表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《155万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第六章 伝染病襲来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

374/561

芳花宮のお茶会(3)(ルートヴィッヒ視点)

僕も母上も「えっ⁉︎」となった。

言っておくが、今までこんな事が起きた事は一度も無い。

常識的にあり得ない。

たとえ、同じ王宮内の宮殿とはいえ、完全に別のエリアである。もしも訪問や招待をしたいなら、数日前に必ずお伺いをたてないとならない。平民の学友同士じゃあるまいし、いきなり押しかけて来るなど言語道断だ。


そして、母上とナディヤ妃は仲が良くない。

ナディヤ妃が嫁いで来た頃、母上は、後宮の先輩として気を使い、優しくしようとしたみたいだ。

しかし、ナディヤ妃は自分より『格下』の人間に優しくされて喜ぶ人ではなかった。


嫁いで来たナディヤ妃にとって、身分の低いアラサーの側室は、排除し、踏みにじる相手でしかなかった。


若くて美貌の王女は、王の寵愛を奪い取るのは簡単だ。と思って嫁いで来たのだろう。しかし、父上は若さを礼賛するタイプの男ではなかった。


そもそもナディヤ妃は、女性全般が嫌いでそれをはっきり態度に出す人だった。ナディヤ妃には、ヒンガリーラント社交界で友人ができなかった。それに比べて母上は、少数ながらも『友人』と呼べる人達がいる。ファールバッハ伯爵夫人、ライゼンハイマー伯爵夫人、それにアーレントミュラー公爵夫人だ。父上のもう一人の側妃である、蛍野宮のテオドーラ妃とも仲が良い。


簡単に奪えると思っていた寵愛を得る事ができず、ナディヤ妃は宮に閉じこもるようになった。そんな彼女を気遣う人もおらず、彼女は忘れられた妃となりつつある。今ではごくたまに、雪白宮でヒステリーを起こして暴れているらしい。と噂で聞くくらいだ。僕も、二人の顔を見るのは数年ぶりだ。レオンハルトのお披露目が行われた時以来ではないだろうか?


母上も困っていたが、明らかにレベッカ姫と姫の家庭教師達も焦っていた。

おそらく、母上やライゼンハイマー伯爵夫人に対しては、こう言われたらこう言おう的な、問答集を予習して来たのだろう。

だが、急に客が増えたら何を会話したら良いのかわからないはずだ。

前準備無しでは、ナディヤ妃相手の禁句ワードとかもわからないはずである。そして、僕が彼女をフォローしてあげられるほど、僕はナディヤ妃について詳しくない。

(※作者注・ルートヴィッヒは自分もレベッカの中では『急に増えた客』である事に気がついていない。)


だが、追い返す事も難しかった。

四人の側妃は、側妃に任命された順に従って第二妃、第三妃と呼ばれはするが、一応は同格の存在だ。よって、序列に差をつけるのは『寵愛』などという、目にも見えず、重さ深さを測る事ができないような物ではなく実家の身分である。

なので、親が国内の下級貴族である母上より、小国とはいえ王女のナディヤ妃の方が身分が高い。


まだ若いし、外国人だから常識がわからないのだろう。とは思うが、なぜ今日に限って、レベッカ姫が来てくれているこのタイミングで押しかけて来るのか⁉︎

まさか、レベッカ姫に何か害をなそうと考えているのではあるまいか?


しかし、追い返す事もできずに母上は慌てて席を用意した。


もったいぶって登場して来たナディヤ妃に対して一番最初に思ったのは「香水キツっ!」だった。

香水をつけ過ぎだ。香水の原液の風呂に入って来たのかというレベルだ。

化粧も厚く、白粉臭い。


どんなに美人でも、こんなに臭いが強烈な人間とは長時間一緒に居たくない。せっかくの紅茶やテーブルに飾った薔薇の香りも台無しだ。

異母弟のレオンハルトは、そんな母親にぴったりと寄り添っている。おまえ、嗅覚大丈夫なのか?と不安になる。


急に押しかけて来ておいて、詫びも礼もろくな挨拶すらしない。ナディヤ妃は、母上と僕を一瞥した後、すぐにレベッカ姫に関心を移した。

身分の低い母上など眼中に無いと言わんばかりだ。だが、侯爵令嬢であるレベッカ姫には興味があるのだろう。


「王国の小さな星であられるレオンハルト殿下とナディヤ妃殿下にお目にかかる事ができ、幸甚の至りでございます。」

というレベッカ姫の挨拶にご満悦だ。

「礼儀正しい御令嬢ね。」

と、自分の礼儀を棚に上げて語っている。というか、口元を覆った香木の扇子も臭いっ!お願いだから、その扇子を煽ぐな。


「御父上も13議会の一員になられたそうね。姫君も自慢な事でしょう。」

僕はカチンときた。レベッカ姫は立派な人だが、それは親の威光や権力とは無関係だ。

というか、ようするにエーレンフロイト家が権力を増強したから擦り寄りに来たって事かよ!


「レベッカ姫が、来ている事をご存知だったんですね。」

と僕は嫌味たっぷりに言ってやった。


「ええ、女官長が教えてくれたの。」

僕の方を見もせずにナディヤ妃は答えた。


女官長め!


何の嫌がらせだ?何かの陰謀ではあるまいか⁉︎

と、僕が思ったのは、僕の心に女官長とナディヤ妃に対する悪意が充満していたからだ。


本当に、それが身の毛のよだつような『陰謀』だったのだと、後になって知る事になる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ