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《155万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第六章 伝染病襲来

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芳花宮への招待

その恐怖の招待状が届いたのは、我が家でお楽しみ会を開いた三日後の事だった。


未来の姑、芳花妃ステファニー様から、お茶会の招待状が来たのである。

そんなモノが届いた理由。それは私がライゼンハイマー領に匿名で支援物資を送っていた事がバレたからだ。


ガッツのあるタブロイド紙の記者見習いが、調査の果てにすっぱ抜いたのである。

其奴そやつの名はハーラルトという。コルネの侍女ドロテーアの息子だ。


元々、私とユリアが二人で何かをひそひそやっているのをいぶかしんだコルネが、新聞を届けに来たハルに愚痴った。

アカデミーが休校になって以来、ドロテーアが新聞社に行きにくくなったので、代わりにハーラルトがお屋敷まで新聞を配達しに来てくれるようになったのである。


コルネに頼まれたハルは、私達二人が何をしているのか調査した。レーリヒ商会に聞き込みに行ったのだ。

ドロテーア似の綺麗な顔で愛嬌のあるハルは、レーリヒ商会の従業員に人気がある。その中の一人がポロリとしゃべったらしい。

事実を知ったハルは、それをコルネとデリクに報告した。当然デリクは記事を新聞にのせた。


「情報を漏らした者を必ず見つけ出し、センチメートル単位に切り刻んで河に捨てます!」

とユリアは般若の形相でカンカンに怒っていた。


友人を猟奇殺人犯にするわけにはいかないので「やめれ」と言いはしたが、レーリヒ商会への信頼が、エンジンの停止したジャンボジェット機くらいのスピードで落ちたのは事実だ。

それはともかく。


三流のタブロイド紙でも、読んでいる貴族はいるものである

ライゼンハイマー家の人達も読んでいたらしく、ライゼンハイマー家から、トイレットペーパーか⁉︎というくらい厚みのある巻物型の感謝状が届いた。更に、宮廷画家をしているライゼンハイマー夫人が、ステファニー妃殿下に「エーレンフロイト侯爵令嬢に、直接会って御礼を申し上げたい」とぽろっと言ったのだそうだ。そしたら

「じゃあ、呼び出してあげましょう。」

とステファニー妃殿下が言ったらしくて、私は呼び出されたのである。


招待状が届いて以来、お母様はプチパニック状態だ。

前々から、私に対して理不尽な言動や要求が多かったが、その態度にまるで土星のように輪がかかってしまった。

妊娠している為、私に付き添えないのが不安で不安でたまらないらしい。


三人の家庭教師によるマナーの授業も、私に集中砲火状態である。特に、美しいお茶の飲み方を延々と練習させられるので、慢性的に胃がチャプチャプ状態だ。

アグネスには

「お姉様は冷たい!なんて言ってしまってごめんなさい。」

と泣いて謝られた。

コルネは、私とユリアだけが一緒に行動して自分がハブられた事にヘソを曲げている。更に、お茶会に同行する侍女として、成績優秀なユリアとアグネスが選ばれて自分は選ばれなかったので、ますます鬱々となってしまった。

いつも涙で潤んだ目で私をジトっと見ているので、18歳を待たずに階段から突き落とされるのでは?と不安で不安でたまらない。


ユリアはユリアで前述の理由で機嫌が悪い。

その中で、あっちの機嫌をとりこっちにゴマをすりとしている私は、もう胃が痛くて痛くてたまらない。そんな哀れな胃に大量のカフェインを流し込んでいるので、ますます胃の調子が悪くなる。


仕方なく、主治医の娘のフローラに胃薬を出してもらいつつ「お茶会に行きたくない」と愚痴ったら

「死ぬ寸前くらい腹を壊すヤクをお出ししましょうか?」

と言われた。目が本気だった。


その薬を飲む勇気がないままお茶会の日が来た。

招待が急過ぎて茶会服を新調するのは間に合わなかった。それがわかってくれているからだろうか、ステファニー様が指定してきたドレスコードは『アカデミーの制服』だった。髪には、ルーイ王子の髪色と同じ純金の髪飾りをつけられた。


一緒に招待されているのは、三人の家庭教師の先生方だ。あと、エスコート役で弟のヨーゼフがついて来てくれる。侍女として、ユリアとアグネス、護衛騎士はアーベラとティアナが同行する。


私が、ステファニー妃殿下を訪問する表向きな理由は、私が作った絵本を貸す為だ。ラヴェンデルの赤ちゃんの為に作った絵本が、とても面白かった、と三人の家庭教師の中の誰かがステファニー妃殿下に報告したらしい。都市封鎖がされて以来、絵本の輸入が困難になった。

アンゲラ王女殿下の為に新しい絵本が欲しい、と思っておられた妃殿下に私が作った絵本を貸してくれと頼まれたのだ。

絵本は即刻、祐筆が書き写す。そうやって書き写している間一緒にお茶を飲んでいると、アンゲラ王女の肖像画を描く為、芳花宮に出入りしているライゼンハイマー夫人が通りかかる。という設定になっているらしい。


伝染病が流行って以来、お茶会だのパーティーだのを開くと、白い目で見られるようになった。だから、こういう『設定』が必要なのだ。

ありがたいのは、この設定のどこにもルーイ王子が出てこないところだ。ステファニー妃殿下に会うというだけでも心臓に悪いのに、ルーイ王子までいたら、心臓と胃が完全にどうかなる。


「別に御礼の言葉なんてどうでもいいのになあ。もう御礼状をもらっているんだから。」

と私は馬車の中でつぶやいた。


「それだけ感謝しておられるのですよ。」

とユリアが言う。


「ベッキー様の行動は本当に素早かったですもの。まるで、土砂崩れが起こるとわかっていたのでは?と思えるほどに。」

ユリアにそう言われて、私の心臓が不正脈を起こしかけた。


「災害救援は、発生から72時間が勝負!と、かの聖女エリカ様も言っておられます。正直、災害が起こって一週間後に仮面舞踏会を開いて、寄付金を寄付してそれが何になるのか?と思いましたわ。ベッキー様は本当にご立派です。」

「それを言ったらユリアもでしょ。それに、災害被災地には発生した時だけでなく、継続的な支援が必要だよ。寄付金だって十分ありがたかったと思うよ。」

「でも、もしも仮面舞踏会でクラスターが出ちゃったら、開催した公爵家だけでなくライゼンハイマー家もバッシングを受けちゃいます。

ライゼンハイマー家は、本音では迷惑。って思ってたらしいですよ。」

とアグネスが言った。

それは、まあ・・そうかもしれないな。


ガタゴトガタゴト、ドナドナドナドナと荷馬車は・・じゃなくて馬車は揺れる。


そして、ついに王宮内に馬車はついてしまった。


三年前の初冬、私は毎日王宮に来て図書室に入り浸っていた。あの頃は王宮はキラキラ、ピカピカしていると思っていたのに、今はここを伏魔殿のように感じる。


馬車の扉が開いたので私は外へ出ようとした。

「あ、お姉様!」

「レベッカ様!」

緊張の余り、マナーが吹っ飛んでいたが、この場合まずヨーゼフが馬車から降りて、私は彼のエスコートを受けて降りなくてはならなかったのだ。つい、普段の畑の時のよう一番に降りようとしてしまった。


そして私は馬車の外の光景に凍りついた。近衞騎士が20人くらい、左右にずらり!と整列して立っている。

そして!

そんな彼らの前に、アカデミーの制服を着たルーイ王子が立っていたのだ。


何で、この人がいるのっ!


と思った瞬間足が滑った。私は往年の名作アニメに出てくる『クックロビン音頭』のようなポーズで馬車から転落した。


いかん!手のひらに大怪我する。でも、手を避けたら顔に大怪我する。

と考えている間にすごい衝撃を受ける!

ただし。


私が突っ込んだのは大理石の石畳じゃあなかった。


そう、私は!


野球の盗塁王のように走り込んで来た、ルーイ王子に激突したのである。尻もちをついたような姿勢で石畳の上に座っている、ルーイ王子の胸やら腹やらの上に私は落ちたのだ。


うわああああっ!


ルーイ王子の腰やら内臓やらは無事か⁉︎もしも無事でなかったら、私はクビとお別れする事になる。さようなら、私のクビ!


「殿下!」

「ご無事ですか⁉︎お怪我は?」

と近衞騎士さん達もパニックだ。


「すみませんでしたあっ!」

と叫んで、私は後方に跳ね飛んだ。


「もう、姉上ったら。ルーイ様に会えて嬉しいからって飛び出しちゃダメだよ。」

とヨーゼフが言う。「違う!」と叫びたくなったが、いや、そーゆー事にしておいた方がまだ許してもらえる可能性が高い。と思った。グッジョブだ、弟よ。


「ほほほ、すみません。ご迷惑をかけて。」

引きつった笑顔で私は王子に謝った。

次話からしばらくルートヴィッヒ王子視点の話となります。


北村は、話のストックをある程度ためておいて、それを少しずつ出しているのですが、次の話はルーイの視点から見たライゼンハイマー領の土砂崩れや豪雨災害の話になります。

ただ、最近のニュースなどから考えて、今公開するのはやめておこうと思いました。なので、申し訳ありませんがしばらくお休みします>_<

すみません。どうか、北村の事を忘れないで、また読みに来てください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 大丈夫です、面白い物語を読むためなら年単位で待てます!
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