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《155万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第六章 伝染病襲来

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新しい家族達(24)(アルベルティーナ視点)

私はびっくりしました!それは、最近私が度々思い出している家庭教師だった先生の名前だったからです。


兄に辞めさせられた最初の先生ではありません。優しかった、二人目の先生です。


「勿論よ。今どうしておられるのかしら?と度々思い返しているわ。お元気かしら?お幸せなのかしら?って。」

「あんまり、お幸せじゃなさそうよ。」

とリエが言いました。


私同様、オルヒデーエ先生に教えを受けたメグも神妙な顔で聞いています。リエは、先生の生徒だったわけではありませんが、度々私達が暮らす西館に出入りしていたので、先生と親しくしていたのです。


オルヒデーエ先生には、私が10歳になるまで勉強を教えて頂きました。その年に先生は結婚し、家庭教師を辞められました。

当時の私は『結婚』というものがよくわかっておらず、ただただ、おめでたい事なのだと信じて

「先生、おめでとうございます!本当に良かったですね。どうか、旦那様と二人、いつまでもお幸せに。」

と言ってしまいました。


先生は貧しい、貴族家の娘でした。お父様が病気でたくさんの医療費が必要だったのだそうです。だから、家庭教師として働いていたのです。結局お父様は亡くなられ、たくさんの借金が残りました。その借金のカタに既に初老だった薬師ギルドのギルド長と結婚したのです。

その夫が「女が働くなどみっともないから辞めるように」と言ったから家庭教師を辞めたのです。


それを知ったのは、だいぶ経ってからの事です。カロリーネ叔母様が

「暴君のような夫の側で苦労している。」

とぽろっと言われたのです。


「ご主人はさすがにもう亡くなられたわよね?」

「十年前にね。その直後、先生と二人の娘は先妻の息子に家を追い出されたの。」

「どうして⁉︎仲が悪かったの?」

「その年上の継子に『愛人になれ』って言われたの。断ったら追い出されたのよ。息子の妻もカンカンだったそうだしね。」


最悪な継子です!自分の母親が、年の離れた兄の愛人になるなんて、気色悪くて想像もしたくありません。

二人の娘さんも、さぞお辛かった事でしょう。


「家を出た先生は、家庭教師の仕事をしながら、娘二人を育てたのですって。『シュテルンベルク伯爵令嬢の家庭教師だった』という肩書きは、職探しで役に立ったみたいよ。お父様が紹介状を渡していたそうだから。」


それは良かった。と少し胸を撫で下ろしました。


「で、仕事先の貴族夫人にすっごい気に入られて『先生の娘なら間違いない。うちの息子と結婚させたい!』と言われて、長女のラヴェンデル嬢とそこんちの息子が結婚したの。」

「そうなんだ。」

「その息子は司法省に就職したんだって。で、子供も生まれて今四歳になる息子がいるの。更に今、もう一人妊娠中なの。」


正直、どこに『幸せでない要素』があるのだろう?と思いました。


「でも、今年になって天然痘が流行りだしたじゃない。」

「ええ。」

「そしたらその長女の夫が『こんな世の中になって、いつ死んでしまうかわからない。明日死ぬかもしれない。それなら心の望むままに生きてみたい』と言って、愛人の所へ行ってしまったのよ。」

「えーっ!」


と叫んだのはメグです。勿論、私もびっくりしました。


「置き手紙残して、家出て行って、音信不通。」

「音信不通って、司法省で働いているのでしょう?」

と私は聞きました。

「働いてはいる。愛人の家に転がり込んでそこから通ってるらしいわ。愛人も司法省で働いているのよ。」

「職場で出会ったって事?」

「一目見て、この人こそ『真実の愛』の相手だって思ったんですって。相手もね。」

「『真実の愛』って・・単なる不倫じゃない!奥さんも子供もいるってわかっているんでしょう⁉︎それで、真実の愛とか、相手の女もどうかしてるわよ!」


「男なのよ。」


「・・・えっ?」

「つまり、そういう性癖だったわけね。でも人には言えなくて、親の勧める相手と結婚して普通に暮らしていたけれど、伝染病が流行りだして、おのれの性癖に正直に生きてみたくなったってわけよ。」


何なの、それっ!


そういう人は結婚なんかしないで欲しい。するなら、性癖云々の秘密は墓場まで持って行って欲しい。そうでなければ、妻の立場というものがないではないの!


「で、何で私がそんな話を知っているのかというと、私、商会を経営しているでしょう。その商会で扱っている商品って不動産じゃない。で、最近不動産を売りたいっていう人すごく多いのよ。みんな生活が苦しくなってきているのね。セカンドハウスを売りたいとか、大家をしている人が、借家を売りたいとか。

で、とある借家の大家が借家を売りに出しているんだけど、そこに住んでいるのがオルヒデーエ先生の家族だったの。借主がまだ住んでいるなら売れないでしょう。って大家に言ったら『あの家族は契約違反をしているからすぐ追い出せる』って。契約者は逃げた夫で、その夫が住んでないわけだから、厳密に言うと契約違反なのよ。」

「じゃあ、先生達は住んでいた家から追い出されそうになっているって事?」

「そういう事。『だったら仕方ない。前払いしていた家賃二年分返してください』って先生が言ったら『そっちが契約違反をしたのだから返す必要はない』って大家は言い張って。大家は、返すお金が無いのよ。銀行に貸し剥がしをされて、無一文になったから。」

「それは、大家の都合じゃない!先生達にとっても大切なお金じゃないの!」

「リエ姉様。その家買うのやめてよ!先生達家族を不幸にする共犯になるようなものだわ!」

とメグが言いました。

「私が買わなかったら、大家は違う不動産屋に売るだけよ。それに私、そこの土地絶対欲しいの。」

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