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《155万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第六章 伝染病襲来

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芳花宮のお茶会(2)(ルートヴィッヒ視点)

ブクマが300突破しました^ ^

皆さん、ありがとうございます。とってもとっても嬉しいです。感謝します!

僕は立ち上がり

「どうぞ。」

と言ってレベッカ姫に腕を差し出した。レベッカ姫は一瞬ためらったが、僕のエスコートを受け入れた。


視界の端に映るユリアーナ・レーリヒがすごい目をして睨んでいる。ライゼンハイマー夫人が彼女にも会いたがったので、母上が同行させるよう言ったのだ。心の中で、おまえもう少し取り繕うと言う事を勉強しろよ。と思う。彼女もジーク同様、立派な人なのだろうが、僕はどうにも彼女が苦手だった。


『芳花宮』は、その名の通り花にあふれた宮殿である。まあ、蛍野宮や雪白宮にだって花はたくさん咲いているだろうが、やはり断トツに花壇が広いらしい。

秋バラが咲き誇る一画にある、ガゼボで母上は待っておられた。一緒に席についているのは母上の妹のコートニー叔母君だ。


母上は満面の笑みでレベッカ姫を迎えた。なんと言ってもレベッカ姫は、母上にとって命の恩人だ。かつて母上が王宮図書館の隠し部屋に閉じ込められた時、レベッカ姫唯一人が「ハンドベルの音が壁の向こうからする」と言って監禁に気がついたのである。

偶々、図書館内にいた彼女が監禁に気がつかなかったら、母上と母上のお腹の中にいたアンゲラはどうなっていたかわからない。母上がレベッカ姫に好意的なのは当然の事だった。


レベッカ姫が、完璧な礼儀作法で挨拶をし、母上が着席を勧めた。

お茶は侍女達を呼ばずコートニー叔母君が淹れる。その後、母上は祐筆を呼んだ。レベッカ姫が持参した絵本を書き写す為だ。

更に母上は、乳母を呼びアンゲラを連れて来させた。


「この子の成長も見てやって欲しかったの。迷惑でなければ良いのだけれど。」

「迷惑などとんでもございません。信頼の証であると思っております。」

子供好きで有名なレベッカ姫は、アンゲラに優しく微笑んだ。アンゲラは今日も、大のお気に入りの『ミィちゃん』のぬいぐるみを抱えている。


「アニー。『ミィちゃん』のお姉様よ。」

と母上が言うと、アンゲラは

「ミーちゃん!」

と甲高い声で言った。アンゲラは『ミィちゃん』のぬいぐるみを掲げたが、ここで誰かがぬいぐるみを奪おうなどとしたらギャン泣きする。


『ミィちゃん』は、アンゲラが生まれた時レベッカ姫がプレゼントしてくれたぬいぐるみで、ミイラのぬいぐるみだ。

「ミイラは異国の魔法使いです。」

とレベッカ姫は説明したそうだ。僕が、本で読んだ知識とは異なるが、アンゲラが生まれた時彼女はまだ12歳だったのだから、彼女だって勘違いをする事もあるだろう。

それに正直、ミイラの正体なんか何だってかまわない。重要なのは、アンゲラが贈られて来た全ての贈り物の中で、このぬいぐるみを一番気に入っているという事だ。


『ミィちゃん』は二頭身で手足が短く、真っ白でふわふわで軽いのだ。幼児が好む全要素が詰まっていると言っても良い。

しかも、全身包帯でぐるぐる巻きのミイちゃんには、目が無い。これは意外に重要な要素だ。幼児は、人形の目を怖がるのだ。

でも、その気持ちもわかる気がする。大人の僕でもリアルなビスクドールの、かっ!と見開いた目は不気味だと思う。


だいたい赤子への贈り物として、大人でも「重い!」と感じる純金製のガラガラや、落として割れたら一巻の終わりのビスクドールを贈ってくる奴は、何を考えているのだろうと思う。

そういう奴らは、高価な物を贈れる自分に酔っているだけで、相手が何を喜ぶか?という事をまるで考えていないのだと思う。

あと、長ーい紐やリボンのついたショールやキラキラ光るガラスや宝石のボタンがついたベビー服を贈ってくる奴。

細い紐が首に巻き付いたり、ボタンを誤飲したらどうしてくれるのか⁉︎子供のいない人間がそういう物を贈って来るのは「わからないのだろうなあ」と思うけれど、子供がいる人間でもそういう物を平気で贈って来たりする。その心理がわからない。

おまえは子育てを、使用人に丸投げしているのか?と聞いてやりたい。


その点、レベッカ姫はさすがだと思う。彼女は、今回のライゼンハイマー領の災害でも言える事だが、相手の気持ちになって物事を考えられる人なのだ。


幼い子供がいると、会話の全てが子供寄りになる。

僕だってレベッカ姫と会話したいが、アンゲラが姫を独占しているので口を挟めない。割と人見知りのはずのアンゲラも喜んで姫に抱っこされている。アンゲラのぷにぷにのほっぺにレベッカ姫が頬擦りしているのには、一瞬だが嫉妬の炎がメラッとなった。僕ださえ、レベッカ姫の頬に触れた事が無いというのに、羨ましすぎる!


レベッカ姫と会話を楽しむのは、今日はもう諦めた方が良いのかもしれない。せっかく、コンラートとジークレヒトがいない間に彼女との距離をつめたいと思っていたのに残念だ。でも、彼女の顔を見ているだけで心が浄化される気がするので、この場から立ち去る気にはなれなかった。

レベッカ姫とアンゲラ。僕の大好きな二人が仲良く触れ合っている姿は、流行りの言葉で言うところの、正に『尊い』という奴だった。


と、そこに芳花宮の侍女が現れ、来客を告げた。

ライゼンハイマー夫人だろうと僕は思った。今日のお茶会はそもそも、レベッカ姫とライゼンハイマー伯爵夫人を引き合わせる為に開かれたのだ。


ところが。


客とやらは、別人だった。やって来たのは、父上の側妃の一人である雪白宮妃ナディヤ妃だった。

ナディヤ妃と僕の異母弟レオンハルトが、突然押しかけて来たのである。

どうしてミイラのぬいぐるみなんか作って贈ったのかについては、第二章の絵本作り(3)で紹介しています。

良かったらぜひ、読み返してみてください(^◇^)

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