日考えていた。

あの辺りにホテルを作ったら景観が良さそう。キャンドルを使って夜間ライトアップして。ああ、でもライトアップするならやっぱり電気が欲しい。クリスマスの時期にイルミネーションを大量に飾るだけで観光客が集まって来たもんね、地球だと。


と、毎日難しい顔をして考え込んでいたら、ものすごく副校長に心配された。

この滝が、有名な自殺の名所なのだという事を後日になって知った。


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