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《160万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第六章 伝染病襲来

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夫への贈り物(3)(モニカ視点)

「村長が、織物を寄越すようにと、アドリアン卿に要求されたのです。」

「どうしてですか?」

「村では、個人が財産を所有するのではなく、全てを共有するのだそうです。ですから、その織物を村で共有するべきだと言い出したのです。」


牧畜が主要産業の村ですが、その動物全てが村の共有物だそうです。生まれた卵、搾った牛乳、作った生クリームやバターは、村の物であり、村の代表者が王都に売りに行きます。売った代金もまた村の共有財産になります。その中から、税金を払い、食物を買い、村のインフラを維持します。


「公平を重要視する社会という事ですか?」

「そうとはとてもいえません。村の中には『階級』があり『上民』『普通民』『下民』と分かれています。『上民』が、恩恵のほとんどを独占し、『下民』はキツく汚く危険な仕事を押し付けられています。村が困窮する事があれば、餓死するのはまず『下民』からでしょう。」

「どうやって、階級を分けているのですか?」

「『上民』は村長とその一族や、村の薬師の一族などで固定しています。そしてそれ以外の人々が『上民』の気まぐれで『下民』に落とされたり『普通民』に戻れたりするのです。なので、常に村人は『上民』の機嫌を伺いびくびくしているそうです。」

「アドリアンは『下民』?」

「いいえ。村長の娘である、アルビーナさんの・・お相手ですから、『上民』です。そもそも貴族ですし。しかし、財産の共有に関しては『上民』であっても関係ありません。結局最高権力者は村長ですから。でも、アドリアン卿は、納得できないと。妻からの贈り物なのに、村に上納するのは嫌だと言い、それで村長とアドリアン卿が大喧嘩になっのです。正直、あまりの大人げなさにかなり引くほど激しい喧嘩でした。」

「そうなの。」

「もしも、どうしても織物を渡せというのなら、祖父の形見の懐中時計を返すようにとアドリアン卿は怒鳴られました。」

「大事にしていた、あの懐中時計まで取られていたの?」

「懐中時計は、ラッヘルさんの子供達が羊の番をしていた時、羊の子供が野犬に襲われて殺されてしまったので、その償いとして没収されていたのだそうです。」

「あの子達が羊飼いの真似事をしていたの?まだ、八歳と五歳よ。」

「アドリアン卿と、アルビーナさんの子供達は『上民』なので労働を免除されていたそうですが、ラッヘルさんとその子供達は『下民』だったそうですから。」


その理屈で言うと、私も一緒に村に行っていたら『下民』として扱われていたのでしょうか?


「アルビーナさんは、何とか堪えてくれとアドリアン卿に頼んでいましたが、ラッヘルさんがアドリアン卿を煽って結局アドリアン卿は、王都に帰ると決められました。織物は村に残す代わりに時計は取り戻されました。しかし、織物を取られる事に納得ができなかったらしく、随分とアルビーナさんに怒りをぶつけられておられました。アルビーナさんは『王都に戻ってどうするのか?食べていけないから、村に来たのに』と叫び、『モニカ様に頼って自分達を捨てる気か』と泣き崩れました。『あなたと別れるくらいなら死ぬ』と・・。すみません。こんな話聞きたくありませんよね。」


そうでもありません。正直、愉快だと思っています。


「私も聞いていられなかったので、村を出ました。」


あら、残念。その後、どうなったのか興味あったのに。


「夕方の六時までに、王都の城壁まで戻りたかったですし。六時を過ぎたか過ぎてないかで、待機期間が一日変わるのです。アドリアン卿は荷物をまとめて、王都に戻って来ましたが、時間が六時を過ぎていたので、王都に入れるのが明日になったのです。」


結局、村を飛び出したのですね。まあ、そこまで激しく喧嘩をしたら、もう村では暮らせませんよね。


「ラッヘルと子供達は一緒ですよね。アルビーナはどうしたのですか?」

「一緒に戻って来られました。宿屋の大部屋を一室借りたそうですが、毎日子供達同士、愛人同士が喧嘩するので耐えられないと言って、二週間毎日私のテントに来られたので、『上民』『下民』の話など詳しく聞けたのです。」


二週間毎日、アドリアンの愚痴を聞いていたのですか。それは本当にご苦労様でした。


「それで、お嬢様に何をどこまで話すべきか・・。」

「正直に伝えたら良いのではありませんか。レベッカ様は、やがて王族になられる方です。どんな醜い話でも、それが事実ならお知りになっておくべきではないかと思います。だいたい、その村は王室直轄領なのですよね?」

「そうです。」

「なら尚更知っておくべきではないでしょうか?私の夫や養子達の話も正直に話してくださってけっこうです。その方が、村の在り方が具体的にわかるでしょうから。」

「わかりました。」

「というか、明日夫と愛人達が王都に戻って来るのですよね?」

私はため息をつきました。さて、どうしたものか?と考えていると。


「ヨアヒム戻って来たってーー!」

大声と同時に、廊下をバタバタバタ!と走る音が響いて来ました。


レベッカお嬢様。ご帰還のようです。


いつも読んでくださりありがとうございます。


モニカ先生視点の話は残り1話になります。よろしくお願いします。

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