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《160万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第六章 伝染病襲来

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夫への贈り物(2)(モニカ視点)

それから二週間。その間にもいろんな事がありました。


一番の大事件は、レベッカ様が、芳花妃ステファニー様に呼ばれ、芳花宮でのお茶会に参加された事です。そこで起きた大騒動は、その後長く尾を引きました。


そして二週間が経ちヨアヒム卿が戻って来られました。ちょうど、レベッカ様とリゼラは畑に出かけていた時間帯で、ヨアヒム卿は私に面会を申し込んで来られました。手紙の返信を渡すと同時に『どこまで』レベッカ様に報告をしても良いのか、確認がしたいとの事でした。


ヨアヒム卿の報告はなかなか悲惨なものでした。


ヨアヒム卿は、馬に乗って街道を進んで行かれました。

織物と手紙に加えて、大量の干し芋や干し肉、ドライフルーツ、豚脂で作ったビスケット、ペミカン、そしてお湯漬けおにぎりを持っているのでかなりの大荷物です。でも「これおいしいんだよねー」と思いつつ、お湯漬けおにぎりを食べ、移り変わる風景を見る途中の道はピクニック気分で楽しかったそうです。


ただ、途中の農地には耕作放棄された土地も多かったそうです。ぼうぼうにススキとブタクサが伸びたある元畑からはウリボウが何匹も出て来て、見てる分には可愛かったけれど、周囲の土地のお百姓さんは大変だろうと思ったそうです。そうして午前中に出発したヨアヒム卿は、昼過ぎに目的の村に到着しました。


村の入り口には、見張りがいて誰何すいかされました。

アドリアン・フォン・リールクロイツ卿に手紙と物品を届けに来た。と言っても直ぐには村の中には入れてもらえず、「ちょっと待て」と言われて、かなり待たされたそうです。やがて、村の入り口に夫が現れたそうですが、村長をはじめとした村の有力者達に取り囲まれていて、異様な雰囲気だった。とヨアヒム卿は言われました。


ヨアヒム卿は、門のすぐ側にある小屋に連れて行かれました。その小屋は、一夜の宿を求めて村にやって来た旅人を泊めてあげる為の小屋だそうです。

万が一、病気を村内に振りまかれたら困るので、絶対に小屋から出ないように!とヨアヒム卿は言われました。

小屋の中には、アドリアンの二人の愛人アルビーナとラッヘル、そして彼女達の子供らが待っていました。アドリアンと村の有力者達まで、狭い小屋に入って来たので、正直ぎゅうぎゅうで息が詰まりそうだったそうです。


窓が開いているのが救いだったそうですが、その窓の向こうからは、モーとかメーとかクックデューデューとかあらゆる動物の鳴き声が聞こえて来たそうです。吹き込む風は、いわゆる『田舎の香水』の香りがして、150羽のニワトリとの触れ合いを経験したヨアヒム卿は別に気にならなかったそうですが、街育ちの芸術家には辛いものがあるのではないかな?と思ったそうです。


なぜか有力者達が、「届け物を早く出せ!」と威高だけに言ったそうで、ヨアヒム卿はそれを無視して私とリゼラからの手紙をアドリアンに渡したそうです。アドリアンは涙を流して感動していたそうですが、アドリアンはわりとすぐに感極まって泣く人なので、それを聞かされても正直、「ふーん」としか思いません。二人の愛人の視線が怖かった。というヨアヒム卿の意見にも以下同文です。


「モニカとリゼラはどうしているのかな?」

と質問されたそうですが、私達の事を心配しているというよりも、私達がどんな生活をしているのかに興味津々といった感じだったそうです。

箱を出して織物を見せると、目を輝かせたそうですが、アドリアンの子供達は露骨にがっかりして、アルビーナの息子は

「何だよ。食い物は無いのかよ。」

と言ったのだとか。


ちなみにですが、アルビーナの娘は12歳、息子は11歳。ラッヘルの娘が双子で二人共8歳、息子が5歳です。その村の村長の娘なのはアルビーナの方です。


アルビーナの息子の態度に少しカチンときたヨアヒム卿ですが、次の瞬間ラッヘルの子供のお腹がグーッと大きく鳴り、あまり食べさせてもらえていないのか。と気がついたそうです。それで、持っていた干し芋とビスケットを全部出してあげたそうです。そしたら。

ちょっと、びっくりするくらいの意地汚さで、子供達とそれとラッヘルが食べ出したそうです。


「ありがとう。」

の一言も無く、我先にと頬張り周囲にいた村人に分けてあげる事もしません。結局、あっという間に食べ物は無くなったようですが、最後の二枚のビスケットをまだ口をもぐもぐとさせているラッヘルの娘が、二枚共取ってしまい、激昂したアルビーナの息子が

「てめえ!」

と叫んで、異母妹の髪の毛を鷲掴みにしたそうです。

「それ、よこせよ!」

と恫喝しても、涙目になりながら異母妹はビスケットを離しません。

びっくりしたヨアヒム卿が

「やめなさい!兄妹なのだろう!」

と言って止めに入ったそうですが、兄の方は口汚い言葉で怒鳴り続け、ラッヘルは

「なんて乱暴なの!ひどいわ。」

と泣き出し、それなのにアルビーナとアドリアンは叱りもせず、何事もなかったように私とリゼラの事を聞いて来るのだそうです。


「正直、かなり衝撃を受けました。」

とヨアヒム卿は言われました。


わかります。

実は私はこの家に来て、とても衝撃を受けた事があります。


レベッカお嬢様とヨーゼフ坊っちゃまは、全く喧嘩をしないのです。


兄弟というものは喧嘩をするのが当然の存在だと私は思っていました。私自身がそうでしたし、アドリアン達兄弟もアドリアンの子供達も、隣の家の子供も、いつも喧嘩をしていました。しかし、レベッカ様とヨーゼフ様は全く喧嘩をされません。


『喧嘩』というものは、小なるものなら午後のおやつ、大なるものなら親の財産や愛情など、そういったものを奪い合う事によって起こるものです。

その点、レベッカ様はヨーゼフ様に何でも譲ってしまうのです。


レベッカ様がヨーゼフ様に遠慮しているのでも、ヨーゼフ様が尊大なわけでもありません。ただ、レベッカ様がとにかくお優しく、欲が無いのです。

はたから見ていると、侯爵夫人がヨーゼフ様を露骨にエコ贔屓したり、レベッカ様を理不尽な理由で叱ったりするのですが、レベッカ様は常に飄々としています。ヨーゼフ様に八つ当たりをしたり、意地悪をされたりしません。そんなレベッカ様をヨーゼフ様は心から信頼し愛し、甘えておられます。こんな、聖人のような姉弟がこの世にいるのか?と私はびっくりしてしまいました。


上流階級の子供だから、それが当然というわけでは決してありません。アグネス様とエリアス様は毎日のように喧嘩をしていますし、シュテルンベルク家のリエ様とメグ様も、時に口論をしておられます。上流の人間ほど、所有しているものが多いので、激しく喧嘩をするのが普通なのです。そして、レベッカ様とヨーゼフ様は明らかに普通ではありません。


でも、そんなレベッカ様とヨーゼフ様を見慣れていて、それを普通と思っているヨアヒム卿にとってアドリアンの子供達は衝撃でしょう。

あの子らが喧嘩をしている姿は容易に目に浮かびますが、正直恥ずかしく思います。


しかし、ヨアヒム卿はその後もっと激しい喧嘩を目にしたようです。

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― 新着の感想 ―
[一言] あー良かった。 所々レベッカに理不尽な怒りを向けるオカンに思う所があったけど、第三者から見てもそう感じてるのかと安心?しました。 妊娠して精神的に不安定とか事情もあるとは思いますけど、読…
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