第二章 登場人物紹介
《第二章 アカデミーへ・あらすじ》
勉強好きと王様に誤解されたレベッカは、王様の命令でアカデミーに行かされる事になる。全寮制のアカデミーは、長く男子しか入学できなかったが、二年前から女子も入学出来るようになっていた。自分を殺した、殺人事件の容疑者がゴロゴロいるアカデミーになど行きたくないレベッカだったが、王様の命令には逆らえない。
レベッカは乳母のユーディットと共に、アカデミーへ向かう。
アカデミーの寄宿舎は二人一部屋。レベッカの同室者になったのはブルーダーシュタットの貿易商の娘で、自分を殺す容疑者の一人ユリアーナだった。
入学初日から、まるで授業について行けず落ち込むレベッカだったが、ユリアーナの親切と文子だった頃の知識を武器に、アカデミーでの生活を乗り切っていく。
段々と友達も出来、順調に毎日を過ごしていくレベッカ。幼馴染だったジークルーネとも再開し、かつての記憶を駆使してジークルーネの兄ジークレヒトの命を救い、ジークルーネに感謝される。
将来、ルートヴィッヒから逃れる為に、平民のふりをして亡命する必要があるかも。と思ったレベッカは、庶民の生活を見てみたいと思いユリアーナの実家が出している王都の支店を訪問する。その時ヴァイスネーヴェルラント人の出版社員イザークとクラリッサと知り合い、それがきっかけで絵本を出版する事になる。
絵本の出版で得た資金を元手に、孤児院の援助を始めたレベッカだったが、その過程で人身売買に手を染めている孤児院を発見。国民の不満をかわしたい王家によってレベッカは、孤児達を救出した英雄にまつりあげられた。
椿油や水飴、造花や封筒といった地球にあった物を次々と作り出し、穏やかに毎日を過ごしていくレベッカだったが、ある日兄の身代わりとして男装してアカデミーの高等部に通うようになったジークルーネから、母を介して連絡がくる。レベッカに宛てて出しているジークルーネやコンラート、ルートヴィッヒからの手紙がレベッカの手元に届いていないのでは?という連絡だった。
ジークルーネとユリアーナの協力のもと、レベッカは手紙泥棒を見つけ出す。
過去世で全然ルートヴィッヒは自分に関心が無い。と思っていたレベッカだったが、もしかしたら、過去世でも誰かに手紙を盗まれていたのかも?とレベッカは考えるのだった。
そんな中、ユリアーナの13歳の誕生日に、ユリアーナの父親が殺される事をレベッカは思い出す。アカデミーの休みを利用し、レベッカはユリアーナと何故か一緒に行くと言い出したルートヴィッヒの従姉妹エリザベートと共に港町ブルーダーシュタットへ向かうのだった。
《登場人物紹介》
【ユリアーナ・レーリヒ】
港町ブルーダーシュタットで、五本の指に入る大商会の娘。純金をすいたような金色の髪に青い瞳の絶世の美少女。王都に出て、貴族との繋がりを作って欲しいと願う父親の希望でアカデミーにやって来たが、平民である事、親が商人である事からいじめられ、皆からずっと無視されていた。その為、アカデミーで初めて友達だと言ってくれたレベッカを猛烈に慕う。
頭が良く努力家で、成績は常に学年トップ。読書が好きで、好きな作家の作品であったらR 20の作品であっても読んでしまう。
レベッカが結婚して王室に入ると、平民の自分は側にいられなくなると思い、ルートヴィッヒとの仲を地味に邪魔している。しかしそんなユリアーナの言動と挙動を、ユリアーナはルートヴィッヒを好きなのかも、とレベッカは誤解している。
一周目では、13歳の誕生日に父親を殺され、その後家を乗っ取った叔父に財産を食い潰され破産してしまう。その為、慢性的に人手不足なエーレンフロイト家で働く事になる。レベッカが王宮で殺された時も同伴していた為、彼女もレベッカ殺人の容疑者である。
二週目でも、父親と自分の命を救われた恩から、エーレンフロイト家の侍女になる。天然痘で家族全員死ぬ夢を見た。というレベッカの心の不安を取り除く為、北大陸の天才生化学者を流刑地から救出し、その対価として『種痘』の専売権を手にする。その『種痘』によってたくさんのヒンガリーラント民が救われた功績で、父親が男爵位を授与され貴族になった。
【エリザベート・フォン・ブランケンシュタイン】
国王の唯1人の同母妹の娘で、公爵令嬢。父親は宰相であり、13議会のメンバーである。国王に実の娘のように可愛がられていて、彼女がアカデミーに行ってみたい、と言ったのでアカデミーは共学になった。金色の髪に琥珀色の瞳をしている。
アカデミーでの影響力は強く、他の生徒は勿論、教師達も頭が上がらない。レベッカ曰く「逆らったらハムのように縛りあげられて石を抱かされる」レベル。
ルートヴィッヒやフィリックスと仲が良く、フィリックスが反逆罪の容疑で収監された折には、放置した彼の両親に代わり衣食の援助をした。
様々な貴族家に部下を送り込み、情報の収集を行っている。
天然痘が王都で流行すると、少女達を率いて感染地区での治療に当たる。その一団が後に『聖少女達』という名称で知られるようになる。
【ジークルーネ・フォン・ヒルデブラント】
侯爵家の令嬢で、レベッカの幼馴染。栗色の髪に紫色の瞳をしている。コンラートの母親と自分の母親が親友同士で、性別が違う子供が生まれたら結婚させようと約束していた為生まれてすぐコンラートと婚約をする。生まれた時は、ヒルデブラント家の分家の一つの家の娘だったが、先代の侯爵が亡くなった後父親が国王の指名で侯爵になった。その為、先代の娘や孫達に比べて家門内での力が弱い。
母親を悲惨な事故で亡くしており、自分のせいで母親が死んだと思い父親や兄と距離をとっていたが、心の中では兄や父親を深く愛していた。
レベッカに、兄が側近と心中する可能性を匂わされ、アカデミーから急いで帰宅し、側近を守ろうとした兄が暴行を受けているのを目撃して相手の男を殺してしまう。その後、兄と側近をヴァイスネーヴェルラントに亡命させ、自分が兄の身代わりになり先代侯爵の孫娘と婚約して、生まれてくる私生児を自分の子として養子縁組し、侯爵家の後継者にすると先代の娘達と約束して、兄達を呼び戻さないよう交渉した。
必然的に、コンラートとの婚約を解消するする事になり、コンラートに深い負い目を感じる。その為、コンラートが少しでも幸せになれるようにと徹底的にコンラートに尽くす。本人曰く「コンラートの為なら、女の子の顔でも切り裂ける。」。レベッカがコンラートと結婚して、コンラートを幸せにしてあげて欲しいと思っており、その為ルートヴィッヒとレベッカの婚約を解消させようと、ルートヴィッヒにチクチクと嫌がらせをする。
北大陸の天才生化学者の流刑地からの救出において主導的な役割を果たし、天然痘が実際に流行を始めるとコンラートやコンラートの父親と共に予防と治療の為、国中を駆け巡った。
性格はひねくれていて、人を小馬鹿にした言動が多く、嫌いな奴に陰険な嫌がらせをする事にためらいがない。その反面、花街の人間など弱い立場の人には優しい。ヒルデブラント家が薬学で成り上がった家門という事もあり、常に筋弛緩剤など複数の薬物を標準装備している。
天然痘終息後、『ジークレヒト事件』と後世まで語り継がれる事件を起こす。
【アグネス・フォン・ファールバッハ】
伯爵令嬢。父親は情報大臣で13議会のメンバーだが、本当は父親ではなく祖父になる。母親は独身時代、芳花妃ステファニーの侍女で親友だったが、その為に王妃派の女官に敵視されその女官達の陰謀で、情報大臣の一人息子に暴行を受け妊娠した。その事実を知った伯爵夫人である祖母が息子を暗殺して自殺し、その後情報大臣はアグネスの母親を後添いにして、生まれた子供を実子とした。
一周目では、その事実を知ってショックを受け双子の弟と共に心中してしまう。
本来は強気な性格で、年上ともケンカできる性格。レベッカの事は「お姉様」と呼んで慕っている。レベッカのハンドベル同好会の仲間で、王都で天然痘が流行すると、レベッカやエリーゼと共に病人の看護に奔走した。
寄宿舎での同室者はユスティーナ。
ファールバッハ家はオッドアイの子供が生まれやすい家系で、アグネスの瞳も、弟のエリアスの瞳もオッドアイである。アグネスは右目が青で左目が金色。エリアスは右目が金色で左目が青である。
【ユスティーナ・フォン・ツァーベル】
子爵家の次女。父親はギャンブル中毒で、更にアル中で暴力を振るうという『家庭内の三大悲劇』をコンプリートしていた人。
建国祭の子供チェス大会で父親が賭けに負け、破産してしまったので、姉の結婚と父の隔離施設への入院を条件にヘリング家に借金を肩代わりしてもらう。ヘリング家の指示で領地で植物紙を作るようになり、植物紙を他の貴族に売り込むように。と指示されてアカデミーへやって来た。
買ってくれそうなのは、授業中も熱心にメモをとるレベッカとユリアーナしかいないと思い、なんとか二人と仲良くなりたくていつも二人を目で追っていた。
当初レベッカは、自分がツァーベル家が破産する決定打を作ってしまった為、ユスティーナに恨まれていると思っていた。
レベッカと仲良くなる為、音楽は苦手だが、レベッカ主催のハンドベル同好会に入る。おっとりとした優しい性格で孤児院の子供達にもとても慕われている。将来は官僚になって医療省に入るのが夢。なので、勉強はかなり努力している。
寄宿舎での同室者はアグネス。ラッコのぬいぐるみをとても大事にしている。
天然痘が流行ると、レベッカやアグネスと一緒に救援活動に参加した。
【リーシア・フォン・デューリンガー】
デューリンガー伯爵の従兄弟の娘。
母親がいた頃から父親が人妻のベロニカと不倫をしていて、ベロニカの夫が死ぬと、娘のマレーネを連れてデューリンガー家へベロニカが乗り込んで来る。その後、リーシアの母親を追い出し、リーシアの事はアカデミーの寄宿舎に厄介払いした。
実家にいた頃は満足に食べさせてもらえなかったのに、アカデミーでは三食食べられる上、着る物や寝る場所に困らないのでアカデミーでの生活が楽しい。勉強は苦手で成績は超低空飛行だが、人より嗅覚に優れているので、お茶会のマナーの成績だけは首席である。
天然痘が流行りアカデミーが休学になると、家で虐待を受けるようになる。ベロニカとマレーネはリーシアを虐待する一方で、周囲には自分たちの方がリーシアから嫌がらせを受けていると吹聴していた。リーシアの再従兄弟のテリュースはそれを信じ込んでいるが、テリュースの両親のデューリンガー伯爵夫婦は、ベロニカの嘘を見抜いていた。しかし『貴族は強い者につき、弱い者を切り捨てねばならない』という考え方をしているので、虐待の事実を無視していた。
腹心の侍女エイラの勧めで、エーレンフロイト家に逃げ込み、エーレンフロイト家で暮らすようになる。
レベッカのハンドベル仲間で、レベッカと一緒に病院ボランティアをする。
アカデミーでの同室者は最初はコンスタンツェで、コンスタンツェがアカデミーをやめた後は、ハンドベル仲間のオルガマリーと同室になった。
【コンスタンツェ・フォン・アーベルマイヤー】
伯爵令嬢。父親は13議会のメンバー。母親は王宮の衣装室侍女長。
真夜中のテンションで書き上げたようなポエムを披露し、レベッカのSAN値をかき氷のように削った人。
ルートヴィッヒの事が好きで、レベッカを敵視していた。レベッカに対する嫌がらせと、どんな手紙を受け取っているかの好奇心から、寄宿舎のメイド、マイケに命令してレベッカ宛の手紙を全部盗んでいた。泥棒がバレた後は、アカデミーを自主退学して田舎の領地に引きこもったが、一年後には王都に戻って来て社交界への返り咲きを狙っていた。
その為に、平民に肉とパンを配る施しをしようとするが準備不足で失敗する。その失敗の責任をレベッカになすりつけようとした為、国王の怒りを買い、両親は宮廷での役職を取り上げられた。
【ユーディット】
レベッカの乳母。レベッカが生まれた時、父親が通っていた法科大学の教授の秘書の妻で、教授に推薦された。
1歳になる娘のベティーナがいたので、二年契約で雇われた。
レベッカが11歳の時、夫が病死してしまったので再びエーレンフロイト家に雇われる。
一周目では、天然痘を発症したレベッカを献身的に看病し、病気がうつって死んでしまった。
【バーベンブルク子爵夫人】
アカデミーの副校長。未亡人で、死んだ夫は教育大臣を務めていた。夫が死んだ後は、アカデミーの女子寄宿舎の離れに住んでいる。
生徒達の事をいつも温かく見守っている。
【シュトラウス夫人】
アカデミーのマナー講師。できない生徒に当たりが厳しく、怒鳴り飛ばす為、ケンカになって一日でアカデミーをやめて故郷へ帰る生徒もいるほど。できない時は素直に謝るレベッカの事を、特別気に入っており、ユリアーナと遊びに出かけたいとレベッカが騒いだ時は「自分が同伴するから、行かせてあげて欲しい」と、副校長に言ってくれた。
【ユーバシャール】
レベッカが支援している孤児院の院長をしている初老の男性。手広く商売をしている商人だったが、商売に没頭する余り妻と娘を失ってしまった。自らの生き方を後悔し、贖罪の為に孤児院経営を行う。
レベッカに造花の作り方を教えてもらい、子供達と造花のアクセサリーやフラワーボックスを作って売っている。またレベッカにハンドベルをプレゼントしてもらったので、祭りの時など広場で子供達がハンドベルの演奏をして小金を稼いでいる。
天然痘が流行り始めると、この孤児院の子供達にレベッカは野菜畑を作る手伝いをしてもらうようになる。
【ヘルダーリン夫人】
レベッカが支援している孤児院の院長をしている女性。夫が産科医で、病院の隣に孤児院がある為、乳幼児をたくさん育てている。
【イザーク・バウアー】
ヴァイスネーヴェルラントの出版社の社員。ユリアーナの紹介でレベッカと知り合い、本を売ったり、一緒に作ったりする関係になる。
【クラリッサ・バウアー】
イザークの姪。イザークと同じ出版社の社員。レベッカに教えてもらった、多色刷り版画を苦労して再現し、手描きの一点ものしかなかった絵本の世界に、印刷絵本を生み出す。実はレベッカと初めて会った時はまた正規の社員ではなく見習いだったのだが、この功績で社員に昇格した。セレスティーナが、本の貸し借りの出来るサロンを開設した時は、POPやあらすじ本を作ってサロンの開設に協力した。
レベッカがいるアカデミーの寄宿舎は父親以外は男子禁制なので、レベッカとの仕事の窓口はいつも彼女が担当をしている。
【セレスティーナ・ヘリング】
子爵令嬢でユスティーナの姉。ユスティーナにとっては、母親のような存在である。父親の借金を肩代わりしてもらう為、親子ほど年の離れたケヴィン、ヘリングと結婚する。
ケヴィンは若々しく、優しい男性だったので、幸せな結婚生活をおくっている。
ヘリング家は植物紙を製造販売している商会なので、紙袋にお菓子を入れてバザーで売ったり、本の貸し借りの出来るサロンを開設したりして夫の実家の商売を支えている。
【アレクサンドル・クライン】
ヴァイスネーヴェルラントの小説家で女男爵。本名アレクサンドラ・フォン・ヒルデブラント。
一族の人間に小説家になる事を反対され、ヴァイスネーヴェルラントに移住し帰化する。出版した本がたくさん売れたので男爵位を授与された。
書いている本のジャンルはミステリーやサスペンス。人がばんばん死ぬ話の為、ほとんどの本がR 20に指定されている。
【ジークレヒト・フォン・ヒルデブラント】
ジークルーネの兄で、アレクサンドラの甥。病弱で、アカデミーにも行かず自宅の離れに引きこもって暮らしていた。ヒルデブラント侯爵の一人息子だが、先代の侯爵の娘達に冷遇され、肩身が狭い暮らしをしており、従僕のギルベルトだけが心の支えだった。
そのギルベルトが無実の罪で捕らえられ、殺される事になったので、せめて楽に死なせてあげようと毒薬を持って地下牢へ行く。その時牢番をしていた騎士にギルベルトに会わせて欲しいと頼むと、その牢番から関係を要求される。屈辱と恐怖に耐え要求を飲むが、その現場を後から駆けつけた来たジークルーネに見られ、激昂したジークルーネが牢番を殺害してしまう。
その後、ギルベルトと共にヴァイスネーヴェルラントに亡命。長く心の傷に苦しみ続けるが、叔母やギルベルトの支えや、絵を描きその絵が周囲に認められていく事で少しずつ立ち直っていく。残して来た妹の事をとても心配していて、天然痘が流行するようになると、自分の為に犠牲になった妹の事を許して欲しいと、ジークルーネの婚約者であるコンラートに手紙を送った。
【ギルベルト・イステル】
ジークレヒトの従僕。父親はヒルデブラント領の領館で働く主治医だったが、妻が愛人と駆け落ちしてしまいショックを受けて自死する。
その為、男性関係がだらしない女性を激しく嫌悪している。先代のヒルデブラント侯爵の孫娘に愛人になるよう迫られるが、拒絶すると逆恨みされ、レイプ犯という濡れ衣を着せられ拷問死させられる事になった。しかし、ジークルーネが斧で地下牢の鍵を叩き壊してギルベルトを救出し、ジークレヒトと共にアレクサンドラの元に逃げるよう言われる。
アレクサンドラの側で彼女の秘書として働き、自分の為に心に深い傷を負ったジークレヒトを支え続ける。
【クリストハルト・フォン・ヒルデブラント】
侯爵家の当主で、ジークレヒトとジークルーネの父親。アレクサンドラの兄。
先代侯爵の甥だったが、先代に息子がいなかった為、国王の指名で侯爵位を継ぐ事になる。最初の妻ジークリンデは国王の従姉妹だったが、不幸な事故で亡くなってしまう。その後直ぐに先代侯爵の末娘と再婚するよう一族の人間達に圧力をかけられ、それを飲んでしまった事で子供達に負い目を感じ、子供達と距離をとってしまう。しかし、そのせいで子供達が悲劇的な事件に巻き込まれ、ますます子供達に負い目を感じるようになる。
領主としては優秀で、国税支払い額も国内トップの領地。国王には「大蛇のような男」と評されている。失踪癖があり時々ふらっと行方不明になってしまう。
【フェルディナンド・フォン・アーレントミュラー】
国王の弟で公爵。フィリックスの父親。正式な妃ではない、身分の低い女性から生まれた為苦労して育つ。母親が第二妃の侍女であった為、周囲には第二妃派と思われていたが、派閥内で冷遇されていた為王妃の息子である兄に影で協力していた。やがて王妃の息子が国王になると功績を認められて公爵位を賜る。
妻は国立大学で初めて数学科の教授となった女性、イーリス。100年に1人の天才と言われている女性である。
軽はずみな行動が多く、騒動によく巻き込まれる息子に頭を痛めている。13議会のメンバーの1人。
【カサンドラ王太后】
ヴァイスネーヴェルラントの国王の母親。貴婦人の中に貴婦人と呼ばれ、西大陸中で尊敬されている。小国の王族だが、六人の娘達が全員外国の王族に嫁いでいる為、西大陸内での影響が大きい。たくさんの文化人やジャーナリストと親交を結んでいる為、彼女が不満を漏らすと西大陸中の小説家や脚本家、新聞記者が火を吐くと言われている。とりわけ女性芸術家への支援に熱心で、何人もの女性芸術家が爵位を授与されている。
北大陸で『魔女』と呼ばれて迫害された生化学者も受け入れて保護し、その代わりに研究成果の一部を譲り受けている。
《用語説明》
【アカデミー】
創立100年を超える王都の名門学校。『初等部』『中等部』『高等部』に分かれていて、貴族の男子は八歳から通い始める。
長く貴族の男子しか入学できなかったが、やがて平民も入学できるようになり、その後女子も入学できるようになった。
生徒は皆、家を離れて寄宿舎で暮らす。男子寄宿舎と女子寄宿舎は、訪問は勿論手紙のやり取りをするのも禁止である。
建前として、生徒の立場は身分に関わりなく平等という事になっているが、現実には明確なヒエラルキーがある。その一つが寄宿舎の部屋で、カースト上位の者が上の階。下位の者が下の階となっている。
建てられて100年経っているので建物は全体的にボロい。第二章の最後でボイラーを全面改修する事になり、急に一ヶ月休みになったのでレベッカ達はブルーダーシュタットへ行く事になった。
【ブランケンシュタイン家】
公爵家。当主は宰相を務めており、13議会のメンバーでもある。公爵夫人は、国王のただ一人の同母妹フリードリア。
嫡子は長女のエリザベート唯一人。
エリザベートを産んだ時フリードリアは体を損ない、二度と子供を産めない身体になった。分家から後継者を選びたくなかったフリードリアは、信頼していた侍女を愛人として夫に差し出す。しかし、その侍女が産んだのは二人続けて女子だった。その為家臣団は、自分達が選んだ女性を愛人にと差し出し、その女性は男子を産む。だが激怒したフリードリアは養子縁組をしようとしなかった。
後継者に関する思惑と野心が入り乱れるブランケンシュタイン家は、関わり合ったら危険な家とみなされている。国税納税額第三位の家である。
【ヒルデブラント家】
侯爵家。初代宰相を輩出した家門であり、侯爵家筆頭に位置付けられている。薬学で成り上がった家門であり、領地内に歴史ある薬科大学がある。
先代の侯爵には息子がおらず、三人の娘達のうち上の二人が家門の人間と結婚する。だが、国王が後継者に指名したのは、国王の従姉妹と結婚していたクリストハルトだった。クリストハルトの妻が死ぬと一族の人々は先代侯爵の末娘と結婚するようクリストハルトに圧力をかける。しかし後妻との間には子供が生まれなかった。
先代の侯爵の長女の娘がギルベルトを陥れると、ジークルーネは二度とギルベルトとジークレヒトに手を出さない事を条件に、自分が男装してジークレヒトを名乗り、先代の侯爵の長女が産む私生児を自分の子として養子縁組し後継者にすると約束した。その約束のせいで、ジークレヒトの偽装婚約者の男遊びがますます激しくなり、彼女の親は頭を抱えている。
国税納税額第一位の家門。領都は、王都、ブルーダーシュタットに継ぐ人口の多い街である。
国政に関わろうとしない一族だが、そのおとなしさは『鳴き声も足音もたてない蛇のおとなしさだ』と国王に思われている。
【ヴァイスネーヴェルラント】
ヒンガリーラントの南東、山あいにある小さな王国。森林限界も多く、農業にあまり向いていない。鉱物資源もほとんど無い人口も少ない貧しい国である為、文化人を支援し、文化を発する事で外貨を稼ごうと努力している。特に女性芸術家の支援に力を入れ、その為西大陸で最も男女が平等な国と言われている。




