登校初日
そして、登校初日。
私は朝ご飯を、ユリアと二人向かいあって自室で食べた。
朝食は各々自分の部屋で食べるんだって。
メニューはパンとチーズ。それを、寄宿舎の使用人さんが、各部屋に届けてくれる。
それとは別に、ユーディットが淹れてくれた紅茶。
以上が朝食である。
それだけじゃ足りない、という人は自分で用意しないといけないらしいが、私はこれで全然平気だ。
文子時代の朝食は、トーストとインスタントコーヒーだけだったもんね。
食べ終わったら歯を磨き、制服に着替えて学校へ出発。
制服は、灰色と濃紺を基調にしたワンピースだ。ユーディットが、髪をハーフアップに結んでくれた。
ちなみに。
私には、ユーディットという専属の侍女がいるわけだけど、ユリアには専属の侍女がいない。
というわけで、私達の部屋の隣の使用人部屋は、ユーディットが一人でのびのびと使用している。
んでもって、学校に到着。授業は8時半からだ。
午前中の授業は3科目。各1時間ごとで、合間合間に10分休憩がある。
私は11歳なので、今年中に12歳になる子供達のグループで授業を受ける。
ユリアが同じグループなので、ユリアが教室に案内してくれた。
ちなみに、教室は受ける授業ごとに場所が変わる。その日に何の授業があるかは前日に告げられるらしい。
そして、記念すべき最初の授業は。
『マナー講座』だった。
テンション下がるわー。
到着した教室は、小さなホールだった。
何も置いてない室内に、私を含めて女の子は8人。男の子は3倍くらいの人数がいる。
私とユリアが中に入ると、喋っていた子達がシンとなってこっちを見た。
ひえーっと、心の中で思ったけれど、人間関係は最初が大事だ。
エリザベートとジークルーネがいないこの場では、私がヒエラルキーの最高峰。私がまず何か言わなければ、誰も私に話しかけてはこない。
「おはようございます。レベッカ・フォン・エーレンフロイトと申します。今日から皆様と一緒に勉強をさせていただきます。よろしくお願い致しますね。」
よっしゃ、かまずに言えた。
精一杯の笑顔をつくると、女の子達が私の方へ寄って来た。
「私◯◯家の◯◯です。」
「私は◯◯家の◯◯と申します。」
「子供の頃にお会いした事があるんですよ。覚えておられませんか。」
「お母様にぜひ親しくさせていただくようにと言われているんです。」
ひーっ。一斉に喋られると覚えられない!
「何かお困りの事があったら、ぜひ何でもおっしゃってください。」
と、ある女の子が言ってくれた。すごく嬉しい。
なら、早速お願いしてみよう。
「ありがとうございます。でしたら、今までの授業の内容を、書き留めたノートを見せてもらえませんか?」
そしたらば、何という事でしょう!
ユリア以外の全女子生徒が、潮が引いていくかのように離れていった。
いったいなぜ!
私のお願いって、そんなに非常識だった⁉︎
よーするに、さっきのはリップサービスか?内心では、私なんかと仲良くなんかなりたくないって事か?
ふんっ!ま、いいけどさ。
だいたい、今までが順調すぎたんだ。
優しい両親に可愛い弟、親切な使用人さん達にかこまれて、御伽話のように、めでたい幸せな生活を送っていた。
ここで更に途中編入した学校で、素敵な優しい同級生に囲まれてなんて、そんな都合の良い人生を送れるほど、文子時代に徳は積んでいない。
そのうち更に、他の生徒さん達も入って来て、最後に先生が入って来て、記念すべき第一回めの授業が始まった。
先生の年は、うちのお母様くらいだろうか?きつい印象の人だが、なかなかの美人だ。
名前はシュトラウス夫人というらしい。
地球の、クラシック音楽が好きな人が聞いたら、踊り出しそうな名前だ。
ところでですけど。
皆さんは『貴族のお嬢様』と聞いたら、どんな髪型を連想しますか?
やはり縦ロールでしょうか?
答えは次話で。