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《155万pv突破!》侯爵令嬢レベッカの追想  殺人事件の被害者になりたくないので記憶を頼りに死亡フラグを折ってまわります  作者: 北村 清
第六章 伝染病襲来

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専売権(1)

・・・・。

「んええええっ!」かける2。


私とお父様の叫び声が重なった!


「どどど、どういう事、コルネ!ユリア!」

叫びながら思い出した事があった。

コルネは言っていたのだ。私とユリアが初めて国立大学農学科に行った日。

持ってるお金を大仏買・・ではなくだいぶ使ってしまった。って。まさか、コレに!


何という事をしているのか⁉︎外国の重罪人を脱走させるなんて!

グラハム博士の母国の名前も、犯罪者引渡し条約を結んでいるのか?とかも知らないけれど、そんな事をしたら、二国間で戦争が起きてしまうかもしれないし、戦争をしたくないとヒンガリーラントが思ったら、ハムのように縛り上げられて

「煮るなり焼くなり好きにしてください。」

と言われて、北大陸に送りつけられてしまうかもしれないのに!


「何で、そんな事を・・・?」

「だって、だってベッキー様が、ご家族全員が天然痘で死んでしまう夢を見たって言われたから。」

とコルネが言う。

「どういう事!」

とお母様が私を怒鳴りつけた。きゃーっ。


「それに、ベッキー様は言われました。私にクレープを食べさせてくれた時、自分もお腹が空いた時親切な人に食べさせてもらった。だから私に食べさせてくれるんだ、って。だからいつか君もお腹を空かせた人に食べさせてあげてね、って。グラハム博士は何の悪い事もしていないのに冬が来て食べ物が無くなったら飢え死にしちゃう運命でした。それって辛いから。お腹が空くのは本当に本当に辛いから。」


何というか・・。私が思いつきで口から出した言葉をコルネはすごく真剣に考えていたのだ。つまり私の責任だ。ろくに考えもせず適当な事ばっか言ってた自分が恥ずかしい。


「国際法では、罪人が逃走した場合、逃走させた者が代わりに罪を負う事になっている。それがわかっていて資金を出したのか?」

厳しい声でお父様がユリアとコルネに聞いた。


「わかってました。」

とユリアは言った。

「はい、そう聞きました。」

とコルネも言った。


「それでも、かまわないと思いました。父も同じ覚悟です。私達親子は、ベッキー様に海賊から救われました。ベッキー様が助けてくださらなければ二人共どうなっていたかわかりません。その大恩を思えば、罪を負う事も、蒸気船が難破して失ってしまうかもしれない事もかまわないと思いました。」


北の果ての無人島に蒸気船を出したのは、どうやらレーリヒ家らしい。


「漆黒のサソリ団に家族や友人を殺された商人達は、エーレンフロイト家の為ならかまわないと言って、喜んで協力してくれました。」

とユリアは言った。

「私だって、ベッキー様に命を助けられたんです。」

ぐすぐすと泣きながらコルネは言った。


「ベッキー様には、お父さんが見つからなかったらハイドフェルト領に帰るって言ったけど、本当は川に飛び込んで死ぬつもりでした。だから、今生きているのはベッキー様のおかげです。今生きているのはおまけのようなものなんです。だからベッキー様の心の負担を取り除いて差し上げたかったんです。」


「一つ聞く?」

私は、そう言って指を一本立てた。


「言い出したのは誰?誰が最初にそれをやろうと言い出したの?」


わたわたわた、とユリアとコルネの目が泳いだ。


「私です。」かける2。

「ジーク様なんだね。」


二人は黙り込んだ。

「ジークの父親の乳兄弟のベンヤミン医師は、グラハム博士と親交があった。おそらく、グラハム博士の弟子達から相談を受けていたはずだ。」

と、今まで黙っていたコンラートが口を開いた。


「コンラートお兄様は、この事知ってらしたの?」

「知らなかった。」


ひっくい声でコンラートが言った。うおお!ものすごく怒っていらっしゃる?


「たとえお金を出さなかったとしても、もしも知っていたらグラハム博士の亡命の件で罪を問われた時、一緒に罪に問われるわ。ジークはコンラートやあなたはというか、シュテルンベルク家とエーレンフロイト家を巻き込まないようにと考えたのでしょうね。」

とリーリエ様が言われた。


そうかー。

でも、それは私はともかくコンラートは怒るわ。いや、私だってちょっぴり怒っているけれど。


コンラートは『相談してもらえない』というのを一番怒る人なのだ。二年前のヒルデブラント家の騒動の時もそうだった。


なんか、ジークとコンラートの間の問題がわかったような気がした。

二人は婚約者同士だ。そして二人は愛し合っている。それは間違いない。


でも、ジークはコンラートの事を信じていない。それは、コンラートの人間性に問題があるからではなく、ジークが複雑な生い立ちゆえに他人を信じられない人だからだ。

ジークは自分一人で完結している。またそれができるだけの、知力と腕力と財力を持っているのだ。


そんなジークがコンラートは許せない。二年前の事件だって理解はしているだろうし、ジークの事を愛してもいるのだろう。でも、許してない。そこにダメ押しに、またこんな騒動を起こされた。許せない。という感情がかける2になってしまった。


二人は婚約をしている。それはつまり将来結婚する間柄だって事だ。

恋人や愛人だったら、愛だけがあれば十分だろう。でもたぶん。結婚した事がないからたぶんだけど、結婚するには『愛』だけではダメなのだ。夫婦というものは『どれだけ相手を愛せるか』という事以上に、『どれだけ相手を信じられるか』『どれだけ相手を許せるか』が重要なのだと思う。その重要な要素が二人そろって欠落している。


この二人に結婚は無理そう。と私は自分の婚約の事を完全に棚に上げて考えた。


というか、コンラートの結婚も私の結婚も今はどうだっていい!

今、大切なのは天然痘と種痘とグラハム博士だ。


「旦那様。ユリアとコルネ、それにジークは罪に問われるのでしょうか?」

とお母様が不安そうにお父様に聞いた。


「昨日までは不確定要素だった。しかし、国王陛下が種痘の輸入を決定されたという事は、グラハム博士を擁護するという事だ。グラハム博士と弟子、そして協力者達に罪は無い。と決定されたという事だ。」

お母様がほっとして息をついた。私もほっとした。


が。


「ほっとしている場合ではないわよ。」

とリーリエ様に言われた。


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