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1週間経ちました

アカデミーに入学して1週間。


学校生活にも、まあまあ慣れてきた。

学校内の様々な裏事情もわかってきたし。


中等部で、生徒達の中心にいるのはエリザベート様。学園の絶対女王であり、彼女には生徒達はもちろん先生達も全く頭が上がらない。

逆らおうものなら、ハムのように縛りあげられて、石抱かされるかもしれないレベルだ。


公爵令嬢であるエリザベート様の次に身分が高いのが、侯爵令嬢であるジークルーネ様。同率2位が私である。


そのエリザベート様とジークルーネ様。仲良しなのかと思っていたが、別にそうでもなさそうだ。

エリザベート様は、常に取り巻きに囲まれているが、ジークルーネ様はその、ヨイショ隊員には入っていない。

時々・・というかエリザベート様が「ジークルーネ、近う。」と声をかけたら、仕方なくはべるというレベル。エリザベート様は、目をかけてやらねばならぬ側近やら、有象無象がいろいろと多いので、いつもジークルーネ様を気にかけているわけにはいかないようだ。


正反対に、ジークルーネ様はいつも大抵一人でいる。彼女の友達っぽい人を見た事がない。

でも、別にみんなから嫌われているというわけではなくて、彼女とお近づきになりたいという人はたいへん多い。

そのせいで「子供の頃のジークルーネ様の話を聞かせて。」と言ってくる人の多い事、多い事。いや、本人に直接聞けよ!


そして、私の同室者のユリアだが、入学して1日で気がついた。彼女、めっちゃいじめられとる。


『いじめ』と言っても、暴力とか暴言とかがあるわけではない。


入学する前は、平民相手に

「平民の分際で、アカデミーに通うなんて生意気よ!」

「ここは、あなたみたいな人間がいていい場所じゃないわ!」

と、のたまうステレオタイプのアホ貴族とかいるのかなー、いたらガン見してしまうなー。と思っていたのだが、実際のところいなかった。


一応腐ってもお貴族様。選民意識がバカ高かろうとも、下品な言動は控えたいものであるらしい。

自らの品性と品格を、自分で下げる言動と挙動の人はいなかった。私の見える範囲には。


じゃあ、何をされているのかというと。それはずばり『無視』である。

誰も彼も、まるでユリアの事を、存在しないかのようにスルーする。

「殴られたり、からかわれたりするよりいいじゃん。」と、いじめられた経験の無い人は言うかもしれない。


断言する!そんな事はない!!


人は存在しないかのように他者に振る舞われると、精神に異常をきたすのである。


だから、ネグレクトは身体的虐待や性的虐待と同じくらい、深刻な虐待とされており、古来より『村八分』という私刑が存在するのである。


アカデミーには、ユリア以外にも平民の子供はいるけれど、その平民の中にもランクがあるようだった。

学者や教育者の家は高ランク、文化人や芸術家が中位で、商売人は最下層らしい。何を生み出すわけでもないのに、物を右から左に動かすだけで、お金をかすめ取っているからって事らしいけど、絶対ひがみもあると思うよ。

『貴族』イコール『お金持ち』とは限らない。

台所事情は、火の車って家もあるらしいし、商人にツケやら借金をしている家もあるらしい。

そういう家のお貴族様達は、自分達よりお金を持っている商人が嫌いなんじゃないかな、と思う。

ユリアが相手じゃ、『あのブス』とか『あのバカ』とかも言えないしね。


ま、とにかく、ユリアはアカデミー内でカーストの最下層にいて、貴族の子達には

「同格と思われたくない。」

と思われているようだし、平民の子達には

「あの子と親しくしたら、今度は自分が無視される。」

ってんで、結局みんなから完無視されているのだ。


あ、そういえば、私の寄宿舎の部屋が一階だった事に、ユーディットが嫌な顔をしてたけどさ。

なんでか、わかった。

寄宿舎って、上の階がカースト上位者。一階はカースト下位の人って、暗黙のルールがあるらしくって、だから侯爵令嬢である私はそのルールによると、部屋が三階じゃなきゃおかしいのだ。


もちろん、エリザベート様も、ジークルーネ様もお部屋は三階だ。

もしかしたら、これは嫌がらせなのかもしれない。


でも別にかまわない。だって、私は一階が良かったのだもの。


実は、私が入学した頃、三階には一部屋空きがあったんだって。

そして、私とほぼ同時期に子爵令嬢のユスティーナ様という子が入学したので、私とその子が三階で同室になるのでは、と皆に思われていたらしい。

ところが、三階の部屋に入室したのはユスティーナ様だけで、私はユリアと一緒の一階の部屋になった。

だから、皆さん

「いったい、どうして?」

「空いていたのはエリザベート様の隣の部屋よ。エリザベート様が許さなかったのかしら?」

「でも、それなら他の子を下の階に移してでも、レベッカ様を三階にするべきだったのではなくて?」

「やっぱりエリザベート様がそうさせたという事かしら?」

「レベッカ様はエリザベート様に何か不快に思われていらっしゃるのかしらねえ。」

とぴーちくぱーちく、噂したとか。


でも、ユスティーナ様が、アカデミーに入学した事情を聞いて私は「彼女と同室にならずにすんで良かった。」って思ったけど。


実は彼女の実家は、借金まみれで、遂に去年の建国祭の頃破産したらしい。

なぜ、借金まみれなのかというと、父親である子爵様がギャンブル好きだったから。ギャンブルに弱いのに、ギャンブルをやめられないから借金がすごくて、それで起死回生を図って、建国祭の子供チェス大会で新たに借金してまで優勝候補に大金を賭けたら、その優勝候補の子が一回戦で負けたらしい。


そう、このわたくしに!


はい。思い当たるフシは確かにあります。


で、その借金を肩代わりしてもらう為、早くに母親を亡くしたユスティーナ様が母親の様に慕っていたお姉様が、平民で成金で中年のおっさんと結婚させられたらしい。


それ、絶対私、恨まれてるよね!


ユスティーナ様のお姉様は、ろくでなしな父親から妹を引き離したい。妹には、自分の力で人生を拓いて行ってほしい。と思って、平民で成金で中年の夫に「妹をアカデミーに行かせる為のお金を出してやってください。」と頼んだらしい。

それで、ユスティーナ様はアカデミーにやって来たのだ。


それを知った時は、「一階で良かった。ユリアと同室の方が、まだマシだった。」って思ったわー。


年が私より一つ下なので、ユスティーナ様と顔を合わす事はほとんど無いのだけど、たまに廊下とかですれ違った時、私とユリアの事をなんかじーっと見てて、正直なんか居心地が悪い。



で、寄宿舎で同室になった私とユリアだけど、私にはユリアをいじめる理由も根性も無いので、私は別に普通にユリアと喋っている。

とゆーか、他に聞く相手がいないのだ。学校内の事にしても、一般庶民の生活にしても。


でもそうやって、ユリアと仲良くしていると一つめっちゃ良い事があった。

学校の授業に関する事だ。


学校では、必修科目の一つとして音楽があるのだが、これが私の成績の中で激しく足を引っぱっていた。

授業内容は『歌唱』『作曲』『ピアノ演奏』なのだが、私はとことんピアノを弾くのが向いていないらしい。右手と左手で違う動きをするというのができないのだ。

歌を歌うのは好きだし、文子だった頃、カラオケで95点とか普通にとっていたのだけど、この世界の歌ってオペラみたいなのしかなくて、発声法がJ-POPとかとはまるで違う。


そして作曲。何よりもコレが無理。絶対できない。コレよりもまだ、氷の上でトリプルアクセルとかの方ができそうな気がする。


なので、音楽の授業で私はすっかり詰んでいた。どれか一つでも合格ができれば単位はとれるのだが、このままでは永久に卒業できそうもない。


と、思っていたが。


なんと、なんとユリアは絶対音感を持っていた。一度聴いた曲を楽譜におこす事ができるのだ。しかも、伴奏まで理解できてしまうのだ。

つまりだ。

私が、カラオケで熱唱していた歌をハミングしたら、それを楽譜に書けちゃうのである。


心優しいユリアは、私のど卑怯な盗作行為に進んで協力をしてくれた。


て、わけで、私は最初のうちは、日本の小学校低学年の音楽の教科書に載っているような曲をハミングしていたが、そのうち古典映画の主題歌とか歌い出して、最後にはノリノリのアニソンを熱唱していた。


ユリアのおかげで、音楽の授業は楽々クリア。

正直、良心がチクチクと痛まない事もないが、

「もしかしたら、他にもこの世界にいるかもしれない、旧地球人に私の存在を知ってもらう為!」

と、自分で自分を納得させている。


そんなこんなで、最初は嫌で嫌でたまらなかった学校にも段々と慣れてきた私なのであった。

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