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《160万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第六章 伝染病襲来

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畑作り(7)

季節は夏になった。


野菜は驚くくらい収穫できた。ちょっとびっくりするくらいできた。


三ヶ月前。種や苗や種イモを植え終わった私達にリーバイとニコールは言った。

「これからは雑草と害虫との戦いです。『収穫』という唯一度の喜びを味わう為に、百万本の雑草を抜き、1億匹の虫を虐殺するのです!」

「おーっ!」

と、声を揃えて私達はかけ声をあげた。私達の心はやる気に満ち溢れていた。そんな私達の心を折りそうなほど、雑草は繁り、虫はもぐれついた。


「やはり、池と森がすぐ側にあるので虫が多いですね。」

とリーバイは言った。

すくすくと育つニンジンの葉は、ヨトウムシやキアゲハの幼虫にガツガツと食べられてしまった。

ニンジンは下半分が大事な野菜で、上半分はさほど重要ではない。だからまあ、緑の葉っぱが穴だらけになっても「仕方ないよねー」と割り切れたけど、コマツナやロメインレタスを作ってこれだけ穴まみれにされたらたぶん泣いたと思う。虫、恐るべし。


孤児院の子供らも最初の頃は、キアゲハの幼虫の美しさに感動し

「持って帰って、蝶々になるまで育てる。」

と言って幼虫を持って帰っていたけれど、五日目あたりから躊躇わずに殺すようになった。

なんかさあ、お肉とかお魚とかを食べるのは残酷だ。だから自分は野菜や穀物しか食べない。って言う人がたまにいるじゃない?

でも、あなたが食べているサラダの中に入っている穴の開いていない野菜は、百万の命の犠牲の果てに収穫した物なんですよー。って言いたい。

何かを食べねば生きていく事のできない人間という生き物は、業の深い生き物なのだ。


そうして、プチプチと処理していたがやがて処理しきれなくなり、ユーバシャール院長と協議の末、手伝いに来てくれる子供の数を十人に増やした。それでも夏が近づいてくると雑草も虫も処理しきれなくなりリーバイが

「もしも姫様が僕とニコールを信じてくれるのでしたら、一日姫様と子供達を敷地内立ち入り禁止にして、僕とニコールの二人で農薬を撒きます。」

と言ってくれた。


この時点で一緒に農作業を始めて二ヶ月である。既に私達全員の間には信頼関係が生まれていた。それに、虫との戦いにちょっと疲れてきていた。なので

「どうぞ、どうぞ。」

とお願いした。


リーバイとニコールは毎日畑に来てくれた。なのである日

「大学の授業に出なくていいの?」

と聞いてみた。


「大学は、四月から休校になりました。首都の人口を減らす為、地方から来ている学生は故郷に帰るよう言われています。」

「リーバイとニコールは王都っ子なんだ。」

「いいえ、僕はアズールブラウラントのヴァールブルク生まれですし、ニコールもシンフィレアからの留学生です。だから、もう国境が封鎖されていて国に帰れないんです。」

「うわー、そうなんだ。ご家族は心配しているだろうね。」

「はは、そうですね。でも、港町のヴァールブルクより内陸の王都の方が安全なんじゃないかな?って思ってます。」

「うちの親は別に心配なんかしてませんわ。」

とニコールは言った。


「私の父親は地方の島で役人をしているのですけれど、『女に教育は必要無い!』って考えの人で、だから私親とは縁を切ってヒンガリーラントに来たんです。どうしても、憧れのアーレントミュラー教授のおられるヒンガリーラントの国立大学に入りたくて。」

「あれ?じゃあ、どうして、数学科に行かなかったの?」

「数学科は落ちたからです。」

「・・・。」


大学の学部は複数受験が可能で、ニコールは数学科と天文学科と農学科を受けたらしい。しかし、農学科にしか受からなかった。

「でもいいんです。もう家には帰れないし。数学科も天文学科も落ちて絶望してたけど、最後に発表があった農学科に受かってた時は嬉しくて飛び上がりました。」


気持ちちょっとわかるなあ。文子も必死で受験勉強してたから、結局受験できなかったけれど。


というかアーレントミュラー公爵夫人って、外国の人にも憧れられるほどの有名人だったんだ。


すくすくと育つ間引き菜も、我が家の料理人のセナに無駄なく処分してもらって、だんだんと使用人の皆さんの間に間引き菜を食べ飽きたという空気が漂いだした頃、お母様の指令を受けたゾフィーが畑を視察しに来た。

そして


「畑の拡張を認めましょう。」

と許可をもらった。

手伝いに来てもらう子供の数を15人に増やし、私はキュウリとナスと枝豆を植えた。

本当は、たくさんとれても干物にしたり、煮込んでソースに加工できるトマトを植えたかったけれど、リーバイとニコールに止められた。

実はヒンガリーラントでは、日本の梅雨のように夏の初めに雨がたくさん降る。

トマトは雨に弱いので、比較的雨に強いキュウリやナス、豆類を植えるよう勧められたのだ。トマトは、雨季が終わった後、ニンジンやネギを収穫した後の畑に植える事を勧められた。


この頃からハーラルトとマルテさん。そして、マルテさんの下宿屋の下宿人達も手伝いに来てくれるようになった。

穴だらけの間引き菜でもプレゼントしたらマルテさんはとても喜んでくれる。

体調の良い時はレントさんも来てくれてコルネはとても嬉しそうだった。


そして三ヶ月が経ち、ニンジンが収穫期を迎えた。

ネギは切ってもまた生えてくるので、植えてから一ヶ月後くらいから、切ってまた育ててを繰り返し、三ヶ月経って次にトマトを植える為根から引き抜くことにした。


それにしても。

ニンジンは失敗した。と思った。

私は畑に千個近い種を蒔き、時間差で数百本を間引いた。それでも畑には数百本のニンジンが残った。それらを同時に収穫しなくてはならないのだ。畑を四区画くらいに分けて、一週間ごとに一区画ずつ時間差で種を蒔けばよかった!


カレーでも作らない限り、一度に大量にニンジンを消費する事はできない。なぜなら、ニンジンはサツマイモのように一本ペロリと毎日毎日食べるような野菜じゃないから。

こんなに一気にとれてどうしよう?と内心頭を抱えてしまった。

この世界にカレールーは無いし、何のスパイスを混ぜ合わせたらカレーができるのか私にはわからない。


キャッキャと喜びながらニンジンを抜いていた子供達だが、ある子供がふと

「ライストさんにプレゼントしてあげたら喜ぶだろうなあ。」

と呟いた。

すると他の子供も

「そだねー。」

「そだねー。」

の大合唱。


「ライストさんって誰?」

と私は子供達に聞いた。


「辻馬車店を経営している店長さんです。馬を30頭くらい飼っておられるんですよ。孤児院育ちの子供が学校を卒業した後、たくさん御者として雇ってくれているんです。」


それは喜ぶだろうね!馬が。


「いいよ。好きなだけ持って帰って、ライストさんとやらにあげてちょうだい。他にも欲しいという人がいるのならいくらでも。」

子供達が歓声をあげる。「えー!」と言って抗議する子は誰もいなかった。

まあ、子供達も「君らで全部食べなさい」って言われても困るよね。ニンジンって、子供が嫌いな野菜のTOP3に入っているだろうから。

とゆーか、ネギもてんこ盛り取れたし、孤児院の前で『ご自由にお取りください』って並べとこうか。


大量のニンジンの山を見て私はリーバイとニコールにお礼を言った。

「ありがとう。二人のおかげで大成功だよ。」

「いいえ、こちらこそ。お役に立てて嬉しいです。」

二人の目に涙が光っていた。

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