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ゲーム(3)

「やります!」

ベティーナがのってくる。


「良いなあ、姉様。」

とマリウスが言うと

「そうだよ。こんなのなら僕もやりたいよ。」

とヨーゼフが言った。


「私、良いですか?」

と、ヤスミーンが手を挙げた。

「私もー。」

と、医学生のフローラが言う。


「お酒だったら私も。」

とビルギットが手を挙げた。

「私もやってみたいわ。」

とアルテミーネ先生も進み出てくれた。


「ビルギットはいける口だから、ビルギットだったらわからないわね。」

とお母様が言うと、エデラー医師が

「フローラもなんですよ。」

と言った。


五人が、それぞれグラスを手にとった。

実は、ガラスコップはどれも見た目が同じなので、私にも誰が飲んだかはわからない。自己申告してもらうしかない。


「おいしい。」

とヤスミーンが言い

「んー、『ハズレ』だな。」

とビルギットが言った。お酒だったから『ハズレ』なのか、お酒でなかったから『ハズレ』なのか、演技なのか謎である。


「んー、おいしい。」

と幸せそうにベティーナも言った。これは難しい。私にも答えがわからないぞ。

と思っていたら。


うふ、うふ、と笑っていたベティーナの顔が急激に赤くなってきたのだ。


「うふふ、おいしー。もっと飲みたい。」


ちなみに。西大陸の北の方にあるヒンガリーラントでは、ブドウが採れる所が限られていてワインの八割が輸入品で高級品だ。

庶民にとってはエールやリンゴ酒の方が馴染み深いお酒なのである。


それもあって、ベティーナはワインを飲むのが初めてのようだ。


うふふふふ、とリンゴのような顔をして笑っている。

再び、ばばば!と手が挙がった。

「ベティーナ。」

「ベティーナ。」

「ベティー姉様。」

と結局、十人全員がベティーナと答えた。


「じゃあ、ベティーナには罰として『例の物』を飲んでもらおうか。」

と言うと、コルネがグレープフルーツジュースを持って来た。


「ふわーい。」

と、ろれつの回らない口調でベティーナがジュースを手に取る。そして、くぴーっと一気飲みした。


「えー、イェルクさんが吹き出していたから、どんな味かと思ったら甘酸っぱくておいしいじゃないですかー。私、これピッチャーでいけますよ。」

とベティーナは言った。


「自分だって、最初からフルーツジュースとわかっていたら吹きませんでしたよ!」

とイェルクが言った。


「お姉様、次は何?」

とヨーゼフが聞いた。


「サンドイッチよ。ハムとキュウリのサンドイッチ。」

「僕、やる!」

とヨーゼフが言った。


「僕も。」

「私も!」

エリアスとアグネスが手を挙げた。


「私もしたい。」

「私も。」

「私も。」

オルガマリー、ユスティーナ、ミレイも次々と手を挙げた。


「ヨーゼフ。『ハズレ』が何かを確認してからになさい。」

とお母様が心配そうに言ったので、私は『ハズレ』を発表した。


「ハズレのサンドイッチには、致死量のマスタードが塗ってあります。」


私の発表に大きな笑い声が起こった。


その後、蜂蜜の代わりに塩が入っているレモンティーを出して一つ目のゲームは終了した。


二つ目のゲームは、日本のバラエティー番組でよく見られた、箱の中の物を手で触って何かを当てるゲームだ。


騎士達が、ものすごく怪しい物を見る目で箱を見るので、私は

「私の好きな物しか入っていません。」

と宣言した。それなのに


「お嬢様はカエルとかトカゲとかお好きなのよね。」

「シカの内臓、喜んで食べてたもんな。」

「かつてブルーダーシュタットへ行った時は、イナゴや蜂の子を・・。」

と、ほんともう、かしましい。


「イェルク。名誉挽回、やってみない?」

「いえ、自分の名誉なぞ、地に堕ちたままで一向に・・。」

「当てたら、銀貨一枚あげる。」

「やりましょう。」

とイェルクは言ってくれた。


用意している木の箱は左右に穴が開いていてそこから手が入れられる。私は箱の蓋をとって中身をイェルク以外の人に見せた。イェルクには目を閉じてもらっている。

中に入っているのは、茹でたザリガニだった。


ぶはは!と何人かの人間が笑い出した。


「私も好きー。」

「いや、でも触るのはやばいって。」

「死んだ奴だよね?」

と、皆がひそひそと話す。


食べたら、とってもおいしいんだけどね。形がちょっと怖いよね。脚とかハサミとか尖ってるし。ちょっと生臭いし。

こんな物を触らせるのは悪いなあ、と思わないでもないけれど、これがお楽しみ会のゲームである以上、誰かにリアクション芸人のようなマネをしてもらわないとならないのだ。

イェルクは気の良い優しいお兄さん、って感じの人なのでつい甘えてしまう。


・・そして、30秒後大絶叫が響き渡った。

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