ゲーム(2)
お母様には
「やり過ぎ!」
と怒られたが、他の人達には笑ってもらえた。人の不幸というものは、蜜の味なのだ。
「最初は、侯爵様なのかな?と思ったんです。顔をしかめられたので。」
と、銀貨をもらったティアナが言った。
「甘かったんだ。」
とお父様は言った。
「普段砂糖も蜂蜜も入れずに飲んでいるから、ちょっとびっくりした。」
「では、続いて行ってみましょう!お次は、私達の畑で育った、落花生ことピーナッツで作ったピーナッツバターのサンドイッチです。そのピーナッツバターは残念な事に一つだけ。」
そこで一回、私は言葉を切った。
「砂糖が入っておりません!」
「落差がひどいっ!」
とイェルクが叫んだ
「『魚醤酢』と違い過ぎでしょう!」
「ゲームなんだから。緩急つけなきゃ、単なるモラハラ大会になっちゃうでしょ。はい。食べてみたい人ー。」
「はいー!」
リーシアが元気いっぱい手を挙げてくれた。
「・・私も。」
と言って、エイラも手を挙げてくれる。
「私も!イェルクの醜態は私がカバーします。」
とティアナも手を挙げてくれた。
「私もやりたーい。」
リーゼレータが手を挙げてくれた。仮面舞踏会に心を寄せていたメンバーがついに手を挙げてくれた。
「男性でやってくれるという人はいないの?」
と私が聞くと、執事が手を挙げてくれた。
「これくらいのレベルでやっておかないと、後からもっととんでもないのが出てくるかもしれませんから。」
執事がそう言うと、騎士達が少しザワザワした。「お嬢様は、ネズミを塩でいく人だ。」と言う声が聞こえてくる。
「カレナ、持って来てくれる。」
「はい。」
カレナがサンドイッチを乗せた皿を持って来てくれる。
「各自で好きな皿をとって良いよ。」
と言うと、リーゼレータがまず皿を手に取り、次にリーシアが取った。一番最後に手に取ったのは執事だった。
「じゃあ、今度は全員同時に、はい、どうぞ。」
女性四人は同時に食べたが、一瞬執事が遅かった。
「おいしい!」
目をキラキラさせながらリーシアが言う。リーゼレータもこくこくうなずきながら、ぱくぱくと完食してしまった。
「うぐぐ!毒を盛られたっ。」
一口食べたティアナが、胸を掻きむしり出した。こういうお調子者がいると、場が盛り上がる。
皿の色からいって『ハズレ』を引いたのは、エイラのはずだ。でもエイラも「おいしいです。」と言って微笑んでいる。
執事は、普段しないような厳しい顔をしていた。
「はい。回答タイムです。」
と言ったが、今回はすぐには手が挙がらなかった。
「ティアナじゃあないと思う。」
「でも、リーシア様は違うと思うな。」
結局、執事が五票、エイラが二票、リーゼレータに二票、ティアナに一票入った。良い感じにバラけてくれた。
「答えは、エイラでーす。」
と言ったら
「えー!」
と、一番エイラが驚いていた。
「なんか、甘かったですよ!」
「え?おかしいなあ。」
私は、エイラのサンドイッチを手に取り、一口ちぎって食べてみた。
「うん。これは砂糖無しのですねー。」
「えー!砂糖無しでもこんなおいしいんですか⁉︎」
「これ、食べてみる?」
と言ってリーシアが、自分の食べかけのサンドイッチを渡した。エイラが、一口分ちぎって口に運ぶ。
「あ、すごく甘いですね。」
咀嚼しながらエイラが言った。
「魚醤酢と、違いすぎるじゃないですかー!」
イェルクの叫びを聞いて、会場に爆笑が起きた。
「じゃあ、次いってみようか。」
正解者二名に銀貨を渡しながら、私は言った。
カレナが次に運んで来たのは、ガラスのコップに入った赤紫色の飲み物だ。中には液体と共に、オレンジ、リンゴ、グレープフルーツの実が入っている。
「赤ブドウジュースの中に、果物が入っていますが、恐ろしい事に一つだけワインになっております。」
「魚醤酢と・・。」
「うるさいよ、イェルク。はい。飲んでくれる人ー?お酒なので、今回は子供は無しです。」
と一応聞いてみた後
「ベティーナ、どう?もう15歳なんだし。」
と聞いてみた。